大好きなお兄様を守れなかったバリキャリウーマンの私が幼女に転生したので、次は絶対に大好きなお兄様を守り切ります!!.09

 結局、お兄ちゃんの一存でお医者さんは帰されてしまった。


 おにいちゃん。

 なんで。

 だめだよ。

 ひどいことされたっていわないと。


 私は必死で訴えたものの、七歳の少年の心は頑なだった。


「僕の家族はアリッサ。もう君だけになってしまった」


 ベッドの上で俯く男の子は、とても頼りなく、とても小さくて……


「だからね、アリッサ。君さえ元気なら、なんでもいいんだ」


 そんな小さな男の子が、顔を近付けてきた。

 優しい優しい、お兄ちゃんの顔で。


「君が好きだ。だいすきなんだ」


 ん──!

 甘い、甘い香り。

 口に広がる優しい温もり。


 三十二歳年上の私。

 ファーストキスは……七歳の兄だった。


 煉獄から、少しだけ開放されたような気がした。


 ……


 夜寝る時も、朝ごはんも、昼ごはんも、夜ご飯も。

 お風呂もいっしょだ。

 私の長い髪を綺麗に洗ってくれる。

 前世の私の百倍は綺麗な肢体。

 見られても全然恥ずかしくなかった。


 お仕事は大変そうだけど、私が守らなきゃ。

 全力でフォローした。

 二十七連勤の力を、思う存分に奮った。


 そしておやつの時間に外に出て、大好きなアザミの庭で二人で寝転がる。

 お兄ちゃんの体温と。

 あの──女の子を感じながら。


 私が今までずっと夢見てきたお兄ちゃんとの時間。

 それを取り戻すため、私は守り続けた。

 大切なお兄ちゃんを。


 だから。

 だから許せない。


 それを踏みにじるあの三人が。


 許せない。


「ねえ、シッスル。ふくしゅうのいみ、わたしわかったきがする」


 一輪摘んだアザミの花に話しかける。

 でも。

 あの時庭で踊っていた美しいあの女の子が、私の前に現れることは、なかった。


「どうした?」


 優しい兄が声をかけてくれる。


「ううん、なんでもない」


 幸せな妹は、そう、笑って答えた。

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