第二話 敗北を知らぬ獅子のように吠える
身体の芯を凍らせるくらい冷たい木枯らしが吹き荒む中、徒歩で学校からの家路を辿る。
徒歩で三十分くらいかかる距離を週五で往復する。
小中学校とは異なり、うちの高校では置き勉が可能なので、割と楽に登下校ができる。
てか、今更だが週五であんな重い荷物背負わされて、九年間も強制的に、移動しなきゃならんとか軽い拷問じゃね?
マジで納得いかねぇわ……。
そんな在りし日をしみじみ思い出し、脳中で苦言を呈しながら歩を進める。
すると、不意に一陣の凍てつく風が頬を撫でた。
カマイタチを彷彿とさせる鋭い冷たさを、肌で感じ、思わず独りごつ。
「さむぅ〜! もっと厚着してくるべきだった〜。さみぃよ〜」
もう冬だな〜、と思いながら、周囲を見渡すと、同じ高校の制服を着た蚊柱のように目障りな複数の小集団が、小蝿のように目に向こう見ずに飛び込んできた。
けたたましく笑う制服を着崩した腰パンのチャラい集団や、やかましい声で騒ぐギャル風の集団、そして、楽しげに会話する特段特徴のない凡庸な男女のペア……。
何の変哲もない俺の通う高校によくいるタイプの有象無象どもだ……。
最初はそう思っていた。だが、俺は見てしまった……。
その凡庸を絵に描いたようなペアの手と手が……触れ合っているのを……。
リア充……爆——。
まあいい……。
俺はそんなことで動じる器では断じてない‼︎
俺は強く胸中で敗北を知らぬ獅子のように吠えると、泰然自若の態度で、足早にその目障りで耳障りな烏合の衆を追い抜き、誰よりも早く家に着くことだけに全神経を集中させ、肩越しに振り返ることなどといった女々しいことなど一切せずに、背中でオトコを語りながら、ただひたすらに黙々と帰路をしっかりとした足取りで一歩一歩踏みしめ、怒涛の如く猛進してみせた。
その姿を……もし言葉で形容するならば、孤高(一匹狼)あるいは、オトコの中のオトコであろうか……?
そんな孤高なオトコの中のオトコは、背中から一抹の侘しさと、激しい雄々しさを滲ませ、周囲を圧倒するように爆進し、その有象無象どもをあとにする。
俺は断じて、断固として、不純異性交友には反対だ!
心の中でそんな呪詛を吐き、強く唇を、あたかも奥歯をギリギリ噛み潰すかのように噛み締める。
口の中に広がるこの鉄の味を、俺は決して、生涯ゆめゆめ忘れることはないだろう……。
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