第四十話 一緒に来るか?
邪竜を討伐し、俺の身に起きた超自然的な事象について説明し、俺が精神に異常をきたしてないことを証明し、レプリカを水に戻して、洞窟から抜け出すと、いつの間にか日は没し、夜闇が辺りをを完全に呑み込んでいた。
「まあ、いろいろあったけど……助かったわ……。ありがとね」
メアと肩を並べて歩みを進めるさなか、メアがしおらしく礼を口にした。
「ああ……これはご丁寧にどういたしまして」
メアの今までの態度からは想像できない素直な言葉に、若干戸惑いつつそう応える。
と、メアが急に早足になり俺の前に出ると、くるりと振り返り、俺の目を見つめて、その小さな桜色の唇から質問を投げかけた。
「それであなたは……夜雲はこれからどうするつもりなの?」
出し抜けにされた質問に、ピタリと足を止めて、顎を触りながら、うーんと唸って、瞑目し、暫し考え込む。
そうして、瞼をおもむろに持ちあげ答える。
「どうするも何も……。一応……魔王を討伐しようと思ってるんだけど……」
「魔王⁉︎ 本気で言ってるの⁉︎」
メアはそう言い募ると、すぐにぎこちない笑顔を作って、「魔王ね? 魔王かぁ〜? うーん。やめといたら?」と宥めすかすように言った。
「ほっとけよ! てか、お前こそどうすんのさこれから? 村に戻んの?」
「うーん。村には……もう戻りたくない……な」
メアは、俺の問いに、うつむきながら、そうポツリと溢した。
その光景を認めて、思わず息を呑む。
俺の心には、その光景を呼水に、憐憫の情というやつが兆していた。
そうして、ほとんど反射的に、言葉が口を衝いて飛び出した。
「一緒に来るか?」
すると、メア「え?」と言って、顔をあげた。
俺は、ふぅーと息をつくと、今度はゆっくりとメアにハッキリ聞こえるように「一緒に来るかって言ったんだ」と言って、「どうする? 来るか一緒に?」と訊ねた。
メアは、妖精のような耳をピクリと動かすと、かすかに微笑して、コクリとうなずいてみせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます