名前のつけられていない部屋

　精神障害で悩む戸嶋は「コーポ・峰山」の二〇二号室に越してくる。初めての一人暮らしに不安はあったが、これまでの生活から抜け出すことができるという期待を胸に新しい生活が始まった。だが、部屋に越してきた初日から、奇妙な怪奇現象が戸嶋を襲う。深夜に壁を叩く音、廻る足音、覗き込んでくる影、到底現実とは思えない現象に戸嶋は困惑した。
　一方で、戸嶋は自身を襲った奇妙な現象が「本当に起きていることなのか」確信を抱くことができない。なぜなら、自分の精神障害は幻覚や幻聴などの症状も見られるため、病気である可能性が否定的ない日々が続く。そんな戸嶋に対して、隣人である二〇三号室の住人・ミズキは唯一人、戸嶋へ警告する。「早く部屋から出ていけ」と。