Ep.21 -「新聞部でーす!月守響谷くんはいますかー?」-

 放課後、いつものように森谷、結華と帰ろうとすると、教室の後ろ側の扉が勢いよく開く。

「新聞部でーす!月守響谷くんはいますかー?」

 …入ってきたのは新聞部の部員、…あと、俺を名指ししてきた。

「ほら、お呼ばれしてるぞ響谷」

「…えぇ…、行かなきゃダメ?」

「そりゃぁ、まぁ…な」

 ドンマイとでも言うように俺の肩にポンと手を置く森谷。

「ま、お前に限って評価を下げられるような記事は書かれないだろうさ、さっさと行った方が早く終わると思うぞ」

「…だと良いんだがな」

 森谷に向かってそう言った後に、新聞部員の方に向かう。

「…ほれ、俺たちは帰るぞ」

「…私は…待ってたいけど」

「響谷が心配するだろ?」

「…そうだね、帰ろう」


「お、君が月守響谷くん?」

「はい」

「…まぁ、教室でインタビューもなんだしさ、部室に案内するよ」



 部員さんに案内されて、新聞部の部室に来た。部屋の中央に机が置かれて、それを囲むように椅子が配置されている。

「適当な所に掛けてねー」

 そう言え荒れた俺は、入り口から一番近い席に座る。

「…えー、コホン。それではインタビューを始めさせていただきます。…っと、そういえば名乗ってなかったっけ。私は七瀬梨々花ね」

「あ…はい」

 七瀬梨々花、そう名乗った彼女は手帳とペンを取り出した。

「それじゃまず一つ目の質問、白峰結華と付き合ってる?」

 それいきなり聞くんだ…もっとなんかこう…無かったの?質問の種類とかさ。

「…えっと、まあはい」

「ふーん…簡単にズル休みするような男子生徒と…あんな美人ちゃんが、ね~…?」

 …人には人の事情ってもんがあるんだよ。確かにズル休みはしたさ、だけどあのまま学校に行って人殴るよりかは何倍もマシだろうが。

「…何が言いたいんです?」

 …そう言いたい気持ちを抑えて、七瀬さんの言葉の意味を聞いてみる。

「いや、なんか彼女の弱みを握って付き合ってるんじゃないのかな~、って」

「…ズル休みした程度でそんなクズに評価が落ちますかね」

「でもそうでもしないと説明が付かないよ?」

 …なんで第三者が勝手に説明を付けようとしてるんだか…。

「それとも…君みたいな所謂フツメン男子に一目惚れする要素があると思う?」

 それは人それぞれな気が…、ていうか結華が俺を好きな理由は本人ですら知らないんだから俺が理解できるわけないんだよなぁ…。

「そんなラブ&コメディーの世界じゃないんだしさ、所詮フツメンはフツメン、イケメンには敵わないわけ」

「…はぁ…」

「だから、君は一体どうやって白峰結華と付き合ったのかなってさ。二人が学校の中でイチャついてるところ、見た事ないんだけど」

「…だったらそれが、一番の証拠でしょ」

「というと?」

「普通、弱みを握って付き合ってるのなら相手を気遣って満足させたりするはずです、自分の秘密とか弱みをバラされないように。でも、俺とゆい―――彼女が学校でイチャついてる姿を見ない…という事は、俺が彼女の弱みを握ってない事の証拠なのでは?」

「…でもなんか納得いかないんだよね」

「貴女が彼女にどんな理想や偏見をを押し付けているのかは知りませんが、理想は理想、現実は現実です。納得いくいかないではなくて、それが事実なので」

 ってか早く帰りたい、なんなのこの時間は。

「まぁ、二人ともそんなに仲良くもなさそうだし…これは記事にしてもそんなに注目されなさそうだね~…また新しいネタ探しかぁ…」

 ………。



「…はぁ~~~~~…」

「随分お疲れみたいだない響谷。なんかあったか?」

「なんかあったからこんなに疲れてんだよ…」

「まあそれもそうか。…で、何があったんだ?」

「なんか新聞部の部員に謎のインタビュー食らった」

「…そうか。…で、響谷」

「んぁ?」

「飯まだ?」

「…お疲れの俺に飯を作れと」

「あぁ勿論」

「こんなにお疲れの俺をこき使うと」

「あぁ、勿論」

「人の心とかないんか?」

「まぁ、あるんじゃねぇの?ってか、疲れてても飯くらい作れるだろ」

 まあそれはそうだけども。

「…そんなに疲れてんのか?」

「…いや、飯は作るから大丈夫」

「あんまり無茶はすんなよ」

「わーってるっての…よいしょっと」

 ソファから立ち上がって、キッチンに向かう。

「ってか食材買ってきたん?」

「おぅ、そりゃ勿論」

「あっそう…で、何を作ればいいの?」

「ん?テキトー」

「…お前さぁ」

「いちいちメニュー考えんの面倒。もう炒飯でいいわ」

「はいはい、りょーかい」



 夕飯の後に風呂に入って、ソファでゆっくり寛いでいると、結華からメッセージが届く。

 -響谷くん、明日私の家に泊まらない?-

 -別に良いけど、なんで?-

 -響谷くんの家に泊まってばっかりだから、たまにはどうかなって-

 -なるほど-

「…葵」

「んぁ?」

「明日結華の家泊るから」

「おう、りょーかい」

 葵がダイニングテーブルの椅子から立ち上がってこっちに向かってきて、俺の隣に座る。そして、俺の足に頭を乗せる。

「お前…何してんだ…?」

「…悪い、ちょっと寝る」

「は?…マジかよ」

 …そんだけ疲れてたって事か…、『無茶すんなよ』って俺には言うくせして自分は無茶してんだよな…。

 いつかパタッと倒れそうで心配だよ、俺は。


――――――――

作者's つぶやき:…最後、葵さんが響谷くんを膝枕にしてるシーンを書きましたけど、別にアオ×響谷ヒビを書きたかったわけではなくてですね。

…まあ、疲れてるんですよ、葵さんも。夜遅くまで残業もザラですし。

…この、お互い軽口を言い合ってるけどお互いに本心では心配してるっていいですよね…。繰り返し言いますけど、葵さんと響谷くんの関係性は大好きです。この…何とも言えない良さが、ね…。

あと新聞部のインタビューは自分でも何がしたかったのか分かりませんでした。

…そろぼち最終回ですかね…。

――――――――

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