012 レベルアップと護衛依頼

 名前:タビト

 レベル:Lv 15

 歩行距離:365428歩

 体力:C

 魔力:D

 気力:B

 ステータス:気分は駆けだし冒険者(煩悩を消す最中)

 装備品:布シャツ、布ズボン

 固有能力:異世界ガイドマップ、超成熟、多言語理解、オートマッピング、

 エリアピン:0/1 (オルトリア王都)

 フリーピン:0/2 (魔の崖/魔の森)

 旅行鞄:300/2000

 称号:異世界旅行者 そこそこ優しい心を持つ男。


 ステータスを確認。レベルが順調に上がっていた。

 身体が軽く、魔物と遭遇しても苦労したことはない。


 フリーピンを追加で獲得したので、今は【魔の崖】と【魔の森】に刺している。

 どちらも行き来が可能で、帰る時はオルトリア王都の入口に飛ぶ。


 今の所、ミルフィとしか飛んでないが、何人まで対応なのかはわからない。


 次の【エリアピン】が追加されたタイミングで他の国へ行こうと思っている。

 なんだか某漫画のログポースみたいでちょっとワクワクだ。


「ガッガアアッッ!!!」

「にゃは、勝てるかな?」


 ミルフィがとてつもなくデカい熊とタイマンを張っていた。

 しかも素手だ。前から戦ってみたかったらしい。


 ㌧はありそうな巨体の攻撃を回避すると、返しざまにぶん殴るミルフィ。


 彼女にはレベル上げという概念はないはずだが、不思議なことを言っていた。


「強く、なるのか?」

「そう、倒せば倒すほどね。魔力が体に付与されるって話だけど、詳しいことはわからないにゃ」

「なるほど……」


 おそらくだが、内部的にレベルアップしているんじゃないだろうか。

 ステータスとは、いわゆる視覚化された情報なだけで、実は誰でも持っているのかも。


 そんな事を考えていると、勝敗が決した。


 無傷で、彼女の勝利だ。


「いえーい」


 ピースで白い頬に返り血を浴びている。

 ミルフィが味方で本当に良かった。


 いつものように解体を手伝う。

 初めはグロかったが、今では手馴れてきた。


 死体のまま買取所に持っていくこともできるのだが、その分、手間賃が取られてしまう。

 今の所お金には困ってないが、ミルフィはしっかりしているので、今は覚えたての言葉で「貯金にゃ!」が口癖になっている。


 そのとき、いわゆる心臓の位置で、黒くで固い石を見つけた。

 ミルフィが、嬉しそう叫んだ。


「【魔核】にゃあ!」

「おお、これがそうか! って、なにこれは……?」

「魔物の心臓の代わりみたいなものだけど、普通は死ぬと消えるんだけど偶に残るの。武器に属性を付与したり、素材として高く売れるんだよ」

「おお、ちなみにこのくらいだと?」


 見た目は小石ぐらいだ。持たせてもらったが、重い。


「金貨二枚はするんじゃないかなあ?」

「マジかよ!? すげえな」

「なかなかあることじゃないけどね。でも、【クチコミ】のおかげだよ!」


 今いるのは魔の森だが、ベストな狩場とA級冒険者が書いてくれていたのだ。

 横道が狭く、後ろも取られることがない。


 つまり、危険度が少ないのだ。

 どれだけ囲まれても背中を合わせて戦えばいい。


 仲間を増やせば効率よくお金を稼げるらしいが、俺たちにとって戦闘はあくまでも手段。

 貯金を増やし、レベルを上げ、命を賭ける回数を重ねて経験を積む。


 そして自分自身と同胞を探すのだ。


 最後は解体した魔物を旅行鞄に入れて完了だ。


 ちなみに帰還の最中に一度だけ魔物の襲撃を受けた。

 その際、やはり移動がキャンセルとなったが、クールダウンになることはなかったので、特に大きなデメリットはなさそうだ。


 さて、おいくら金貨かな!

   ◇


「いやー、さすがミルフィだな。まさか金貨三枚で売れるとは」

「保存状態が良かったからね。【旅行鞄】のおかげだよ。普通だったらもっと移動の最中に傷つくから」

「そうなのか? それはありがたいな」


 王都へ移動し、買取を終えて街を歩いていた。

 ふと視線を向けると、ミルフィが申し訳なさそうにしていた。


「どうした?」

「本当いいのかなあって。忖度なしに言うけど、タビトの能力は、S級冒険者パーティでも欲しがるものばかりにゃ。移動テレポート荷物ポーター、適切な狩場選び、更に戦闘もこなせて、食事も宿もハズレなしって凄すぎるよ。私なんかが独占しちゃっていいのかなって」


 羅列されると確かに凄いかもしれないが、あくまでも偶然得たものだ。

 それに――。


「気にしすぎだよ。俺は、ミルフィと一緒にいて楽しいからな」


 そうやって気を遣ってくれる相棒がいてくれるほうが、何倍も幸せだ。

 ありがとうと気持ちを込めて撫でると、耳の付け根に触れていたらしい。


「ふ、ふにゃあああ////」

「え? あ、あ、ごめん!?」


 もじもじ悶えるミルフィ。


「あいつら、往来の場でなにやってんだ?」

「まさかの野外で……? すげえ大胆だな」

「クソ、獣人族の子可愛すぎるだろ」


 慌てて早歩き、そのまま平謝りした。


「す、すまん!?」

「ううん、嬉しかったにゃ! 冒険者ギルドにまた依頼みにいこ!」


   ◇


 冒険者ギルド内、会議室。

 A級以上のみが入室を許されている個室。

 主に任務についての作戦や受注をするのかどうかを判断する場所で使われている。


 秘匿な任務が多くなるので、特別な配慮がされていた。


 そしてそこには、S級冒険者の紋章を肩に縫い付けた女性――ブリジットが立っていた。

 長い赤い髪、身長が高く、スタイルがいい。


 任務の受注欄には『隣国の姫、エルティア王女の護衛と観光案内』と書かれている。


 そこに入ってきたのは、ギルド受付員である『カリン』。


「お待たせしました。こちら特別任務となりますので、ギルドの規約に従って個室での説明になります」

「構わない。それで、詳しく教えてもらえるか」

「はい。依頼内容ですが、荷物ポーター護衛ガード観光エスコートになります。外交の訪問が終わったのち、お忍びで観光をしたいらしくご依頼を受けました」

「……そういうことか。結構な事だな。」

「そ、そうですね。あくまでも責任は冒険者ギルドになります。ブリジットさん……可能ですか?」

「私はプロだ。仕事は受ける。となると人手が足りないな。荷物ポーターの能力が高く、かつ戦闘能力に長けている、できれば二人組がいれば理想だが」

「そうですね。ええと、でしたら最近、荷物ポーターの資格を持つD級になった男性と女性のペアをご紹介できます。もう片方がA級なので戦闘能力は申し分ないと思います。任務の成功率、貢献度については非常に素晴らしいです。性格も良いですよ! 凄くいい人たちです!」


 カリンの受け答えに、ブリジットがほんの少しだけ笑う。


「あなたがそこまで言うとは珍しい。なら頼んでおいてくれ。報酬は私が3割、二人が7で構わない」

「え、いいんですか?」

「ああ、金に困ってるわけじゃないからな」

「畏まりました! 手続きの書類を取ってきますので、少しお待ちいただけますか?」


 そういってカリンは書類を取ってきてブリジットに確認してもらう。

 そこには、タビトとミルフィの魔法写真が写っていた。


 依頼の際に確認してもらうので、許可を得て張り付けているものだ。


 それを見たブリジットが、目を見開く。


「……タビト。この写真で合ってるのか?」

「はい。近日のものですよ。何かありましたか?」

「……もし依頼を断られたとしても、是非会いたいと伝えておいてくれ」

「畏まりました。お知り合いですか?」


 ブリジットが、タビトの書類を手に取って微笑む。


「ああ、私の――命の恩人・・・・・だよ」


 


 

 

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