婚約破棄公爵令嬢リルオードは最後に第二王子の寵愛を受ける.13【完】

「愛しいリルオード、おいで」

「はい、あなた」


 新たに王太子になったアレクシス陛下に、今日も抱いていただきました。

 わたくしが最後まで守った純潔も、無事、愛する陛下にあげることができました。

 あれから、一年。

 何度も身体を重ね、赤ちゃんを授かることができました。

 身体がもともと細身だったから、初産はとても大変だったけど、王室総出でサポートしてくれたので、無事に出産できました。

 可愛い可愛い女の子です。

 名前はエレンディラと名付けました。


 母様が立てるようになりました。

 更に、父様が目覚めたと、病院から連絡がありました。

 二人ともまだリハビリが必要だけど、あと少しで家族みんなで暮らせそうです。


 陛下は毎夜愛してくれます。

 一回じゃとてもたりないみたいで、わたくしが果てるまで愛をくれます。

 おかげで二人目をお腹に授かりました。

 昨日、分かったのです。


 ああ、なんて幸せなんでしょう。

 なんておいしいんでしょう。


「リルオード、エレンディラが泣いているよ」

「はいはい、今お母さんがおっぱいあげますからねぇ」


 ちゅっちゅっ。


 美味しそうに飲んでくれます。

 そうだ、母様がよくわたくしに歌ってくれた子守唄。

 あれはよく効くのです。

 たしか──


「……」


「……? どうした?」

「あ、いえ……わたくしは今、無くしたものを思い出したのです。……とても、大事なものを」

「……今、幸せではないのか?」


 ええ。

 もちろん。


 優しい夫は笑います。

 わたくしも、笑顔を作りました。


 とても、優しい笑顔を。



【第二章.完】

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