勇者パーティを追放されたオレは、始まりの村のお花畑で微笑むモブ村娘を絶対に振り返らせたい.06

 あれから、二ヶ月が経った。

 オレは誰とも組まずに、ひとり、黙々とクエストを続けた。

 中には、別の村へ繋がるイベントが起きるクエストも幾つかある。

 オレらはキークエストって呼んでる。

 大抵の冒険者はある程度経験値が溜まってレベルがあがったら、そういったクエストを受けて村の外に出ていく。

 言わばレベルアップの証だ。


 そして、大概の冒険者は、この村には戻らない。


 売っている武具は青銅製で、一線級の性能には遠く及ばないシロモノばかり。

 売っている魔法も、火、雷、氷と回復の、初期魔法ばかり。

 売っているアイテムも、薬草とその他少しだけ回復する、どれも百ゴルドもしない最低限のものばかり。


 戻ってくるメリットも、この村に留まるメリットも、何も無いのだ。


 見送りをするだけの村。

 生きてるモノホンの村人も、NPCモブも、誰にも省みられずに、ただ見送り続ける日常。


 そんな彼らの力になりたいと思った。


 誰も戻ってこない村の入口で、誰に気にかけられる訳でもなく、ひたすらアザミに水をあげるモブ子。


 そんな彼女の力になりたいと思った。


 ……


 クエストは、村の危機を廃するものだけに絞って受注した。

 二百ゴルドと少し、稼げればいい。

 一番安いチューリップの花束を買える、金額。

(と、安い場末の宿代と食費)


 毎日夕方。

 ギルドに報告して報酬を貰ったら、ソッコーで花屋に立ち寄り、花束を買って、そしてモブ子にあげる。


「まあ! なんてきれいな はなたば! うれしいわ ありがとう ゆうしゃさま」


 オレの負った傷は、どんな重傷でも宿屋で一晩寝りゃ、どんな傷も治る。

 けれど、この赤毛のお下げの女の子の笑顔は、オレに百倍の勇気をもたらす、最高の魔法なのだった。


 大好きだった。


 この子の笑顔が。

 地味な村娘の服が。

 手に持ったジョウロが。

 ゆうしゃさまとオレを呼んでくれることが。

 花束を持って愛おしそうに微笑む、そのほっぺたが。


 ……


「ところであなた、あなたもハンナちゃん攻略派でござるか?」


 人が愛する女の子を微笑みながら見てる時に。

 そいつは、無粋にオレに話しかけてきた。

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