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 コーポ峰山・二〇二号室への転居手続きが行われている最中にて、白骨死体が出てきたという刑事事件性から、二〇二号室について警察主導で捜査されるに至る。


 運び出された白骨死体はわずかに残った遺伝子情報から、行方不明者として登録されていた橋場水樹であることが判明し、芋づる式に一緒に暮らしていた左官工の男・沢嶋登という男が、第一被疑者として捜査される運びとなった。

 警察及び鑑識は部屋中を隅々まで捜索し、橋場水樹殺害に関する手がかりを捜索した。

 すると、橋場水樹に関するものだけではなく、部屋にはあらゆる痕跡が確認されたという。特筆して多かったのはルミノール反応、つまり血液が付着した痕跡であり、到底日常生活で検出される量を逸脱したものだった。

 血液は一人分のものではなく、何人、下手をすれば何十人分の血液が検出されたようだ。


 これに警察は大いに頭を悩ませることになる。そればかりか、あの部屋に対して異常な執着をするものが多くおり、捜査に割かれる人員は一般的な捜査のそれを遥かに凌駕するものとなった。

 まるで取り憑かれたように部屋を捜索する警察官が現れ、中には非番の日に部屋へと駆け込み、クローゼットに隠れこむものまで現れたという。


 そんな事情から、警察は今後一切二〇二号室の立ち入りを禁じ、あくまでも「発見された橋場水樹の捜査」に尽力することとなった。

 結局、大量に残された血液反応や、被疑者と思われる左官工の存在は、暗がりに伏したまま、警察は二〇二号室から踵を返すことになる。


 当然、部屋について、一切の詳細を知るものは存在しない。


 ただ一つ、部屋に関わった人間に共通しているのは、「知れば知るほどに引きずり込まれる」ということのみであった。


 現在、あの部屋がどうなっているのか、知るものはいないだろう。

 知っている人間は、残すことなく部屋に引きずり込まれているのだから。

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