006【エリアピン】があればどこでも【行き放題】!
【!】【!】【!】【!】
「ユート、下ばかり向いて何してるの?」
「ああ、ちょっとな。一つ聞いておきたいんだが、落とし物を自分のものにした場合、法律とかはどうなってる?」
「ふえ? 落とした時点で拾った人のものじゃないの?」
「それは狩場でも、王都でもか?」
「そう思うよ。自己責任だしね」
やはりそうか。
この世界は弱肉強食。
落とし物=フリー=お前のものは=俺のもの。
俺は、街のいたるところで落ちているギールを拾い集めていた。
「これも、あれも、あこれもだ」
もちろん、普通の落とし物っぽいものは自分のものにはしないつもりだ。後でちゃんとよく知らないが憲兵所に持っていく。
だが誰が拾ってもわからないようなものはいいだろう。
これも、俺の能力の一つなのだから。
するとそのとき、ステータスに称号が増えた。
おお、新スキルか!?
New:称号【小銭拾いの
……………。
「あれタビトどうしたの? 顔、死んでるよ」
「何でもない」
俺は、物乞いをしている少年と少女の前に歩み寄る。
「お花を買ってもらえませんかー、銅貨一枚ですー」
「一輪くれないか。料金は、これ全部だ」
「え、こ、こんなに!?」
「ああ、この花にはそれだけの価値がある」
「あ、ありがとう! お兄ちゃん!」
俺は、ちらりとウィンドウに目を向ける。
【小銭拾いの達人】が、ガタガタと揺れている。だが、消えない。
クソ、足りないのか?
……ならば。
「こ、これもあげよう」
「え、これって……銀貨!?」
「ああ。お花、もっと売れるといいな」
「うん!」
――New:称号【ちょっとだけ優しい心を持つ男】
ふう……。
ステータスめ、まるで俺の心を見透かしてやがる。
誰に見られるわけでもないが、数値を見るたびに変なことが書いてあると俺のテンションに関わる。
気力は大事だ。旅は、それだけで楽しさが変わる。
しかし異世界ガイドマップ、予想をはるかに超える有能さだ。
そのとき、アナウンスが流れる。
【パラッパッパー! 歩行距離が50000歩に到達。超成熟ボーナスにより、New【エリアピン】が追加されました】
ミルフィに声をかけ、足を止める。
聞きなれない単語だ。
直感的にはわからない。
名前:タビト
レベル:2
歩行距離:50000歩
体力:E
魔力:E
気力:E
ステータス:超、超超、イイ感じ。
装備品:茶色の布シャツ、右丈の短い茶色ズボン、丈夫な靴ブーツ
New:エリアピン:1/1
固有能力:異世界ガイドマップ、超成熟、多言語理解、オートマッピング、旅行鞄。
称号:異世界旅行者
ステータスを見てみると、確かに追加されている。
数値が1/1ということは、これから増えていく、ということか?
ピン、ピンか……。
俺は地図を開く。
予想通り、右下に一本のピン、というか、【小さな俺】が増えていた。
それを指で動かすと、王都の入口でピタっと止まる。
いやむしろ、ここ以外では止まらない。
国にしか無理ってことか?
「……ふむ?」
そのまま手を放す。すると【オルトリア王都にエリアピンを差しますか?】が出現した。
いいえ、にしてみると元に戻ったので、選択肢は、はいしかありえない。
はい、を選択。
すると、入口に小さな俺が刺さった。
現在位置のマークとはちょっと違う。
俺は、ピンを押す。
すると――カウントダウンが目の前に現れた。
【10秒後に移動します。戦闘状態になった場合は、強制的に解除されます】
移動? 何が起こる――!?
3ー2-1-0。
視界――切り替わった。
「ふぇ、タビト!? あれ、タビト!?」
ミルフィの声が途中で途切れたかと思えば、俺は――オルトリアの入口に立っていた。
門兵が、不思議な顔で俺を見ている。
「……ん? お前、今どこからきた?」
「え、いや――」
「高速移動魔法か、透明化か? 若いのに凄いんだな」
「はは、ははは」
魔法?
もしかして……。
急いで地図を開く。
そこには【オルトリア王都】のピン。ふたたびクリック。
だが何も起こらなかった。
代わりに【再度移動可能開始まで、残り23時間58分34秒】と表示された。
……そいうことか。
俺は急いで中に入り、ミルフィを見つけた。
「どこいってたのにゃあ!?」
「悪い悪い。なあミルフィ、この世界に魔法で瞬間移動ってあるのか?」
「瞬間移動?」
「たとえば今俺たちがいる場所から、宿屋や狩場、国に瞬時に移動するようなものだ」
「聞いた事はあるけど……見たことはないかな。それこそ、大賢者とかならありえるかも」
「大賢者?」
「偉大な人物に付く称号だよ。世界で一人か二人しかいないんじゃないかな? え、タビト、今移動魔法使ったの!?」
「ああ、
「ふえええ!? すごすぎにゃああ!?」
エリアピンという名前、王都で使えたということは、村や町でも使えるかもしれない。
数があるということは、増える。
多く刺せば、俺はいろなところに移動できるということになる。
――凄すぎる。
旅は楽しいが、移動がデメリットだ。
戻りたいと思ってもなかなか戻れないし、会いたい人にも会えない。
だがこれがあれば違う。
俺はいつでも、戻りたいときに戻ることができる。
……すげえな。
俺が頑張れば、この世界のどこの国でも移動できるようになるってことか?
ははっ、おもしれえ。
いま俺は1人で瞬間移動した。
もし例えば、誰かと手を繋いでいたりしたらどうなるんだろうか。
試したい、試したいが、一日待たなきゃいけない。
ああくそ。まあでも、こういう歯がゆいのも楽しいな。
すると、ミルフィがなんだか申し訳なさそうにしていた。
「どうしたんだ?」
「え、いや……正直、移動魔法も使えるとなるとパーティーからのお誘いを受けると思うよ。私なんかと一緒にいていいのかなって」
なるほど、そんな心配だったのか。
まったく、まだわかってないんだな。
「……俺はミルフィと一緒に旅がしたいんだ。そうはならないよ」
「ほんと?」
「ああ、もし仮に誘われることがあったとしてもミルフィと一緒だよ。俺たちはもう仲間だろ」
「えへへ、嬉しいにゃ!」
A級の彼女がこれほど言ってくれるのなら凄いんだろう。
まだまだこのスキルは発展途上なはず。
さて、楽しみだぜ。
「よしミルフィいこうぜ!」
「にゃにゃ!」
ミルフィ
★★★★★
タビトが移動魔法を使ったらしいけど凄すぎ
私なんかと一緒にいていいのかな
かっこいいし。。。
タビト
★★★★★
想像してたよりガイドマップが優秀すぎる
あれ、これってもしかして移動しながら商人とかもできるんじゃね?
これからが楽しみだぜ!
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