005 もしかして俺の相棒って、強すぎ!?
「こちらの買い取り価格は、そうですね。4500ギールでいかがでしょうか?」
「もうちょっとだけ!」
「そうですねえ、でしたら4600では?」
「もう一声っ!」
「なるほど、では4700で」
「グッとにゃ!」
素材買取所。
中は血肉にまみれた匂いが漂っている。
地面は赤黒く滲んていて少し怖い。
大柄の男だらけだと思ったが、女の人もいるみたいだ。
後、ミルフィは思っていたよりも押しが強かった。
かなり慣れているらしく、俺に向かってガッツポーズしていた。
おっぱいがたゆんと揺れていたので、俺もガッツポーズを返した。
お金は少し複雑で、ギールがいわゆる円と同じだ。
ほかに流通しているのは、銅貨(1枚で100ギール相当)、銀貨(1枚で1000ギール相当)、金貨(1万ギール相当)
だが更に、上金貨(10万ギール相当)があるらしい。
国によって取り扱いも違うらしいが、どちらも基本的に使えるとのこと。
【冒険者ギルド素材買取】
3.5★★★☆☆(57989)
E級冒険者
★★★☆☆
王都価格って感じ、まあまあだな
C級冒険者
★★★☆☆
交渉次第で少し増える
D級冒険者
★★★☆☆
買取時間が短くて良いが、価格は普通
A級冒険者
★★★☆☆
可もなく不可もなく
クチコミは普通って感じだ。
悪いときもあれば、良いときもある。
素材は時価みたいな感じもあるらしいので、仕方ないだろう。
国に一つしかなかったので、ここだけで比較対象はできない。
少しだけ待って、お金に変えてもらい、すぐ外に出た。
「結構儲かったねえ!」
「結構レアだったんだな、あの魔物」
「同じ個体でも違いがあるからね。あ、これ、タビトの取り分、わけわけね」
「ん? いや半分もいらないぞ? だって、倒したのほとんどミルフィじゃないか」
「のんのんのん、私たちは仲間だよ。宿とかご飯を選んでくれている分、多くとってほしいくらいだよ。節約にもなってるし」
ミルフィはやっぱりいいやつだ。
可愛いし、【すげえ】し。
俺は、少しだけ考えて、ミルフィに提案する。
「だったら、お願いがあるんだが」
「なあに?」
「二人で共同貯金しておかないか?」
「共同貯金?」
「何かあった時の為に、少しずつ共有でためておくんだ。今回は初めだし、500ギールずつくらいでいいだろう。共通のものがあれば買えばいいし、どちらかが怪我をしたときも助かるだろう」
お金は大事だ。ブラック企業の時にそれはわかっている。
これから俺たちは旅を一緒にする仲間となる。
冒険者だと怪我もあるだろう。
お互いに動けなくなったとき、蓄えがあると楽になる。
こういった取り決めは初めにしたほうがいい。
「……すごい! そんなこと考えたこともなかった。私はタビトの考えに賛成!」
「ありがとな、ミルフィ」
そういって彼女は喜んで差し出してくれた。
俺の言葉を決して疑わず、何でも聞いてくれるいい子だ。
何で今まで1人だったんだろうかと不思議になるくらい。
猫人族のことももう少し聞いてみたいな。
「そういえばあの買取所は誰でもできるのか?」
「冒険者の登録証明が必要だよ。ええと、こういうの」
ミルフィはそういってドックタグのようなものを首から見せてくれた。
模様とかはよくわからないが、剣と盾のマークだ。
「へえ、かっこいいな。冒険者は誰でもなれるのか?」
「試験はあるけど、そこまで難しくはないよ。どこも人手不足だからね」
「人不足? 魔物が多いからってことか?」
「それもそうだし、すぐ死ぬから」
「……なるほど」
【死】はこの世界において常に身近な存在らしい。
改めて気を引き締めよう。
「とりあえずまた昨日の続きで観光しながら猫人族の手がかりも探すか。ミルフィは行きたいところあるか?」
「んー、武器の手入れかな? 血がついて切れ味が悪くて……。どこか武器防具店に行きたいかも」
「よし、じゃあ俺がいいところ探すよ。ついでに俺もなんかほしいな」
殺された冒険者の血塗られた短剣をずっと使うのもちょっとな……。
「そういえばタビト、いい動きしてたよね。前の世界でも、結構戦ったりしてたの?」
「いや、全然だ。そうだよな、なんで俺……強かったんだ?」
「ふふふ、変なの」
見たところ俺に戦闘系のスキルはない。
ガイドはできるが、明らかに身体が軽かった。
……なぜだ?
そのとき、いつのまにか裏道に入っていたことに気づく。
行き止まりだ。
ガイドマップがあるのにボーっとしすぎていた。
気を付けよう。
戻ろうとすると、屈強な男たちが、なぜか前に立っていた。
こいつら……買取所で俺たちを見ていたな。
……後をつけられてたのか。
ああそうか、クソ。
銀行でお金を降ろした後は気を付けろってことだな。
「よォ、仲のよろしいことで」
「とりあえず持ち物全部おいてってー?」
「ぎゃっははは、命まではとらねえよ」
男たちは小さなナイフを取り出すと嬉しそうに笑った。
左右の道はかなり狭い。
俺たちを殺す気なのかまではわからないが、かなり手馴れているとわかった。
選択肢は二つ、戦うか、差し出すか。
俺が大金を持っていれば間違いなく前者。
だがそこまでじゃない。
人数と地の利を考えると、穏便に済ませたほうがいいかもしれない。
と、思っていたが。
「――お小遣いゲットだにゃあ」
隣にいたミルフィが、いつもとは違う笑みを浮かべて、しゃがみ込んだ。
何をするんだと思った次の瞬間、足が膨れ上がり、背中を丸めた。
直後、とんでもない速度で――飛んだ。
人間ではありえない跳躍力。
根本的に違う種族だということをすっかり忘れていた。
身体の作りがそもそも違うのだろう。
元の世界で海外旅行で色んな国へいった。
俺だって色々見てきた。
ボクシングや、プロレス、格闘技、喧嘩。
けど、そんなのは比じゃない。
――これが、本当の戦い。
「ぐぁあっあああ」
「うぉぁあぁつあ」
「――がぁっああ……ひ、ひいい」
ミルフィは、相手の攻撃を軽々と避けていた。
しなるような動きで相手を瞬殺。
「命までは取らないよ。けど、全部、出すにゃ」
そういってシルフィは、1人の男の横顔を踏んづけた。
ちょっとだけなんか羨ましいが、今これを言うべきではないことはわかっている。
男は、気絶している仲間の懐から必死に金を取り出すと、むき出しのギールを手渡した。
そんなに多くないのが、少しだけ同情を誘う。
「まだ、あるでしょ?」
「ひ、ひいいす、すいません」
次に男は靴からもギールを取り出した。
よ、容赦ねえ……。
そのとき男が、ミルフィの胸のペンダントを見て、更に声を上げた。
「へ、へえ、あはあ、え、A級!?」
「――おやすみにゃ」
瞬間、男はふたたび蹴りつけられ――意識を失った。
ミルフィ、こ、こええええええええええええええええええ。
な、なに!? え、俺の相棒ってこんなつええの!?
つうか、容赦ねええええええ。
だ、大丈夫!? 何者!? いやミルフィだけど!?
「さて、いいご褒美タイムだったにゃ」
「正当防衛だからまあいいとして、それよりミルフィって……A級なのか?」
「ま、腕っぷしだけは自信があるよ。それだけだけど」
「……かっけえな」
「にゃ、にゃあ////」
俺は冒険者ランクのシステムは知らない。
けど、あの怯えた感じを見る限りでは、A級は相当ヤバイんだろう。
何で落とし穴なんかに落ちてたんだ……。
「はい、分け前の半分」
「……これもらっていいのか?」
「当たり前だよ。仲間だしね。こういうのは、この世界では
「そうか。ありがたく頂戴しておくか」
「それか共同貯金する?」
「ハハッ、賛成だ」
「さて、憲兵に伝えておこっか」
「事後でも信じてくれるのか?」
「A級は信用もあるからね」
「かっけえ……」
【大通りから外れた小道】
1.1★☆☆☆☆☆(47987)
E級冒険者
★☆☆☆☆
変な奴に絡まれた
最悪
D級冒険者
★☆☆☆☆
こんなとこはいらなきゃよかった。
New:捕縛された元B級冒険者
★☆☆☆☆
仕掛けた相手がまずかったぜ。
何だあの猫女。
クソ、終わった……
捕縛された元C級冒険者
★☆☆☆☆
A級冒険者とは思わなかった
強すぎんだろ
捕縛された元C級冒険者
★★☆☆☆
金、全部取られた。
でも、顔を踏まれるのって案外気持ちいいかも……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます