Ep.x+2 -甘えてくるお姫様-

「………」

 …なんか、今日はいつにもまして結華との距離が近い気がする。

「…結華」

「ん?」

「なんかさ…近すぎない?」

「そんな事ない、適正距離」

 …そう…なのか…?

「…いや、近すぎない?やっぱり」

 結華の体が当たりそうなんだけど…。

「響谷くんが嫌なら、離れるけど…」

「…別に嫌じゃないけどさ」

「きゃっ…!」

「そこまで距離詰めるならいっそ抱き着いて来てくれて良いのに」

「…不意打ちはずるい」

「嫌?」

「そんな事ない。…ちょっと強引に抱き寄せられて…ふふっ…いいかも…」



 時には強引な響谷くんを見てみたい。

 そう思うのは、私が知らない響谷くんの一面を見たいからなのだと思う。優しくて、理性的。

 だから、かな。響谷くんの強引、積極的、そんな一面を見たい。

 …でも、どうすればいいんだろう。

 今日の朝は少し強引に抱き寄せられて…キュンとした。

 あんな不意打ちは、ずる過ぎると思う。

「…ねえ響谷くん」

「ん?」

「…今から、デート行かない?」

「良いよ。どこ行こっか」

「無計画に街を散歩するのも、いいと思う」

 本当のことを言えば…、私にはデートの場所がどこであれ、響谷くんとデートできればどこでも良いのだから。

 だからどこでもいい。響谷くんの行きたい所に行く。映画でも、水族館でも、動物園でも、公園や、温泉にだって。

「それじゃあ、準備しようか」

「うん、分かった」


 一旦響谷くんと分かれて、自宅に帰る。

 自分の部屋にあるクローゼットを開けて、服を見繕う。響谷くんとデートだから、お洒落な服が良い。

 無地の白いTシャツ、グレーのコートと…黒色のスカート。

 …うん、これで大丈夫…だよね。



 着替え終わってリビングで待っていると、インターホンが鳴る。モニターには結華の姿が映っていた。

 玄関で靴を履いて、家の外に出る。

「お待たせ、響谷くん」

「大丈夫、待ってないよ」

「そっか。…ねぇ、響谷くん。服装…変じゃない、かな?」

「うん、かわいいよ」

「ほんと?」

「こんな所で嘘言っても何にもならないでしょ?」

「…それは、確かにそうだね」

 それじゃあ、と差し出された結華の左手を握って、街の方に向かう。


 休みの日に学校周辺に来るのは、案外新鮮かもしれない。いつもは生徒が沢山通る道も、休みの日は人通りが少ない。

 門は…まあ、流石に閉まってるよな。

「…休みの日の学校、なんだか雰囲気が違うね」

「だな」

 まあ、俺たちが制服を着て来てないのもその原因の一つかもしれないけどな。

「…あ、折角だし記念撮影でもする?」

「うん、する。それじゃあ、私のスマホで撮るね」

 結華が鞄からスマホを取り出してカメラを起動して、インカメにして俺と結華と学校を映す。

「撮るよ」

「うん」

「はい、チーズ」

 パシャ、と言う音が鳴って、写真が保存される。

「帰ったら、撮った写真送るね」

「分かった、楽しみにしてる」


 それから学校から少し離れたショッピングモール、その中に置いてあるゲームセンターの中に来た。

「…ん~…」

 結華は唸りながらクレーンゲームと格闘している。なんだろ、すっげぇかわいい。

「えいっ…あ」

 アームが景品のサメのぬいぐるみを掴んだ…が、するっとアームを抜けて落ちてしまう。

「まぁまぁ、あと5回あるしさ」

 結華は500円で6回できる方を選んだから、今失敗してもまだリカバリーが効く…と思う。

「次こそ、絶対取る」


 そして、最終的な結果は、ラスト1回でサメのぬいぐるみは獲得することができた。

「…はい、あげる」

 そして、結華は取ったサメのぬいぐるみを俺に渡す。

「え、いいのか?」

「うん、だってそのために取ろうとしたんだし。響谷くん、サメが好きそうだから…迷惑、かな?」

「いいや、迷惑なんかじゃないよ、すごく嬉しい、ありがと結華」

「うん…よかった」

「それじゃあ、今度は俺の番だな、欲しい景品とかある?」

「…欲しい、景品…、あっ、それじゃああの猫のぬいぐるみ」

 結華はそう言いながら、猫のぬいぐるみが入った台を指差す。

「分かった、頑張って取ってみるよ」

「うん、頑張って」



 響谷くんが真剣な顔でクレーンゲームに挑んでる。いそいそと鞄からスマホを取り出して、パシャリ。響谷くんを撮る。

「…よっしゃ、取れた」

 響谷くんはたった1回だけで猫のぬいぐるみを取る事ができた。

「はい、結華」

 差し出されたぬいぐるみを受け取って、それで響谷くんに微笑んでお礼を言う。

「ありがとう、響谷くん」

 このぬいぐるみは家に帰ったら絶対に枕元に置いておこう…。えへへ…。

「クレーンゲーム、楽しかった?」

「うん」

「そっか、それは良かった」

 響谷くんの真剣な顔も見れたし、響谷くんからのプレゼントも貰った。もう既に最高のデートだ。

 私、こんなに幸せで良いのかな。

「結華、折角だし本屋行こうよ」

「うん、分かった。そうする」


 響谷くんに手を引かれながら、本屋へと向かう。

「すごく、広いね」

「だろ?」

 ここに本屋があるってそんなに知らなかったな。

「ここ、カフェが併設されてるし、お昼もここで食べる?」

「うん、そうしよ」


――――――――

作者's つぶやき:えーと、なんだか知りませんけどもう暫くこのSSが続きそうなので、番外編として作ります。

後日URLをここに貼りますので、良かったら是非飛んできてくださいね。

…して、結華さんも響谷くんも、相も変わらずイチャイチャしてますね、どこかから爆発しろなんて声が聞こえてきそうです。

結婚は何歳くらいになったらするんでしょうかね?


姫ほほ番外編はこちらです↓

https://kakuyomu.jp/works/16818093086374471739

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