大好きなお兄様を守れなかったバリキャリウーマンの私が幼女に転生したので、次は絶対に大好きなお兄様を守り切ります!!.02

「──さん」


 私の意識は宙を彷徨っている。


「有沙さん」


 けれど体はどういう訳か、どこかに寝ているようだ。


「したい?」


 暖かい、お日様の日差しがほっぺたを暖めてくれている。


「復讐、したい?」


 このまま目を閉じていたかったけど、声の主はそれを許さないみたいだ。


「したいでしょ、復讐」


 復讐……?

 私はそんなの、いい。


 せっかく二十七連勤頑張ったんだもん。

 お兄ちゃんが。

 お兄ちゃんが心配。


「あらそう?」


 薄ら目を開ける。

 黄色いリボンを着けた女の子に見える影が、そう言ったように聞こえた。

 なんでだか、とても……綺麗に見えた。


「もったいないなあ。幸せになるための前菜オードブルなのにね」


 前菜オードブル

 なにそれ。


「まあいいや、またおいでなさいな。生田有沙さん。呼ばれてるわ」


 呼ぶ……誰が?


「貴女を呼ぶ人なんて、一人しかいないじゃない」


 ありさ。

 ありさ──


 それ……それってまさか。


「お兄ちゃ──」


 ……


「おにいちゃん!」


 私は目を開けた。

 ぴりっ。

 いたたっ……

 ほっぺたが痛い。

 そういえば私、トラックに跳ねられて、それで──


「大丈夫かい?」


 誰かが覗き込んでいる。

 逆光で、誰かはわからない。

 ……いや、違う。

 姿は見えなくても、この声は知っている。

 忘れるはずがない。

 だって、この声は今までずっと守ってきた……


「れいおにいちゃん……」

「なんだい、アリッサ」


 そう呼ぶと、私を膝枕していたお兄ちゃんは優しく微笑んだ。

 お日様が暖かい。

 そういえば。


 ……お日様の光を浴びたのは何日ぶりだろう。


「ほっぺを切っているじゃないか……そこのアザミかな」


 そう言ってお兄ちゃんは、ハンカチで私のほっぺたの血を拭いてくれた。

 お兄ちゃんはなんだか頼もしい。


『したいでしょ、復讐』


 なぜかふと、さっきの女の子の声が頭に浮かぶ。

 それは頭の奥底に張り付いては、離れないのだった。

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