Ep.13 -「…あっ…おは、よう。響谷、くん」-
「…あっ…おは、よう。響谷、くん」
「うん、おはよう結華」
今日は朝から結華の様子が変だ。
…まあ、何があったかは何となく…というよりもほぼ100%察しは付いている。
「…昨日の事は、本当に気にしてないよ?」
「…響谷くんがそうだとしても、私が気にする…」
結華が珍しく…と言うか初めてかもしれない、机に突っ伏す場面。
クラス中の視線が結華…と俺に集まる。
「…まあ、分かったよ。手伝ってほしいことがあれば言ってくれ」
「うん、ありがとう」
突っ伏した状態から起き上がり、何もなかったかのように本を読みだす。
ONとOFFの切り替えが素早いようで…。
「なぁ、響谷」
森谷にそう声を掛けられて、振り返る。
「んあ?どうした森谷」
「いや、姫となんかあったん?」
「あぁ…まあ、な」
流石に結華から『襲って』って言われたなんて言えるわけがない。
「え?まさかフられたとか?」
「なんでフられたのに普通に話してんだよ」
と言うかもしそうだとして、元恋人が自分の席の隣とか地獄過ぎるだろ。
「いや、ほら、『やっぱり友達の方が良かった』みたいな?」
「…何言ってるんだお前?」
「すまん、自分でもよく分からん」
「じゃあ俺が理解することは無理だな」
昼休み、今日は結華は一人で弁当を食べていた。
俺はそんな結華をぼーっと見ながら弁当を食べる。
「相変わらず孤独だねぇ、姫は」
「…だな」
結華は笑わない。俺以外には。だから、関わろうにも関われない生徒が多い。
一応、話しかけてくる女子生徒も居ないことは無い…が、だいたい空気感に耐えかねて退散していく。
「独りで寂しくないのかね」
「…さぁな」
「彼氏なのに随分とドライだな」
っていうか、俺って森谷に結華と付き合ったなんて言ったことあったか?
「…なんで付き合ってるって分かった?」
「ふっふっふ…響谷は一体、俺と響谷が友人になってどれくらいだと思ってるんだ?」
「いや、まだ1年も経ってねえだろ」
「まあそうだな。…で、彼氏なのにそんなにドライで良いのかよ?」
「…まあ、今はな」
「ほーん…?寝取られたりとか考えねえのか?」
「…あぁ、まあ、そうなったら…どうなるんだろうな」
正直行き当たりばったりだから何ともなぁ…。
「でも寝取られ物は良いぞー?」
「その話は
「お?なんだお前純愛派か?」
「だから、
「いっ…たぁ…」
体育の授業、俺は体育館ではなく保健室にいた。
サボりではない、怪我をした。
バスケのシュートをしようとジャンプをしたところ、着地をミスって足を捻挫した。
ちなみに森谷は爆笑していた。結華はとても心配そうにこっちを見ながらスリーポイントシュートを決めてた。
…マジで、覚えとけよ
「月守くん、戻れそう?」
「…まあ…はい…。歩けない訳じゃないので…」
「っ!響谷くん!大丈夫!?」
ガラっと保健室の扉が開く音と、今まで聞いたことが無いくらいの結華の大きな声。
普段、大声なんて出さない結華がこんなにも大声を出したので、保健の先生は驚いて固まっている。
振り返ると、少し涙目になりながら俺を見つめる結華と目が合う。
「響谷くん!」
「おわっ―――っ!」
俺に飛びついてくる結華を受け止める。捻挫した足がとんでもなく痛むが、どうにか声を我慢する。
「し、白峰さん?月守くん、まだ痛むから飛びついちゃ駄目よ?」
「あっ…ごめん響谷くん…」
「いや、うん…まあ痛いけど…大丈夫…」
「というか、私もう30超えたし婚期を気にする時期なのに、カップルのイチャラブを目の前で見せられる身にもなりなさいよ。ただの地獄じゃない」
…、うん、なんか、ごめんなさい。
「イチャラブなら家でやりなさい。ここはサボるための場所…ましてや、カップルが致す場所じゃないの」
「それくらい知ってますよ。流石にそれくらいの節度は持ち合わせてます」
「…まあ、恋愛相談くらいなら乗ってあげないこともないけどね」
あれ、先生って独身…。
「私の恋愛ドラマで培ってきた恋愛経験を活かしてね」
…先生、現実とドラマの区別は付けませんか?っていうか付けて。
「先生…初恋はまだ…」
「…えぇ、えぇそうよ!30代にもなってまだ初恋もしてない独身の女よ!悪い!?私だって焦がれるような恋がしたいのよぉ~っ!うわぁぁぁぁん!」
「…結華、これ以上傷を抉るのはやめてあげよう」
なんか可哀想になってきた。
「…と、とりあえず、ありがとうございました、先生」
「ぐすっ…えぇ…ひぐっ…彼女さんとっ、うっうっ…お幸せにね…うぇぇぇん!」
…本当にすみません。先生。あと頑張ってください、色々。
「先生」
「なに…?ひぐっ…」
「色々…頑張ってください」
「これ以上私を惨めにしないでぇぇぇ!びぇぇぇん!」
「…結華、こういうのはね、そっとしておくのが一番いいんだよ」
…まあ、なんていうか…うん。…頑張ってください、色々。
「…まあ、でも」
「ん?」
「骨折とかしてなくてよかった…本当に、よかった」
「…そうだね」
「…あと」
「ん?」
「森谷さんにはきつく言っておいた」
…あぁ、うん…。それはどうもありがとう、結華。
――――――――
作者's つぶやき:えー…ただただ可哀想な保健室の先生でした。
というか、心配そうに響谷くんの方を見ながら(ノールックで)スリーポイントシュートって、本当にどうなってるんですかね。
白峰さんは一体何を目指しているのやら。
そのうちどこかの可愛いだけじゃない彼女さんみたいになりそうですね。
――――――――
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