勇者パーティを追放されたオレは、始まりの村のお花畑で微笑むモブ村娘を絶対に振り返らせたい.02

「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」


 その子は笑顔でそう答えると、また花壇の方に向き直った。


 ──なんだ、NPCモブか。


 オレは心の中で独りごちた。


 ……


 この世界には二種類の存在がいる。

 オレらのような冒険者、盗賊、果ては北の魔王まで。

 みな意思を持って自由に生き、どこへでも行けるモンだ。


 対して、宿屋の主人とか武器屋の主人──そしてこの子のような、同じことしか言わねえし、ひとつの事しかできねえやつらがいる。

 オレらはそいつらをNPCモブって呼んでる。

 なんのために、誰が創ったのか、それはわからない。

 でも、気の遠くなるくらい昔からモブ達は居たし、もう居るのが当たり前過ぎてだれも何も感じない。


 宿屋や武器屋の主は、まだいい。

 役割があり、その使命を全うしているから。


 でも、この子は──


 たぶん、この村ができた時からここに居て、そして村が終わってもいるのだろう。


 ようこそ。

 みてみて。


 そんなことを言いながら。

 なぜかその事に思いを馳せると。

 なぜか。


 胸に穴が空いているかのような感覚に襲われるのだった。


 ……


 で、目の前にいるこの子。

 いつまでここに、この花壇に立っているのだろう。


「おい」

「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」

「そろそろ暗くなるぞ」

「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」

「……はあ、だめか」


 モブに話しかけるヤツなんて、に越してきたばかりのヤツか、頭が沸いちゃってるヤツだけだ。


「じゃあな、風邪ひくなよ」

「ようこそ はじまりの……」


 律儀なヤツめ。

 クラウスのヤツにも見習わせてやりてえぜ。


 ……


「ちょっと、そこのお兄さん」

「うわあ!」


 びっくりした!

 あの子が話しかけてきたと思った。


「な、なんだよ?」

「復讐」

「は?」

「復讐、したいでしょ」


 あの子かと思ったその子は、にんまりと笑って、そう聞いてきた。

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