大好きなお兄様を守れなかったバリキャリウーマンの私が幼女に転生したので、次は絶対に大好きなお兄様を守り切ります!!.08

 あれから──シッスルに会ってから──数日が経った。

 あの性格最悪な双子の兄弟と香水が酷い臭いのおばさんは、私たちの家に居座るようになった。

 そして、ありとあらゆる嫌がらせを始めた。


 おやつ食べようぜ。

 そう言ってお兄ちゃんの書斎に入って来ては。


 あ、ごめんごめん。


 インクがたっぷり入った瓶を倒した。

 契約書を床にばら蒔いた。

 戸棚の重要な書類を、ポイポイと床に放り投げた。


「やめなさいよ! やめて!」


 お兄ちゃんを虐めるな!

 私は声を張り上げて怒るけれど──おまけにこの前の記憶がせり上ってきて吐きそうになりながら──、お兄ちゃんは片手で私を制した。


「いいんだ。怒ったら負けだよ。じっと、じぃっと耐えるんだ。いいね?」


 お兄ちゃんの意気地無し!

 虫が納まらなかったし、明らかに無理してて、心配で心配でしかたない。


 ……


 おばさん──たしかバーバラとかいう──はもっとひどい。

 食事の時、お兄ちゃんがむせ始めた。


「あらあら、大丈夫?」


 なんて呑気に声をかけてくるけど、ほんとに辛そうだ。


 なにか、おかしい!

 お兄ちゃんが食べていたスープを一口飲んでみる。

 凄まじい苦味と辛味が同時に襲ってきた。


 ──明らかに食べ物の味じゃない!


 とても四歳の舌では耐えきれず、床に吐き出した。


「あらまー、貰いっ子は、やっぱりだめねえ。せっかく作らせた特製スープなのに、床にこぼすなんて」

「あんた……なにいれたのよ……っ!」


 ハウスメイドが慌てて駆け寄る。


「お嬢様、お坊ちゃま、どうされました」

「なんでも……ごほごほ……ない……っ」


 お兄ちゃんは心配をかけまいと手で制すが、危機感を感じたであろうメイドはお兄ちゃんからスプーンを取った。


「お坊ちゃま、失礼します! ……んまあっ、なにこれ! うぅ、ひどい! すぐに下げさせます! お坊ちゃま、お嬢様もこちらへ、お医者を呼んできます」


 もうこのおばさんとは一秒もそばに居たくなかった私は、お兄ちゃんと一緒にハウスメイドに付き従い、そして部屋を出た。

 視線を感じて振り返ると……


 バーバラがにんまりと嗤っていた。

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