勇者パーティを追放されたオレは、始まりの村のお花畑で微笑むモブ村娘を絶対に振り返らせたい.10

「久しぶりだねえ。アルベルトくん。……モブ子ちゃんとは仲良くしてる?」


 四年ぶりに会った復讐の女神様は、這いつくばってもう動けないオレに、昨日会ったみたいに話しかけた。


「なあ、オレ、死ぬのかな」

「そうだね。あと〇.六三秒後には命を落とすね。……でも、初めてよ」

「なにが」

「貴方が黄金竜に戦いを挑んだのは」

「そりゃそうだ。今が初めてで、それでこんなにやられて」

「いいえ」


 シッスルはしゃがみこんで、オレの顔を覗き込んだ。


「あなたは黄金竜のもとを訪れては、戦うことを選ばず、その鎧を手に入れ、故郷のリンクスに帰っていた」

「……そんなこと、覚えちゃいねえ」

「黄金の鎧はね。黄金竜が、自身を倒さない代わりに与える、言わばニセモノの勇者の証。前世の貴方はそれを以て、自分を追放したパーティに戻っていたの」

「前世……?」

「そう。貴方はわたしに記憶を対価に、そうやってパーティの人達に一泡吹かせるため、わたしと復讐の契約をしてきた。ずっとずっと、それを繰り返してきた。……だから、今回が初めてなの。わたしに復讐を依頼せず、かつ自分から黄金竜と戦いを挑んだのは」

「……ってことは、オレは……」

「そう」


 シッスルはにっこりとわらって立ち上がった。


「転生者なの。もう百回は同じプレイヤーを繰り返してるけどね」

「そう……だったのか……」


『長らくこの世界に留まると、転生してきた記憶を忘れてしまう人もいるんだとか!』


「そんなに繰り返して、オレは何を成そうとしていたんだ?」

「成そうというより……取り戻したかったのね」


 くるりと後ろを振り返る彼女に、オレは恐る恐る聞いてみた。


「なにを……取り戻したかったんだ?」

「黄金竜から。リンクスの村を」

「……へ?」

「いつも通り記憶を対価にパーティにもどったあなたは、リンクスを出て旅に出た。そして北の魔王を討伐を目標にする。その間にね。……灰にされちゃうの。リンクスの村。……黄金竜によって」

「黄金竜が……?」

「そう。そういうイベントがね、終盤起こるのよ。そして貴方は、愛する女の子を喪う」

「それって……! まさか!」

「そう、そのまさか」


 にっこりと残酷な笑顔で、復讐の女神は、告げた。


「ハンナ・ベルは、村の入り口で真っ先に灰になって死ぬ。過去の貴方が、黄金竜を倒さなかったから」

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