【第三章】

勇者パーティを追放されたオレは、始まりの村のお花畑で微笑むモブ村娘を絶対に振り返らせたい.01

「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」


 ▶はなしかける

  あたりをさぐる

  プレゼントする

  アイテム


「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」


  はなしかける

  あたりをさぐる

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 きれいなはなたば を プレゼント した!


「まあ! なんてきれいな はなたば! うれしいわ ありがとう ゆうしゃさま」


 ……


 うれしいわ ありがとう ゆうしゃさま。


 ……


 ありがとう ゆうしゃさま。


 ……


 ……


「剣士アルベルト、お前をこのパーティから追放する!」

「はあっ? なんでだよっ!」


 オレはパーティのリーダー……クラウスが言い終わる前に、喰らいついた。

 はあ、とクラウスは大きなため息をつく。


「……そういうところだ、アルベルト。リーダーである俺の、やることなすこと全方位に噛み付いてくるお前の性格。……合わないんだよ。正直うんざりだ」

「でもよっ! オレだってパーティに貢献してきたろ? なあ、エミーリア、グレーテ!」


 オレが前衛で守ってきた白魔法使いと踊り子はリーダーのナイトにすがった。


「ごめんねえ、アルベルトちゃん。あたし、やっぱり、クラウスの言うことに一理あると思うの。……ねえ、エミーリア」

「……ごめんなさい、アルベルトさま……お許しを」

「……と、言う訳だ。協調性に欠けたお前はパーティには必要ない。さっさと出ていきな」


 ……勇者だかなんだか知らねえが。

 両手に花を持って、浮かれやがって。


「なんだよなんだよ! わかったよ、そんなパーティ、こっちから願い下げだよ! あばよっ!」


 オレはリンクスいちの高級宿屋を飛び出した。


 ……


 村の大通りのあっちこっちには駆け出しの冒険者ばかり。

 まだ不慣れな連中が、新しいパーティを探して右往左往。


 ──ちっ。オレもコイツらみたいにやり直せってか。


「あの、勇者様ですか?」


 気弱そうな駆け出しの冒険者に声を掛けられた。

 ああ。

 なるほどな。


「そう見えるか……見えるよな。……わりぃ。オレ、勇者様じゃねえんだわ」


 リンクスは銅鉱山で栄える比較的大きな村。

 極めて良心的な価格で安価な青銅製の武器防具が揃うので、ここを「始まりの村」と呼び最初の拠点とする冒険者も多い。

 で、オレが身につけているのは「真鍮製」の鎧。

 青銅製の武具と違い金色に見えるから、黄金の鎧を身につけた一流騎士に見えるのだろう。

 でも、真鍮も……黄銅。

 銅製であることに違いは無い。

 何を隠そうコイツも、このリンクスで作ってもらった初級の防具なのだ。

 大好きな金色に見えるから。

 それだけの理由で鍛冶屋にこしらえてもらった、ピカピカの鎧。

 黄金に似た、真鍮。

 勇者に似た、ただの剣士。


 ……ニセモノの、勇者。

 オレにぴったりの名前だ。


 そんなことを考えながら歩いているうちに、村の入口に着いた。

 なんて言ったかよく分からない紫の花が、素朴な花壇に植えられている。

 その中で、ジョウロ片手にぼーっと突っ立っている村娘に目がいった。

 身に纏う服は、茶色のワンピースにエプロン。

 その辺の、どこにでも居る村娘だ。

 ただ、きれいな赤毛のお下げが、夕焼けによく映えて。

 その後ろ姿はやけに。


 ──やけに、綺麗に見えた。


「……おい、どうした、そろそろ暗くなるぞ」


 するとくるりと回って、その子はそばかすいっぱいに笑顔で答えた。


「ようこそ はじまりのむら リンクスへ! みてみて このおはな キレイでしょう」

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