Ep.Last -「うん…おはよう、響谷くん」-
「…なんだかんだ言ってさ、響谷って結構恵まれてるよな」
「どうした急に、その辺の草でも食ったか?」
「食ったことはあるぞ、めっちゃ青臭かった」
「それはそれでどうなんだよ。で、急にどうした?」
「いや、ふと思ってさ」
「そう」
「親が居ないとはいえ、私みたいに世話してくれるやつがいて、それで恋人までできてんだろ?」
まあ、確かにそう言われれば恵まれてるとも言えるのかもな。
「梨帆の願いは果たせそうで良かったよ」
「…あぁ、今すぐにでも自殺しよっかな」
「どうした急に、話聞くぞ?」
「…いや、なんか母さんの望みがどうたら言われると果たしたくねぇなって」
「私も…まあよくないが、一番は結華ちゃんだろ」
「…あぁ、そうだな」
まあ、別に結華と居ること自体嫌な訳じゃない…し、というか普通にそれだけでも幸せだし…。
結華が悲しむようなことはあまりしたくない。
「前々から思ってたけどさ、お前自分の命なんだと思ってんの?」
「…さぁ、なんなんだろ」
「一応言っとくけどな、お前が死んで悲しむ奴はここに居んだぞ」
「…あぁ、わーってるよ」
「絶対分かってねぇだろ」
「…いや、まぁ、母さんが俺を生んだ後に死ぬくらいなら…だったら、最初から俺を生む前に親子共々死にゃいいだろって思ったら…、な」
「お前分かってねぇな、親心を」
「そりゃあ俺は親じゃねぇからな。それに、俺を生んですぐ自殺した親から親心の何を学べってんだよ」
「…お前と結華ちゃんの間に生まれる子供の教育が心配だよ」
「…あぁ、そうだな、それは俺もそう思う」
「そう思ってんなら直す努力をしろってんだ」
「直せんのなら最初から直してんだよ」
「…まぁ、それもそうか」
■
今の時刻は午前6時、私は響谷くんの家の前に来ていた。
流石に…葵さんも起きてないかな。だけど一応確認のため、とインターホンのボタンを押す。
すると、インターホンのスピーカーから葵さんの声が聞こえてくる。
『…あれ、誰かと思ったら結華ちゃん。おはよう、こんな朝からどうしたの?』
「…あの、響谷くんは寝てますか?」
『…んー…どうだろ、いつもならもうそろそろ起きてくるとは思うけど…。ま、とりあえず鍵開けるから入って』
「あ、はい」
葵さんのその言葉を聞いて数秒待つと、響谷くんの家の鍵が解錠される。
扉を開けて玄関で靴を脱いで、響谷くんの部屋に向かう。
響谷くんの部屋の扉を静かに開けて、部屋の中に入る。
「…響谷くん、起きてる?」
ベッドに寝転がる響谷くんのすぐ近くまで行ってそう呟く。返答はない…から、多分響谷くんは寝てる…と思う。
…5分くらいなら…良いよね…。
響谷くんのすぐ隣に寝転がって、響谷くんを後ろからそっと抱き締める。
………やっぱり響谷くんが起きるまでこうしていよう…。
■
「…ん…」
…妙な寝苦しさで目を覚ます。後ろから誰かに抱き着かれているような感覚を感じて、これの正体を寝起きの頭で考え―――ようとしたけど、こんなことをするのは結華以外居ないだろ。
「すぅ…すぅ…」
いつからこうしてたのかは知らないけど、起こすのもなんだか気が引ける。…けど二度寝するわけにも…。
…あ、てか葵の朝ごはんも作らねぇと…今何時だ?
「…6時半…」
ちょっといつもよりは遅いな…。昨日はいつも通りの時間に寝たんだけどなぁ…。
「響谷、いい加減起きて朝飯を作ってくれ」
そんな葵の声と共に部屋の扉が開く。
「…って、結華ちゃん寝てんのか…」
「…わり、葵」
「あぁ、まあいいよ。朝飯は自分で作っから。響谷のは要るか?」
「いやいい、後で作る」
「わーった。そんじゃあ朝飯食って仕事行ってくるから」
「うい、気を付けてな」
「へいへい」
…さて、もう二度寝しか選択肢が無くなったわけだが…。…せめて抱き締める力だけでも弱まってくれたらな…。
「…ん………あれ…寝てた…?」
「…あ、おはよう結華」
「うん…おはよう、響谷くん」
■
「…んぇ、いま起きてきたの二人とも」
リビングに降りると、キッチンに立っていた葵が俺達に向かってそう言う。
「…マジかよ、もうちょっと待ってればよかったわ」
「ほんとすまん」
「いやまぁ、別に誰が悪いって訳でもないし良いけども。…ついでだし二人分の朝飯も作っておいてやるから」
「おぅ、サンキュ」
「ありがとう、葵」
葵が作った朝食を食べ終えて、葵が仕事に行くのを見送った後、俺は結華に膝枕されていた。
「…私、響谷くんが好きな理由…ちょっとだけ分かったかもしれない」
「そうなの?」
「うん」
「…聞いてもいい?」
「うん。私が…響谷くんを好きな理由は多分…。響谷くんだから」
「…それ、あんまり理由になってないんじゃない?」
「そうかな。私は…響谷くんの性格だから好き。響谷くんの優しさだから好きなんだと思う。…運命の相手…そんな言い方もできる…のかな」
…俺だから…運命の相手…。
「結華ってそんなロマンチックな事言うんだな」
「…むっ。それはどういう意味」
「いや、意外だなって思っただけだよ」
「…そう、かな」
「あぁ。でもまぁともかく。これからもよろしくな、結華」
「うん、末永く…ね」
「だな」
――――――――
作者's つぶやき:「おはよう」で始まり「おはよう」で終わる…。まあベタっていうかなんていうかですけど、姫ほほは終了となります。
まぁ、また何かしらの記念で書くことはありますけど、それ以外での更新はないですね。
GSMワールドも一先ずは終わらせようとしてるので…そうですね、また新しい小説を考えなければなりませんね。
まあ、とりあえずお楽しみにしておいてください。
それではまた、別の作品でお会いいたしましょう。
――――――――
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