【異世界ガイドマップ】5.0★★★★★(57894件) を手に入れたので【クチコミ】を頼りに悠々自適な異世界旅行スローライフを満喫します

菊池 快晴@書籍化進行中

001 異世界ガイドマップと落とし穴は【すげえ】

「やっぱりここって異世界だよなあ……」


 生い茂った森の中、見たこともないカラフルなキノコを見つめていた。

 空腹とはいえ、どうみても食べられなさそうだ。


 俺の名前は八雲旅人やくもたびと生前・・はブラック企業で一生懸命に働いていた。

 上から責められ、下は可哀想で心が苦しくなる、いわゆる中間管理職。


 永遠に積み重なる書類、睡眠時間を削る日々。

 ある日の帰り道、突然、心臓が痛んだ。


 地面にうずくまり、意識が薄れていく。


 目を覚ましたら――今だ・・


 自然は好きだ。

 国内や海外旅行が趣味だった時に、世界遺産をよく見に行っていた。

 とはいっても、仕事を始めてからはさっぱり行けなくなったが。

 

 その時はよくマップや旅行本を片手に観光地を回っていた。


 それと関係あるのかはわからないが、俺の視界上には、ゲームでよく見かける地図が右上に表示されている。

 歩くとマップが詳細に広がっていくものだ。


 進めば進むほどマッピングされるので、つい歩いていた。

 今のところ生い茂った森しか表示はされていない。


 それと――。


「このチカチカしてるの、絶対あれ・・だよな」


 どこかで見たことのある文字が浮き出ている。

 声にするのは恥ずかしいが、言いたい気持ちがあるのも事実だ。


 どうせなら、と俺は元気よく「ステータスオープン!」と叫んだ。


 New名前:八雲旅人やくもたびと

 レベル:1

 歩行距離:245歩

 体力:E

 攻撃:E

 魔力:E

 ステータス:ややお疲れ気味(甘い物を食べたほうがいいかも)

 装備品:布シャツ、布ズボン

 固有能力:異世界ガイドマップ、超成熟、多言語理解、オートマッピング。

 称号:異世界旅行者


「……はっ、マジで出やがった」


 秒で理解できる文字の羅列。

 半透明化されたステータスが表示されている。


「けど軒並み低いな……」

 

 少し期待していたが、チートって感じではないらしい。異世界旅行者ってのは、生前の趣味と関係しているのだろう。


 地図には、俺が今立っているであろう場所が、赤い人型のピンで刺されていた。

 普通に考えると、現在位置ということで間違いない。


「これは……便利だな」


 つまり今自分がどこにいるのかが明確にわかる。

 方向感覚は大事だ。RPGで地図がなければクリアするのに相当苦労するだろう。

 その点、俺はとてつもないアドバンテージを初めから得ていることになる。


 そのとき、先ほど発見したキノコがデフォルメされたアイコンとなり、地図上に表示されていることに気づく。


 ふたたびキノコに視線を落とすと、これまたゲームのようなエフェクトと文字が浮かび上がる。



 【カラフルポイズンスマイルキノコ】

 見た目は綺麗だが、食べると笑いが止まらなくなり、呼吸困難で死に陥る。



 あ、あぶねえ……。

 秒で死ぬところだった。


 けど――おもしろい。


 地図を広げていくために少し歩いていると、青い絵と合わせて、小川という文字が表示された。

 喉はカラカラだ。地図通りに歩くと、ちゃんと水の音が聞こえてくる。


「おお、マジだ」


 実際に見ている視界よりも、地図のほうが視野としては広いらしい。


 グーグルマップ&ゲームのマップを合わせたようなものか。


 小川で少しだけ喉の渇きを潤した後、水に反射した自身の姿を見る。


 ……まるで外人だ。

 少年とまではいかないが、青年くらいだろう。


 茶髪で目鼻立ちがしっかりしていてカッコイイ。

 だがよく見ると、髪が少し赤い……?

 

 触ってみると、驚いたことにそれは血だった。

 慌てて傷を探してみたが、痛みも、傷もない。

 どうやら少し固まっているみたいだ。


「……返り血か?」


 そのとき、ピコンという音がどこからともなく聞こえ、ビクンと身体が震える。

 同時に地図上で【!】が表示された。

 指でクリックすると【落とし物】と書かれている。


 表示された場所に視線を向けると、地面が光っていた。

 歩いてしゃがみ込む、そこには――。


「短剣、か? なんだこのべったりついてる赤いのは――」


【血塗られた短剣】

 殺された冒険者の落とし物。

 売却価格:不明


 こ、こえええ。


 ……やっぱり死んだりするのか、この世界。


 気を引き締めよう。


 けどやっぱこのガイドマップは非常に優秀だ。

 普通の地図だけかと思ったが、解析もしてくれる。

 これならたとえ初見の場所だとしても困ることがないだろう。

 

 そもそも道端の落とし物を発見できるだけでも、とんでもなくチートじゃないか?


 他のスキルも試してみたいがよくわからない。

 多言語理解は直感でわかるとして、超成熟はなんだ? パンか? パンがすぐ焼けるのか?

 言葉にしてみたが、発動はしない。


 諦めて歩いていると――。


【パラッパッパー! 歩行距離が1000歩に到達。超成熟ボーナスにより、New【クチコミ】が追加されました】


 軽快なラッパ音と共に、地図に新しい項目が増える。

 それは、グーグルマップなどでよくみる、レストランや観光名所で書かれている見慣れたものだ。


「……もしかして」


 ドキドキしながら今いる場所をクリックする。


【王都付近、魔の森】

 2.9★★☆☆☆(14455)


 おお、すげえ。

 めちゃくちゃわかりやすい。

 ()の中は人の数だろう。

 評価が著しく低いのは気になるが、ひとまず見てみるとするか。


 E級冒険者。

 ★☆☆☆☆

 夜は気を付けろ。

 魔物が四方から襲ってくる。


 E級冒険者

 ★★☆☆☆

 昼はいいが、夜が危なすぎる


 C級冒険者

 ★★★☆☆

 昼は比較的平和、夜は魔物の数がとんでもないことになる


 F級冒険者

 ★☆☆☆☆

 足が、俺の足があああああああ


 B級冒険者

 ★★★★☆

 素材集めにもってこい。魔狼は仲間を呼ぶので注意必須


 C級冒険者

 ★★★☆☆

 手ごろな薬草が多くて重宝

 広すぎるのがちょっと面倒


 

 おお、すげぇ……。

 おそらくだが、この場所で思ったこと、見たこと、感じたことがズラリと書かれている。

 どうやって投稿したのかはわからないが、これが真実なら……夜は危険らしい。

 一つ怖いクチコミがあるが、今は考えないでおく。


 他にも見てみたが、大体同じようなことが書かれていた。


 慌てて空に目を向ける。

 まだ明るいが、いずれ夜になるだろう。


 暗くなる前にこの森を出たほうがいいらしい。

 普通なら当てもなく歩き続けるのは危険だが、この異世界ガイドマップがあれば、森を抜けるのはそこまで難しくないはず。


「っしゃ、行くか!」


 どんどん歩き出す。不安もあるが、地図が広がっていく何とも言えない楽しさもある。

 するとマップの先端に【国】と表示された後、【城】絵のアイコンが見え始めた。

 

 ――よし。

 

 きっと国の中でもこのガイドマップは使えるはず。

 一体何を見ることができるのか、楽しみで仕方がない。


 そのとき音が聞こえた。

 地図に【!】が表示される。


 落とし物だろうか。無視してもいいが、夜になるまでまだ時間はありそうだ。


 どうせなら拾ってからいこう。この世界に遺失物横領の法律はないはず。たぶん。


 だが近づくと、文字がまさかの【人】に変わった。


 ……なんだと。


 警戒を強め、ゆっくり近づいていく。


 やがて落とし穴のようなものを発見した。表示は変わらず【人】。

 おそるおそるのぞき込むと――。


「……すぅすぅ……お腹すいた……よぉ……」


 そこには、頬に泥がついている女の子が寝ていた。

 だが綺麗な金色の髪、横顔だけでも整った顔立ちだとわかる。


 驚いたのは、頭の上に猫耳がついていたことだ。

 ……地毛ならぬ、地耳?


 お尻には、もふもふそうで白く細長い尻尾。


 ぴょん、ぴょんと左右に動いている。


 俺は、慌てて声をかける。


「お、おい大丈夫か? 生きてるか!? ……ね、猫さん!?」

「……ふぇ? え、人、ひとだあああああああああああああ、ミルフィを助けてええええええええええくだちゃああああああいいいいいいいいい」


 すると、泣きじゃくりながら両手をバンザイ、ミルフィと名乗った女性が、俺に助けを求めてきた。

 そして――【すげえ】


「……。あ……ま、待ってろ! 今、助けだしてやるからな」

「ふぁああああ、よかったあああああああああ」


 俺は必死で手を伸ばした。ミルフィも手を伸ばした。

 そして、凄い揺れた。

 不謹慎だから何がとは言わないが、揺れに揺れた。


 異世界転生って、最高なのかもしれない。



 ミルフィ

 ★☆☆☆☆

 なんでこんなところに落とし穴があるのにゃあ!

 お腹すいたよぉ


 タビト

 ★★★★★

 夜がやべえらしい。急いで森を抜けよう。

 けどおっぱいってどんなときでも最高だな。


 ――――――――――――――――――――――

 【 強さをひた隠しにしていた雑務書記の俺、魔法本 (物理防御貫通 魔法防御貫通 攻撃力∞鈍器)で戦っているところを女帝にバレた結果、秘書兼護衛に栄達した】


 という新作を異世界ファンタジーで投稿しました!




https://kakuyomu.jp/works/16818093073327582157




 軍事書記の男性が、魔法本(∞鈍器)で無双しているところを女帝にバレてしまい、秘書に栄達しながら愉快な仲間たちと世界統一を目指すお話です。




 今までの面白さを詰め込んだ内容になっており、当分毎日更新する予定です。


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