021【異世界ガイドブック】を作ることに決めたぜ!

 オルトリア王都の街並みは綺麗だ。

 街の至る所には魔法でろ過された小川が流れており、小魚が元気に泳いでいる。


 特筆すべきは人口だろう。

 居住している王都民はもちろん、冒険者、商人、様々な理由で大勢が訪れる。


 となると、当然だが経済が潤う。


 観光地には人が訪れ、宿泊所、レストラン、屋台、毎日たくさんのお金が行きかう。


 そしてその中に、俺とミルフィも入っている。


【王都クレープリー】

 4.7★★★★☆(6478)


 甘党冒険者

 ★★★★★

 クレープとガレットが両方頂ける店は貴重

 店員さん丁寧な接客でお店の雰囲気も可愛らしく落ち着く。

 店内がおすすめ


 ランチ休憩の王国騎士

 ★★★★★

 忙しい日々の合間に立ち寄るのに最適な場所。

 軽食感覚で楽しめるクレープやガレットは最高である


 贅沢な冒険者

 ★★★★☆

 価格はやや高めだが、その分クオリティも高い。

 贅沢な材料や特別感あふれるメニューが好みの冒険者にはピッタリ。



「おいっしいいいいいいいい」


 ミルフィが、満面の笑みを浮かべていた。

 真っ白なお皿の上のクレープに舌鼓を打つ。

 生クリームがふわふわで、トッピングのチョコレートも凄く美味しい。


 苺がこれでもかというほど乗っていて、店内がお勧めだという理由も十分に頷ける。

 テイクアウトの場合、フルーツが乗りきらないからだろう。


「ふむふむ、なるほどなるほど。確かにこれは最高だな」

「んっ、タビトなに書いてるの?」

「ああ、これはガイドブックだ」

「ガイドブック?」


 俺は、店員に許可を取った上で(コンプライアンスは厳守するタイプ)メモを取っていた。


「今まで行ったことのある店、狩場、観光地があるだろ? 例えば、リルドのおっさんのところとか」

「うんうん、いい所ばかりだよねえ。ここのクレープも最高だにゃ」

「それをまとめて本にしようと思ってるんだ。できれば王都を出る前に完成させたい」

「日記みたいなもの?」


 ミルフィの問いかけに、ドヤ顔で人差しを立てて、チッチッチッ。


「俺たちの為だ」

「ふぇ? ガイドブックが私たちの為になるの?」

「ああ、例えば考えてみてくれ。このオルトリアに入る前、俺がまとめた良い狩場、美味しい店、観光地の本が売ってたらどうする? それも、安価な値段でだ」

「それは絶対買う! だってお得だもん!」

「だろ? でも問題もいくつかある。なんだと思う?」

「うーん……信用できないって思う人がいる、とか?」

「その通りだ。ミルフィは俺を知ってるから信頼してくれてるだろ? でも、知らない人が良い狩場だよって言って信じるか?」

「……信じない。その人のことがわからないし」

「だろ。本がどれだけ良くても人は信用できないと買わないし売れない」

「じゃあどうするの?」


 それを聞いて、ミルフィが頬に生クリームをつけながら首をかしげる。


「人が人を信頼するのはまず立場だ。D級がお勧めする狩場と、S級がお勧めする狩場、どっちを手に取るかなんて一目瞭然だろ」

「うん、間違いなく後者だね」

「俺は今C級だが、今後ランクを上げていくことにする。で、後は販売する場所と手段だな」

「ふむふむ」


 前世で俺はブラック企業で営業をしていた。

 それを、生かすのだ。


「最終目標は世界中の冒険者ギルドで置いてもらうことだ。多くの人に手に取ってもらいやすいし、何よりも俺たちの知名度が上がる。つまりどうなる?」

「……! タビトの本当の事を知る人が現れるかも」

「その通りだ。もちろん、ミルフィのことも書く。この能力を使って楽しく、それでいて一番効率が良いと思ってな」

 

 するとミルフィがふふふと笑っていた。


「やっぱりタビトは凄いねえ。私じゃそこまで考えられないよ」

「そんなことないよ。俺が1から考えたわけじゃない。元の世界ではありふれていたことだ」

「それでもやっぱり凄いよ。それを行動に移すのもね。応援してるよ!」

「何言ってるんだ?」

「え?」

「本は俺1人じゃない。ミルフィと作るんだ。狩場も、店も、当たり前だろ。俺たちは相棒なんだから」

「……えへへ。ありがとう! 私も頑張る!」

「よし、そうと決まれば今日は甘いものを食べまくることにしよう。お互いに意見を書きあって、最後にまとめようぜ」

「賛成! 最高のお仕事にゃあ!」


 それから俺たちは、とにかくクチコミの高いスイーツ店へ向かった。


 もちろんガイドブックに掲載していいのかも尋ねたが、快く了承してもらえた。



【王都本格チョコレートバー】

 4.8★★★★☆(4478)


 王都の甘党

 ★★★★☆

 生チョコがとにかく最高

 間違いなく王都一


 宮廷甘党使い

 ★★★★★

 カカオパウダーをふんだんに使ったケーキが美味しい

 毎週のご褒美に




 タビト筆者

 ★★★★★

 疲れた身体に染み渡るチョコが最高

 お持ち帰りもできるらしいぜ


 ミルフィ

 ★★★★★

 美味しい、美味しい美味しいにゃ

 んっ、これも美味しいにゃあ!



「ミルフィ、どうだ?」

「美味しいにゃあ!」


 ちなみにレポートを書いてもらったのだが、全部に美味しいと書かれていた。

 うんうん、はじめてにしては上出来だ。これから一緒に頑張ろう!



「ふにゃあ、お腹いっぱいにゃああ」

「確かに。でも、甘いものはこれでだいぶ網羅できたな」


 評価の高いクチコミを匿名で乗せれば面白みも増すだろう。

 それにこれは事実で嘘偽りなしだ。


 更に当人に取材料も必要がない。


 ふっふっふ。


「タビト、凄い悪い顔してるよ」

「バレたか。後はできれば写真も欲しいな。明日、その店・・・に行ってみるか」


 ミルフィ曰く、魔法写真という機械みたいなものがあらしい。

 できるだけ質のいいものを買う予定だ。


 流石に文字だけのガイドブックは売れないだろう。

 

 また、色々欲しいものも手に入れる予定だ。

 ダンジョンのおかげで懐も随分と潤っている。

 散財編、それもまたオモシロ! だ。


【パラッパパッー! レベルが上がりました】


 するとそのとき、歩数が一定数を達成したらしい。

 待望のものが増えていた。


 エリアピン1/2。


 ハッ、これで準備完了だ。

 ガイドブックが完成次第、次の国へ向かうとしよう。


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