大好きなお兄様を守れなかったバリキャリウーマンの私が幼女に転生したので、次は絶対に大好きなお兄様を守り切ります!!.05

 きゃああああ。

 いゃああああ。


 叫んでいるのは、私……?

 そか、私なのね。

 そう気づいた時には意識が宙を舞っていて、お兄ちゃんの腕の中に倒れ込んで意識を失った。


 ……


「うわああん、うわああん」

「見ろよ、オリヴァー。まるでネコみたいに鳴いてるぜ」

「だしてえ、だしてえ」

「うん、オーウェン。ネコみたいだね」

「ああああん、ああああん」


「なにしてるんだよっ、やめろよっ」

「よお、レイモンド、お前のとこの貰いっ子、まるでネコみたいだぜ?」

「そーそー。ネコみたいだぜ?」

「どけよっ! ……いま開けるからな、アリッサ! 大丈夫、お兄ちゃんが今行くからな!」

「おにいぢゃぁぁあん! ああああん」

「『おにいぢゃあん』だってさ……ははは」

「だってさ……くすくすくすくす」

「どけよっ、あっちへ行けよ! ……アリッサ……」


「おにいぢゃん、おにいぢゃん」

「もう大丈夫、大丈夫だから」


「おにいぢゃん」

「ねえ、おにいぢゃん」


「こんどはわたしがまもるから」

「ねえ、おにいちゃん」


「ねえ」


「ねえ、貴女」


 ……


「復讐、したくない?」


 ……


「はっ!」

「アリッサ! ……気がついた?」


 気がつくと私は、ベッドの中からちょこんと顔を出していた。

 お兄ちゃんはずっとそばに居てくれたみた顔いで、私が目を覚ますとすぐに覗き込んできた。

 ちくり。

 いたっ。

 指先に何かが刺さった感触がして、ベッドからをゆっくり引き出すと……


 紫色をしたアザミの花が一輪、出てきた。


「また摘んできたのかい? ……アリッサは好きだね、アザミシッスルが」


『シッスルよ、わたしの名前。花言葉は、復讐』


「ひどい奴らだよね。僕たちの家を乗っ取るつもりなんだ」

「ねえ、お兄ちゃん。貰いっ子って……」


 お兄ちゃんはキッと真剣な眼差しで語気を強めた。


「そんなの、気にしちゃダメだ! アリッサは……アリッサは」


 そして、下を向いて涙した。


「僕の、たったひとりの大切な家族なんだから……」


『覚えておいて。復讐は美味しい前菜オードブル。貴女が幸せになるための、美味しい美味しい、ごちそうだよ』


 紫色のシッスルが、そう耳元で囁いた。

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