Ep.22 -「なんでずっと俺の匂い嗅いでるの?」-

「…ん…」

「…やっと起きたか葵」

「…あぁ…おはよ…」

「…お前さ、俺には無茶すんなって言うくせに自分では無茶してんのやめろよ?」

「…あぁ、…わーってるけどさ…、一応お前養うために仕事してんだから…な」

 …まあ、それはそうかもしれんが。

「たまにはちゃんと休めよ」

「…おぅ、分かってる…」

 …大丈夫だと良いけどな…。



「…なぁ、結華?」

「…ん…?」

「なんでずっと俺の匂い嗅いでるの?」

「そう言う気分なだけ、だよ」

 結華はそう言いながら俺の首筋や全身の匂いを嗅いでいく。

 …なんだろうな、この…。ちょっとこそばゆい感じが…。

「…ちょっとくすぐったい…」

「…ごめん、我慢して」

「…まあ良いけどさ」

「…お前ら、なんか日に日にイチャつき度が増してねーか?」


「…響谷…」

「っ…」

 とろけた様な結華の声が、耳元で囁かれる。抱き締められて、理性がすり減っていく。

「響谷…すき…」

「…あぁー…家空けたほうが良いか?」

「待っ…葵、ステイ…」

「あ、なんで?」

「今…やばいから…一線越えそうになった、ら…止めてくれ…」

「…はぁ、わーったよ」


 …体感だと何時間か…くらい。実際だと20分も過ぎてない…はず。結華の行動にすり減っていく理性と格闘している…と、結華の抱き着く力が強まった後に、結華の息の音しか聞こえなくなる。

「…結華?」

「すぅ……すぅ……」

 …寝た?

「…まぁ、止める必要が無くてよかった」

「…だな。…それじゃあまぁ、取り敢えず結華ベッドに寝かしてくるわ」

「おう」

 結華を抱き抱えて、2階の葵の部屋に置いてあるベッドに結華を寝かして、リビングに戻ってくる。

「葵、ベッド使わせてもらったぞ」

「うぃ」


「…そういやさ響谷」

「ん?」

「お前さ、今母親のことどう思ってんの?」

「…まぁ、無責任に自殺した奴としか」

「あぁ、別に評価が変わったわけじゃないのな」

「まぁ、だって変わる要因が無いだろ?」

「そりゃそうだが」



 翌日の朝、俺のスマホに森谷からメッセージが届いていた。まあ正確にはメッセージと写真だけど。

 写真には38.9℃と表示された体温計。それとメッセージは『熱出たw』…笑い事じゃないだろこれ。

 -ちなみになんで送ってきた?-

 -いやぁ、今俺ん家親いないんだよな、俺も篠宮も家事出来ないし。察しのいいお前ならわかるだろ?-

 -看病しろって?-

 -いぐざくとりー、頼むわ-

 -えぇ…-

 -そこをなんとか…-

 -分かったから、待ってろ-

 -響谷様々だな-


「…わり葵、朝飯は自分で作ってくれ」

「んぁ?なして?」

「友達が熱出したから看病しに行く」

「それ、良いように使われてるだけじゃね?」

「まあ良いんじゃね?」

「なんでお前が他人事なんだよ」

「いやぁ、まあ…うん」

「…まあ分かったよ、はよ行ってこい」

「うぃ、そんじゃ頼むわ」

「ポカリとか買ってってやれよ~」

「わーってるっての、そんじゃ行ってくる」

「おう、てら~」



「森谷、来たぞ~」

 インターホンを押して、インターホンのマイクに向かってそう言う。暫くして森谷の家の扉が開いて、マスクを着けた森谷が顔を出す。

「おぅ、入っていいぞ~」

「…熱は大丈夫なのか?」

「だいじょばない、くっそ怠い」

「じゃあ鍵開けてすぐに自分の部屋に戻っておけって…。はい、ポカリ」

「おぉ!サンキュー響谷!」

「あんまりでかい声出すなって」

「…おぅ…喉いってぇ…」

 だからでかい声出すなって言ったのに。


「そんで、食欲は?」

「あぁ、まあそれなりにあるな」

「そうか。取り敢えず分かったからソファで寝とけ」

「えぇ…暇なんだよぉ」

「スマホとにらめっこでもしてろ。飯は作ってやるから。…で、冷蔵庫に食材は?」

「俺ん家にそんなものがあると思うか?」

 …えぇ…。

「食材無かったら作れるものも作れないぞ」

「しゃぁねぇ、買い出しに行くしかねぇな」

「…はぁ…後できっちり請求するからな」

「おぅ、もちのろん」

「…そんじゃぁ、食材買って来るから安静にしてろよ」

「はぁい。…っと、ちょっと待ってな、鍵取ってくるわ」

「どこにあるかだけ教えてくれれば自分で取るから大丈夫」

「あぁ、えっと2回の俺の部屋に鞄が置いてあるから、その中」

「了解。ちょっと鍵借りるぞ」

「おぅ」

 そうして森谷の家を出る。と、そのタイミングで森谷の家の前に立っていた篠宮と目が合う。


「…あ、看病してくれてるの?」

「あぁ、うん。…森谷の家に食材無いから買って来るとこ」

「それなら、私が買って来るよ。何を買って来ればいい?」

「えーっと…取り敢えずお粥、それと…まあなんか適当な食材」

「それは魚とか肉とか?」

「まあそんなもんかな」

「分かった、それじゃあ待ってて、私は食材買って戻るから」

「頼んだ」

「頼むね、私の彼氏の事」

「まあただの風邪だろ…多分」

「まあ、そうだね、ついでに風邪薬でも買ってこようか?」

「いや、多分家にある…だろ」

「そっか、そんじゃあ私は食材買って来るから、ばいば~い」

「おう、頼む」

「はぁ~い」


――――――――

作者's つぶやき:次回は森谷くんの看病ですかね~。

まあ、響谷くんの家事スキルは中々のモノなのでね、特に問題なくこなせると思います。

…して、結華さんはどうなったかと言いますと、あの後起きて普通に帰りました。

…まあ、響谷くんが看病してくれるというのなら大丈夫でしょう。

響谷くんと彼方くんの家事スキルはずば抜けておりますから。

――――――――

よろしければ、応援のハートマークと応援コメントをポチッと、よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る