007【クチコミ】があれば【装備選び】もハズレなし! だが、俺は一体誰なんだ?

「タビト、あそこはどうかな? 人も多いみたい」

「おお、めちゃくちゃデカいな」


 元の世界と違って異世界にはチェーン店が存在しない(ミルフィ曰く)。


 なので、色んな国へ行ったとしても、安心できる店がないのだ。

 普通なら運に頼るしかない。だが、俺は違う。


 ミルフィが指を差した装備屋は、とても大きな外観だった。

 デカい看板にデカい入口、人がひっきりなしに訪れている。


 いつもなら先にクチコミをするが、興味があったのでとりあえず中へ入ることにした。


「すげえ、これが武器防具か。いかついな」


 店内は広く、様々な武器や防具が壁に飾られていた。

 明らかにデカくて重い斧、大剣、使いやすそうなソード、ロングソード。


 弓、短剣、盾、魔法使いの杖もある。


 こんなの心躍らないというほうがおかしい。


「何かお探しですか?」

 

 店員さんも粗暴な感じではなく、とても清潔感のある女性だ。

 それだけで★★★★はある――。


【オルトリア武器防具店】

 1.4★☆☆☆☆(14566)


 C級冒険者

 ★☆☆☆☆

 ここで買った武器が一日で折れた

 アフターサービスもない


 D級冒険者

 ★☆☆☆☆

 武器の手入れが全然されてない

 新品だと思ったら中古だった


 C級冒険者

 ★☆☆☆☆

 相場よりかなり高い

 絶対に行かない方がいい

 手入れも全然ダメ


 ……出るか。


「こちらのバトルアックスは、先週新しく――」

「ほうほうにゃあ――ふぇ!? どうしたのタビトおおおおお」

「すみません、予定ができました。行くぞミルフィ」


 急いで外に出たあと、彼女に説明する。


「なるほど。やっぱり見た目じゃわからないねえ」

「よくあることだな。次探そうか」

「武器を整えるだけだから別にどこでも良かったよ?」

「ちゃんとしたところで見てもらったほうがいい。武器っていっても、思い入れあるだろ」

「……なんで知ってるの?」


 昨日、敵を倒したあと、丁寧に血を拭いてるのを見ていた。

 それだけじゃなく、刃こぼれを気にしていたり、所作が丁寧だったのだ。


「気づいただけだ。ほら、行こうぜ」

「……ふふふ、タビトは優しいにゃ」


 マップは個別で検索もできるらしいので、装備屋を検索。


 いくつも色がついて表示される。


「よし、次は東の店へ行こう。足は大丈夫か?」

「問題ないないい。一日中歩いても平気にゃ!」


 確かにミルフィのふとももは柔軟性がありそうだ。むちむち!


 それから俺たちは、色んな装備屋を回った。


【エリアの武器屋】

 2.4★★☆☆(7894)


 E級冒険者

 ★★☆☆☆

 そこそこ安いが、防具がない


 C級冒険者

 ★☆☆☆☆

 買った剣がすぐ折れた


【ドルストリの防具屋】

 2.7★★★☆☆(4788)


 E級冒険者

 ★★☆☆☆

 防具専門、値段は少し高い


 D級冒険者

 ★★★☆☆

 買取はいいが、販売品は手を抜いてる印象



 だが納得いくところがなかった。

 いやむしろ、今まで当たりを見つけすぎていた。


 元の世界でも良い店はそうそう見つかるものじゃない。

 たとえ、ップがあったとしても。


 だがそのときー――。


【ミリの秘密商店】

 4.9★★★★★(476)


 B級冒険者

 ★★★★★

 値段も安いし、質がいい


 S級冒険者

 ★★★★★

 魔石を組み込んでくれたり、レア武器や防具が置いている

 数こそ少ないものの、質がかなり良い


 A級冒険者

 ★★★★★

 王都で装備を買うならここしかない

 他は行く意味がない


 リルド

 ★★★★★

 昔馴染がいる武器防具店

 店主は少しおっかねえが、意外に優しいとこもある


「リルドって……宿屋のオッサンか! それにSとA級!? すげえな。えーと場所は……あれか?」


 オッサンの名前があるのには驚いた。

 マップ上、小道に視線を向ける。

 絡まれた思い出もよみがえるが、ミルフィがいれば怖いもんなしだ。


 そういえば、魔の森のクチコミにもミルフィの名前が書かれていた。

 もしかして知り合うことで名前が表記されるのだろうか。


「失礼しまーす」


 重厚な木扉を開く。

 中は何というか、狭かった。良い店の共通点かもしれない。パン屋も小さいほうが美味いしな。

 デカい武器や防具はなく、ガラス張りの棚に少し置いてあるくらいだ。


 店員はいない。

 だがミルフィは、それをみて飛びついた。


「す、すごいにゃあ!?」

「どうした、どれが凄いんだ?」

「この辺、S級武器とS級防具ばかりだよ」

「Sか。って――S!?」


 同じようにガラスにへばりつく。

 ミルフィが指差しているのは、小さな短刀だ。


 何の変哲もない黒い小さな剣。


 ……これが?


「あらあら、お客さんは久しぶりだねえ。――誰の紹介だい?」


 突然声が聞こえる。

 慌てて身体を起こすと、なんというか、おっぱいが立っていた。


 いやそれは嘘だ。

 谷間がぱっくり空いた服、セクシーすぎる黒髪のお姉さん、魔法使いのローブみたいなものを身にまとっている。


 武器防具屋の店主というより、魔女みたいな感じだ。


「え、ええと――り、リルドのおっさん知ってますか?」


 俺は、咄嗟に名前を出す。

 紹介ではないが、まあそんな感じだ。


「ふうん、リルドの知り合いねえ。元気してるの?」

「はい、元気にがははって叫んでます」

「ふふふ、相変わらずね。――ん? あなた、前にお店来てなかった?」

「え? 俺ですか?」

「いつだったかしら……忘れたわ。年を取ると記憶がねえ」


 誰かと間違えているのだろう。

 話しの本題に入る前に、ミルフィに断りを入れ、試してみたいことを尋ねた。


「この武器って……近くで見ることできます?」


 S級武器の短剣。

 魔女は少し微笑んだ後、ガラス張りの棚から取り出し、ゆっくりと手渡してくれた。


 ――俺は、ポイズンスマイルキノコの出来事を思い出す。


 ……さて、どうなる。


 アイテム名:漆黒の短刀

 S級武器:★★★★★

 効果:従者の魔力を吸い取ることで形を変化させる。


 ――出た。


「――漆黒の短刀、ですか?」

「凄い……どうして名前、わかったの?」

「えええと、その、魔法みたいな?」


 この世界で魔法は当たり前だ。

 とはいえガイドブックは稀有らしい。

 詳しく話さなくていいだろう。


 しかし魔女は、思いのほか嬉しかったらしく、目を輝かせていた。


「名前まで知ってる人は少ないのよね。ふふふ、あなたのこと気に入っちゃった。二人とも、名前は?」

「タビトです」

「私はミルフィっていいます」

「タビトとミルフィね、私は魔女ミリよ。よろしく」


 やっぱり魔女なんかいっ!


 だがリルドのクチコミの恐ろしいって感じはない。

 まあ、雰囲気は凄いが。


「プレゼントしたいところだけど、流石にこれはねえ。もし買うなら安くしてあげようか?」

「……いくらですか?」

「金貨100枚でいいわよ」


 安いのか高いのかわからないが、ミルフィ曰くとんでもなく破格らしい。

 だが買えないので残念ながら丁寧に断った。


 一応、うるうるした目で見つめてみたがタダではもらえなかった。


 そう都合は良くない。


 武器の手入れをお願いする前に、俺は、もう一つお願いすることがあった。


「買取もしてますか?」

「もちろんよ」


 旅行鞄から既に取り出していた血塗られた短剣を取り出す。

 もう少し綺麗にしておくべきだったな。


「あ、すいま――」

「よくあることよ。あら残念、魔法の刻印がされているのね」

「……刻印?」

「自分専用のものにすることで、魔力を上乗せする契約よ。結構な値段とできるところも少ないから、あまりしないんだけどねえ」

 

 ミルフィに視線を向けてみたが、首を横にぶんぶん、知らないという。

 そして驚いたのは、この持ち主はだという。


 というか、刻印したあとは、本人しか扱えないとのことだ。


「……どういうことですか?」

「? 自分でしたんじゃないの?」

「……? いや、これ拾ったんですよ」

「拾った? よくわからないけれど、刻印したのはあなたで間違いないわ。そんなこと、私が間違えるわけないから。――見てて」


 次の瞬間、ミリが短剣を手に振りかぶる。

 驚いてミルフィが前に出ようとするが、ガラスが割れたかのような音が響いた。


 まるで、セーフティーがかかっているみたいに動かなくなったのだ。

 やがてそれは治まるが、つまり、専用ってことか。


「ほらね」


 念のためミルフィにもお願いしたが、結果は同じ。


 ……ありえない。


 拾ったのは俺だが、これは落ちていたものだ。

 それから刻印なんてしていない。


 そのとき、ミリが思い出したわと言った。


「……あなた、半年前ぐらい来たじゃない。あの時は何も買わなかったけど覚えてるわ」

「半年前? それ、詳しく教えてもらえますか?」


 それは、驚くべき話だった。


 ミリ曰く、半年前、俺はこの店に訪れた。

 その時の話では、人を探しているとかですぐに去ったという。


 つまり……異世界転生ではなく、俺は誰かに乗り移ったってことか?

 それなら辻褄が合う。


 ……なら、俺は誰なんだ?


「それにこの武器、結構いいものよ。見たことないけれど、おそらくS級相当じゃないかしら」

「マジっすか……」


 確かに切れ味が良すぎるとは思っていた。

 ああもう、謎が多すぎる。


 考えれば考えるほどおかしい点が浮かび上がる。


 俺は初めての戦闘にもかかわらず魔物の動きが見えていた。

 身体も動いた。


 まるで、戦うことが日常だったみたな。


「とりあえず綺麗にしておくわね」


 するとミリさんは、短剣に手を当てた。光が広がっていくと共に、血が消えて綺麗になっていく。


「わあ、ミリさんすごいにゃあ! 浄化魔法を使えるんですね」

「ふふふ、そうね」


 綺麗になった手渡したくれた短剣はとても輝いていた。


「ええと、お金は――」

「いらないわ。他にも色々見ていいわよ。まあどれも高いけどね。ほら、彼女のもあるんでしょ?」

「ありがとにゃあ!」


 結局俺たちはタダで武器を綺麗にしてもらった。

 それから色々と装備も見せてくれた。

 目利きの方法も教えてもらったが、俺の能力ならそもそも間違った物を買うこともあまりなさそうだ。


 だが俺も全部の武器が分かるわけじゃなかった。

 もしかしたら、これもレベルが必要なのかもしれない。



「またおいで。武器の手入れならいつでもしてあげるわよ。猫人族のこともわかったら教えてあげるね」

「ありがとうございます」


 初めての武器防具屋、でも本当にいい人に巡り合えた。

 猫人族のことも調べてくれるらしい。


 外に出たあと、ミルフィが満足げに武器を眺める。


 だが、それよりも――。


「ミルフィ、わかったことがある」

「ふえ? どうしたの?」

「多分だが本当の俺は死んだ、いや殺されたんだと思う」

「ど、どういうことにゃ!?」


 俺は思い出す、初めてこの武器を拾った時のことを。



 ――【血塗られた短剣】

 ――殺された冒険者の落とし物。

 ――売却価格不明。



 頭に血がついていたのは、殺された時の怪我だったのだろう。


 失血死かどうかはわからない。

 で、俺の魂がこの肉体に乗り移った。

 傷が塞がっていた理由はわからないが。


 半年前、ミリさんの店に訪れていたこと。

 武器の刻印、やけに身体が軽かったこと。


 疑問なのは、人を探していたってことだ。

 半年前からこの王都に滞在していたのだろうか。


 けど誰からも声をかけられることなんてなかった。


 そもそもなんであの森に?


 ……わからないことだらけだ。


 ひとまず本当の俺を知る人を探してみたい。

 それを、全部ミルフィに伝えた。


「だったら冒険者ギルド行ってみる? もし登録してたら、タビトの本当の名前がわかるかも。まだ、あまり信じられないけど……ごめんね」

「気にしないでくれ。けど、ミルフィの言う通りだな。人を探してたってことは、旅をしてたってことだ。その場合、旅の資金とかも考えると、冒険者になってる可能性は高い」


 思いのほか早く自分のことかわかるかもしれない。

 冒険者ギルドか、こんな時でなんだが、初めてでわくわくするな。


 とはいえ俺は、、一体何者なんだろうか。




 ミルフィ

 ★★★★★

 ミリ姉さん優しかった。

 見たところ、めちゃくちゃ強そうだったから手合わせしてみたいにゃ


 タビト

 ★★★★★

 無料サービスをしてくれる魔女ミリ

 おっぱいが大きくて、エロかった

 身体(自分)のことも教えてくれて、最高だぜ!


 ミリ

 ★★★★★

 久しぶりにいい子たちと話せて楽しかったわあ

 女の子も強そうだけど、男の子のほうはもっと強そうねえ

 虐めてみたいわあ


 ――――――――――――――――――――――

 あとがき。

 七話目です。

 少し大きな転機です。


 次回【冒険者ギルド】で【とんでもない真実】が明かされます。


 ランキング、ぐんぐん伸びています!

 カクヨムコン9、異世界16位です! 凄すぎません!?

 

 良ければ【おすすめクチコミ(レビュー)】投稿してもらっていいんですよ!? 待ってますよ!? ほしいですよ!?


 今作品でギフトを頂きましたので、サポート限定を一つ投稿しました。

 異世界ガイドマップ――【シャドウナイト酒場】SS【2668文字】

 本当のタビトについて本編には関係ない程度に触れています。

 良ければ、お楽しみください。


【読者の皆様へお願いでございます】


カクヨムコン9に参加しています。

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