032 ガイドマップのおかげで【爆釣】しちゃったぜ!

「はいよー。夜までには返してね」


「了解っす! ありがとっす!」

「タビト、ここ最近で一番笑顔だね」

「まるで子供みたいです」


 レンタル釣り具で、頭にタオルを巻いたおやっさんから三本の竿を借りる。

 正直買っても良かったが、そう簡単に生涯の友を決められない(言い過ぎかも)。


 ひとまず今日はこれで楽しんで、出発までに新しく揃えよう。

 

 ぐふふ、ぐふふ、楽しい、楽しみだあ。

 お主も楽しみよのぅ。


「笑顔は笑顔でも、なんかあくどい笑い方だね」

「ぐふふって聞こえてきそうです」


 俺と同じくボケ担当だったはずのミルフィが、段々とアクアのツッコミに感化されている気がする。

 このまま行くと俺だけピエロになりそうだ。


 よくわからないが、地位を守る為にもここでかっこいい所を見せたい。


 となると――。


「よし、勝負だ! 一番大きな魚を釣った人が勝利! 時間は一時間、当然だが、大きさで決めるぜ!」


 ちょっと大人げないが、こういった催しもたまにはいいだろう。

 釣りキチ王に! 俺は、なる!


「はーい。ええと、この棒でつついて倒すってことかにゃ?」

「かき混ぜるんじゃないんでしょうか? ぐるぐるとすれば目が回るような気がします」

「はい。お嬢さんたちみんなで釣り仲良くやりましょうね」


 手取り足取り教える、これもまたヨシ! だ。


   ◇


「凄い、いっぱい釣れるにゃ! た、楽しいー!」

「ミルフィさん凄いです。あ、私もかかりました・・・・・・

「おお、いいぞ! よし、そうそう、網でこうやってな捕るんだ――うんうん!」


 釣り場に移動、ミルフィとアクアは初めこそ初心者丸出しだったが、二振り、三振りと重ねるごとに、凄い奥まで飛ばせるようになっていった。

 フォームも凄く綺麗。

 もはや美しすらある。


 ――ヒュン。


「あ、またかかったー!」

「…………」

「こっちもです! あれ、タビトさんどうしました? 休憩ですか? 座ってしまってますけど」


 投げたら魚が食いつくと思っているアクアのあまりにも無情な一言。

 

 この世界の住人は魚に好かれるのだろうか。

 そんなセンチメンタルな事を考えていると、俺のマップが、ついにピコンを音を立てた。

 

 立ち上がり慌てて確認する。

 【!】の文字が、【衣類】に変わる。


 試しに投げてみると、ククッと引っかかった。

 釣りあげたところ、完全に衣類、女子もののスカートだった。


「お魚じゃないのも釣れるにゃーねー」

「面白いですね。お宝もあるかもしれません」

「だ、だろ?」


 俺のだろ? が震えてる事には気づいてないらしい。

 だがもちろんわかっていたことだ。

 流石にこんな綺麗な海を汚したまま放置するなんて、釣りキチ三吉三太郎タビトの名が廃るぜ。

 まあ、まだ一匹も連れてないけどな。


 そんな感じで釣り掃除を繰り返していたら、段々と日が落ちていく。

 左右にはバケツいっぱいのお魚(ミルフィとアクア)。

 併設している施設に持っていくと、調理してくれるらしい。


 今日は最高のご馳走だにゃあと、ミルフィが喜んでいる。

 アクアも、そうですねとほのかに頬を緩めていた。


「さて、帰るか」

「え、で、でもタビトがまだ!?」

「大丈夫だよミルフィ、釣りはこういうときもある。それより、二人に楽しさが伝わってよかった」

「……タビトさんは本当に優しいです。自分そっちのけで何度もお手伝いしてくださって、ありがとうございます」


 これは本音だ。

 確かに悔しいし悲しい。悲しいし、悔しいし、正直ぶーぶー駄々をこねたい。

 だが釣りは今日だけじゃない。またいつでもできる。


 お腹が空いたと胃袋が暴れ出しあとき、ふたたび【!】が出現した。

 慌てて竿を構えようとするも、帰ろうとしていたことを思い出す。


 だが、ミルフィや、アクアが。


「見つけたの? タビト、がんばにゃ!」

「頑張ってください。大きいの見たいです」

「……ああ!」


 詳しく確認する必要はない。ここまで来たら運にかけよう。

 そして俺は力いっぱい振りかぶって遠投。

 

 猫とぴょこ耳が見守る中、ついに――手ごたえを感じる。


「おおっ!?」

「頑張れにゃああ!」

「タビトさん、あんよが上手!」

「何の話!?」


 アクアの言葉に心を揺さぶられつつも、俺と魚の戦いが始まった。

 凄まじい引きだった。腕が折れそうなほどの力強さ。


 だが俺の身体は魔力で漲っている。


「――うおおおおおおおお」


 女子の黄色い声援を力に、思い切り竿を引っ張り上げると――マジで本マグロみたいな魚が飛んできた。


「え?」


 頭上から攻めりくる本マグロ。

 おそらく200キロはあるだろう。


 このままいけば俺の首の骨が折れそうなほど。。

 ありがとうみんな。


 どうせなら思い出してくれ! ハーレム走馬灯!


 ……ダメだ。


「わりぃ、俺死んだ」


 笑顔のまま竿を構えて叫んだが――、ミルフィだった。

 本マグロを蹴り上げ、そのまま両手でつかむ。


 少し重かったらしいが、アクアが魔法で軽くした。


「すごい!!! 流石釣りキチタビト!」

「なんでその言葉知ってるの!?」

「本マグロ美味しそうです」

「俺の心読んでる!?」


 俺のツッコミが限界突破しそうだ。

 だが――。


「ありがとな……助かったぜ。よし、行こうぜ! 今日はお魚パーティーだ!」

「にゃー!」

「楽しみです」


 そのままウキウキで移動する。

 ちなみにミルフィが本マグロを担いでいた。

 ちなみにこれが何かはわからない。

 ちなみに俺は釣りの途中で心の声を呟いていたらしい。


 そして――。


「え、もう終わったんですか!?」

「ああ、明日なら大丈夫だよ。時間伝えてたはずなんだけど、ごめんね」


 そう、終わってしまっていたのだ。

 確かに時間が過ぎていた。


 旅行鞄に魚を収納することはできるが、今日はお預けだ。

 悲しい、胃袋ごめん。


「悲しいけど仕方ないねえ」

「こういう時もありますよね」


 釣りは楽しい。だが最後に食べるのが一番楽しいのだ。

 二人にもそれをわかってほしかった。


 しかしその時、はっと思いつく。


「なあ、ミルフィ、アクア――」


   ◇


「美味しいにゃあああ、塩だけでもこんなに味を感じられるんだね」

「はい、とても美味しいです。皮も香ばしくてパリパリで、ハマりそうです」


 街の外まであえて移動し、ミルフィとアクアが釣った魚を丁寧に解体した。

 さすが港町だ。塩や調味料を購入し、焚火にかけて火にあぶる。

 驚いた事に、ここの魚は骨まで柔らかく、味も淡泊ではなく、美味しい。


 もちろんちゃんと食べられるかどうかは事前に調べたが。


 本マグロは明日だ。

 だが、本当に美味しい。


 かぶりつくだけでホロホロと崩れていく。

 同時に、懐かしい日本の味がした。


「マジでうま――」


 その時、記憶がフラッシュバックする。


『な、美味いだろ? 今度はもっとデカい魚釣ってやるからな』


 俺が、嬉しそうに笑いながら、みんなに魚を振舞っている姿だ。


 ハッ、昔の俺も同じことしてたのかよ。


 ――最高だな。


「さて、明日は船の予約と観光するか」

「にゃ! んーっ、ねえタビトもう一匹食べたい! いや、もう二匹!」

「もぐもぐ、私も、もぐもぐ、もう二匹、もぐもぐ」

「アクアは食べ終わってからにしなさい」


 ミルフィ

 ★★★★★

 初めての釣り楽しかったー

 もっと食べたいにゃあ!


 アクア

 ★★★★★

 初めての事だったけど、凄く楽しかった。

 もっとみんなで思い出を作ってみたい

 四匹目食べようかな


 タビト

 ★★★★★

 二人に釣りが楽しいと思ってもらって良かった

 この本マグロ、どんな味するんだろう

 明日が楽しみだな


 ああ、マジで最高の毎日



 

 解体釣り名人

 ★★★★☆

 どうしよう

 あんなデカいの捌けるのか?

 何で断らなかったんだオレ

 明日になってあいつらを悲しませたくない

 徹夜で練習だ

 行くぜ、解体んちゅの誇りを見せてやる


 ―――――――――――――――――――――

 あとがき。

 お久しぶりでございます。

 本マグロの解体、大丈夫かなあ。

 てか、本マグロなのかなあ?


【読者の皆様へお願いでございます】


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