Ep.11 -「なんか、響谷くんと葵さんの関係性…、良いなって」-

「…いや〜、本当にずりぃよマジで」

「そうか?」

「おう」

「なら良かった」

「どこがだ」

「森谷くんに塩対応なら…なんで付き合ったんだろう?」

「意外とツンデレとか?」

「だとしたらそのツンはノコギリと同義だろ」

 …まあ、告白受けた思考なんて本人にしかわからんか。

 考えるだけ無駄だな。


「ねえ、月守くん」

「どうしました白峰さん?」

「そろそろ、敬語を止めて欲しいのだけど…」

「え?…あぁ、うん。分かった」

「…そんなにすんなりと止められるものなんだ」

「少なくとも俺はね。っていうか、敬語は意識して喋らなきゃだから普通に疲れるし」

 俺としては敬語なしの方がありがたい。

「…じゃあ、名前呼びも」

「…それは…」

「だめ?」

 白峰さんがそう言いながら瞳を揺らしてこちらを見る。

 うっ…。そんな目で見ないでっ…。

「…ゆ、結華」

「うん。ありがとう、響谷くん」

 っ…。結華も俺の事名前呼びなのかよ…。

 嬉しいけど、嬉しいけども。




 放課後、結華と一緒に俺の家に向かう。

 ドアを解錠しようとすると、すでに解錠されていた。

 葵、帰ってきてたのか?

 そんな事を考えながら、そのままドアを開けて家に入る。

「ただいま~」

「お邪魔します」

「おぉ、おかえり二人とも」

 俺の予想は的中して、リビングからひょいっと出てきた葵が俺たちにそう言う。

「葵、帰ってたんだ」

「おう、連絡入れたけど見てないか?」

 葵にそう言われて、スマホを確認する。

 葵から『家帰ってるから』とメッセージが来ていた。

「悪い、確認してなかった」

「まあそうだろうよ。彼女と放課後一緒に帰ってんだから浮かれもするわな」

「…」

 実際浮かれてたから何とも言えねぇ…言えねえけど…葵に言われるとなんかムカつく…!

「おうおう、破壊衝動を人に向けるなよ?」

「わーってる」

 流石に法律違反するつもりはないからな。それはそうとしてムカついたが。


「うし、じゃあ今日の晩飯誰が作るかじゃんけんで決めるぞ~。勝った奴が作るで良いな?」

「分かった。結華もそれでいい?」

「うん。大丈夫」

「じゃあ行くぞ、最初はグー、―――」




 結局、俺が作ることになった。

「これじゃあいつもと変わらんな」

「おのれ確率め」

「なんというか、どんまい、響谷くん」

「あぁ、うん。ありがとう、結華」

「っつか今更だけど、名前呼びになったんだな。あと敬語も外れてるし」

「ん?あぁ、まあな」

「へえ…仲良いんじゃん?ま、一保護者としては仲いい方が安心安心だな」

 その分、母さんみたいになる可能性も無きにしもあらずって感じなんだよなぁ。

 そこら辺は遺伝と言うかなんと言うか…。

「ねえ響谷くん、何か手伝えること、ある?」

「ん?いや、もう出来るから良いよ、大丈夫。ありがと」


「…いやぁ、恋愛は良いなぁ」

「お前彼氏いない歴=年齢の癖に何言ってんだ」

「いやいや、私の場合恋愛は傍から見て楽しむものなんだよ」

「そうなんだ、そう言う楽しみ方も…ありなんだね」

「まあ、その辺は人によるか」

「そうだね」

 そんなこんな、葵や結華と話しながら料理を作り終える。

 皿に盛り付けてテーブルの上に置く。




「「「ごちそうさま」」」

「よし、じゃあ皿洗いもじゃんけんで―――」

「葵」

「ん?」

「皿洗いやっておいて」

何故なにゆえ

「俺はさっき晩飯作ったから」

「じゃあ響谷がやるべきだろ。自分で使ったものは自分で片づけろ」

「うへぇー」

「響谷くん、私も手伝うよ」

「いや―――…じゃあお願いしようかな」

 結華とキッチンに立って皿を洗い始める。

「いやー、良い眺めだ」

「どこがだ」

「そこがだ」

「どこがだよ」

「だからそこだっつってんだろ?」

「代名詞だけじゃなんにも分からないって話しようか?国語力ねえの葵?」

「んだとやるか響谷?」

「こっちには包丁も皿割った破片もあんだぞ」

「舐めた口きいてすみませんでした」

「分かればよろしい」

「本当、仲いいね」

「そりゃな。もう…16、7年近く一緒に住んでんだ。仲悪いとか地獄過ぎるだろ」

「それは…そっか」

 まあ、仲悪かったら俺の事を保護したりしないだろうしな。

 本当、葵には感謝しかない、頭は普通に上がるけど。




「響谷ー、風呂あがったぞー。喜べー、美女の残り湯だぞ」

「いっけね、お湯張り直してこよ」

「流石に傷つくぞ?良いのか?泣くよ?今この場でプライドとかかなぐり捨てて泣くよ?」

「かなぐり捨てるプライドなんざ持ち合わせてねえだろ」

「バレた?」

「元から知ってるっつーの」

「…良いなぁ」

「ん?何が?」

「なんか、響谷くんと葵さんの関係性…、良いなって」

アオ×響谷ヒビか?」

「変なカップリング作んじゃねえ。あと俺の彼女は結華だ」

 …ま、仲いいのはそうかもな。親代わりって関係でもないし、家族ってわけでもない…仲のいい同居人、なのか?

 分からんが、まあ、一緒に居てそれなりに楽しいって言うのは全会(俺と葵で)一致してるわけだしな。

「…母の日、父の日にならんで同居人の日とかないかな」

「当てはまる対象の層が狭すぎるだろ。あったとして何すんだよ」

「…カーネーション送るとか?」

「やってる事母の日と変わんねえな」

「…まあ、葵には親孝行…じゃないわ。なんだ?」

「…同居人、孝行?」

「語感悪くね?」

「まあ、結華のそれでいいや。同居人孝行するつもりだから。それなりに楽しみに待っとけよ」

「天に召すとかやめろよ?」

「…アリだな」

「ちょおい待てふざけんな」


――――――――

作者's つぶやき:いやー…響谷くんと葵さんの掛け合い好きです。分かる人いますかね?なんというか、ノリが良いって言うか、彼方くんと水香さんの掛け合いに通ずる何かを感じましたね。

同居人の日。葵さんにはたっぷり祝われてもらいましょう。

――――――――

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