大好きなお兄様を守れなかったバリキャリウーマンの私が幼女に転生したので、次は絶対に大好きなお兄様を守り切ります!!.11

「呼んだ?」


 は、ずっとずっと前から知っている大切な親友の様に笑った。

 それはまるで、待ち合わせよりずっと早く来て待っていてくれたかのように。


「シッスル!」


 私は思わず抱きついて泣いた。

 泣いていいと思った。

 彼女なら、受け止めてくれると思ったから。

 その期待通り、彼女は優しく私を抱きしめた。


「お腹減っちゃったか、ねえ。こんなに憎しみを溜め込んで。頑張った、頑張ったね」


 恐ろしい言葉を紡いでいるはずなのに、私には優しいお姉ちゃんが妹を抱きしめてくれているかのよう。


「今から貴女は幸せになる。その為にはまず、前菜オードブルを食べないとねえ。とっても美味しい、憎悪の味の」


 そして、私の前にしゃがみ込んで、頭を撫でた。


「ね? 復讐。しよ?」

「……うん」


 私にはもう……その言葉しか出てこなかった。


「よしよし。よーしよしよし。よく言えました」


 ぱちぱちぱちぱち。

 シッスルはわざとらしく満面の笑みで手を鳴らす。


「じゃあまず、対価をもらうからね」

「た、たいか? そんなのきいてない」

「ちっちっちっ」


 シッスルは人差し指をゆらゆらと左右に振った。

 あくまでも年上を演じていたいようだ──本当に年上かもしれないが。


「この世の全ては等価交換。何かの対価無くして何かを得ることは、できない」

「……わかった。なにをさしだせばいいの?」

「それはわたしが決めること。気にしなくていいのよ」


 にこっ。

 棘の少女は犬歯を見せて笑った。


「ふんふん、にしよう、そうだわ、それがいい」

「あれって?」

「内緒」

「ねえ、まさかおにいちゃんの──」

「いいから、いいから。貴女は気にしないの」


 なにか、とても嫌な予感がするのだけれど、彼女は教えてくれない。


「さあ、美味しい美味しい前菜オードブルの時間よ!」

「でも、ふくしゅうなんて、どうやって」

「今から貴女に目をあげる」

「……め、って?」

「ふふ。美味しい料理を見抜く目、だよ」


 そう言って、シッスルは右の掌を私の両目に当てた。


「ほら、見える? 醜いものたちが隠す、絶好のごちそうが」

「……うん、みえる……」


 私が応えると、手を離した。

 そして、両肩に手を乗せ、呪文のようにもう一度、繰り返した。


「貴女はこれから幸せになる。この国の、誰よりも幸せになる。いわば最高のご馳走よ。復讐は、その前の前菜オードブルだよ。美味しい美味しい、ね?」


 そして、ウインクして私の肩をぽんっ、と優しく叩いた。


「さあ、召し上がれ! わたしの可愛い報復の子よ!」

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