009 賃金稼ぎは【フリーマップ】でやりたい放題。

【王都付近、魔の崖】

 4.2★★★★☆(412件)


 B級冒険者

 ★★★★☆

 高級薬草が取れる

 高所で落ちると危ない


 C級冒険者

 ★★★☆☆

 こんなところに高級薬草が!

 でも、落ちたら死んじゃうぜ……


 A級冒険者

 ★★★★★

 王都に来たら毎回確認

 飛行魔法さえあれば余裕だ


 D級冒険者

 ★★☆☆☆

 すげえ薬草みつけた

 けど、一個獲るのでギリギリだ

 もっと俺の手が伸びればなー


 C級冒険者

 ★☆☆☆☆

 うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ



「ミルフィ、だ、大丈夫か?」

「問題ないにゃあ。あ、これも、あっコレも!」


 俺が謎の黒い男だと発覚した翌日、早朝。

 賃金稼ぎの為、薬草を獲りに来ていた。


 ミルフィはA級冒険者。

 だが俺は【F級】だ。


 それもあって簡単な任務を受けていた。


 ここでももちろん【異世界ガイドマップ】が役に立っている。

 希少価値の高い薬草を探し出したのだ。


 凄まじいほどの高所だが、ミルフィはまるで地面を歩くときと変わらないそぶりで、ロッククライミングしながら草を取っている。

 恐怖とかないのだろうか。落ちたら間違いなく死ぬ。


 とはいえ、これでは彼女におんぶに抱っこだ。

 いくら能力で見つけたとはいえ俺だって役に立ちたい。


「タビト、出るぞ」

「ふぇ?」


 生前好きだったロボットのように一歩を踏み出す。

 数秒後、落ちかけた。


「タ、タビト!? 無理しないで!?」

「だ、だだだだだ大丈夫だ」


 とはいえ、本当に大丈夫だった。

 やっぱりこの身体は軽い。それにかなり鍛えられている。


 恐怖はどこへやら、順調に薬草を集めながら景色を眺める余裕さえあった。


「綺麗だねえ」

「だな」


 ちなみに俺の視線はミルフィのたゆんに向けられていたが、気づかれることはなかった。


   ◇


「凄いにゃあ。一回でこの量は相当だね」

「マジか。換金が楽しみだな。おっと、そういえば……」


 【旅行鞄】に薬草を詰めた後、【エリアピン】の存在をすっかり忘れていたことを思い出す。

 色々あったので仕方がないが、これは指定した【国】に戻ることができる。


 クールダウンは終わっている。ボタンを押すことでおそらく入口に転移するだろう。


 手を繋いで戻れることができれば最高だ。

 だがそのとき、ふたたびラッパ音が聞こえた。


【歩行距離が20万歩に到達。超成熟ボーナスにより、New【フリーピン】が追加されました】


 ステータスを確認。

 フリーって、もしかして……【自由】ってことか?


 ……ヤバすぎないか?


「ミルフィ、ちょっと待っててくれるか」

「にゃ」


 断りを入れた後、マップで今いる場所を指定する。

 【エリアピン】の時と同じように動かしてみる。


 どうやら国の近くには置けないが、それ以外。


 つまり――通常マップなら自由に置くことができる。


 試しに手を放そうとすると、【ここでいいですか? はい/いいえ】の文言が出てきた。


 色々わからないことだらけだが、やってみないとわからない。

 そのまま【はい】を選択。

 すると、同じようにマップにピンが刺された。


 さて次は【エリアピン】の確認だ。


 事情を説明して、ミルフィと繋ぐ。


 そのまま、【オルトリア王都】をクリックした。


【10秒後に移動します。戦闘状態になった場合は、強制的に解除されます】


 さあ――どうなる。


 ――――

 ――

 ―


「す、凄いにゃあああああああ!?」

「ああ、これは凄すぎるな」


 俺たち二人は【王都】の入口まで移動していた。

 門兵は顔を覚えてくれていたみたいで、「また高速移動か、すげえなお前」と言ってくれた。

 瞬間移動だが。


「タビトの魔法ってどうなってるの? それに今、無詠唱だったよね?」

「無詠唱って凄いのか?」

「凄いよ。なんかもう、雲の上の人って感じだにゃ」


 クリックはしているんだが、無詠唱には違いないな。


 確認したいことはもう一つある。

 その前にまずは冒険者ギルドへ向かった。



「え、え、えこ、これこの量の高級薬草!? ひぇええ、ど、どうしたんですか!? それもこんなに早く!?」


 ギルド受付のお姉さんことカリンが、たゆんたゆんしながら驚いていた。

 帰宅時間をスキップした上に良いものばかりだ。

 ちなみにまだ本部からの連絡はないらしい。


「偶然いいものを見つけたんです。それに足腰は鍛えてるので」


 カッコつけながらも買取。ミルフィもなぜかドヤ顔だった。

 耳の付け根を触ると「ぁあぁつん///」と声を上げる。

 その後怒られた。


「任務完了です。こちら冒険者タグの更新をしておきますね。規定数をオーバーをしている分は、このまま買取もできますが、どうされますか?」

「お願いできますか? ミルフィ、それでいいか?」

「もちろんだよ!」


 クチコミ通り希少価値が高いものばかりだったらしい。

 通常薬草は銅貨10枚程度だが、なんと金貨1枚をもらった。

 俺たちの宿が銀貨7枚なので、単純計算、一か月分は泊まれることになる。


 薬草はまだもう少しあったので次回が楽しみだ。


 宿に出た後、俺たちの財布は潤いに潤っていた。

 今日のご馳走は何にしようかと考える余裕すらある。


 だがまだやることがあった。


「ミルフィ、もう少しだけ付き合ってくれないか? 成功した場合でも、さっきの狩場から歩くことになるんだが……」

「? わからないけど、気にしないで」


 ありがたい。


 そして俺は、ドキドキしながら【フリーピン】をクリック。


【10秒後に移動します。戦闘状態になった場合は、強制的に解除されます】


 そして――やはり、一瞬で狩場に戻ることができた。


「……タビトは天才魔法使いだにゃあ!」


 だがやはりクールダウンがあった。

 色々と調べたことをまとめていく。


 【エリアピン】のクールダウンは24時間。国に刺すことができる。

 設置後の移動不可能。街にも可能?


 【フリーピン】のクールダウンは5時間。

 クチコミが存在する場所であれば自由に刺すことができる。

 数があることから増えると予想。

 

 ちなみに【フリーピン】は差し替えが可能だった。


 基本的には狩場に置いておくといいだろう。


 翌日も俺たちは薬草を獲りにいった。

 それを繰り返し、早いもので【F級】から飛び級で【D級】へ。


 これなら魔物の討伐依頼も受けられるとのことだ。

 路銭はいくらあっても困らない。


 旅行鞄の積載量も増えている。


 美味しいご飯屋さんも見つけた。


 だが冒険者ギルドからまだ情報はない。

 猫人族の事も不明だ。


 とはいえ、俺たちのペースでいい。


 何も不満はない。


 何もない。


 何もな。


「むにゃむにゃ……タビト、最高にゃあ、このご飯……美味しいよぉ」

「……これは必要なことなんだ。わかってくれミルフィ」


 ある日の深夜、眠っているミルフィを悲し気に眺め、宿を出た。

 相棒である彼女には、今までの全てを話している。


 だが言えないこともある。


 深夜の王都は、何というか昼間とは違う空気が漂ってた。


 大人・・の空気だ。


 そこで俺は、あらかじめ調べていた路地裏に入る。


 どうしても試しておかねばならない。


 これは、必要不可欠なんだ。


お兄さん・・・・、1人なら遊んでいってよ」

「ねえねえ、うちの店・・・・来てよ。サービスするよ」

「一緒に飲もうよ。それともあっち・・・がいい?」


 狭い路地には妖艶な雰囲気を身にまとった美女が大勢いた。

 

 ここにも俺たち・・・の情報がもしかしたらあるのかもしれない。

 ちゃんと夜の【クチコミ】もチェックしておかないと。



【王都ピンクストリート、夜の路地】

 3.7★★★★☆(14574)


 子爵家の長男

 ★★★★☆

 男の嗜み

 パルティの秘密クラブは最高


 A級冒険者

 ★★★★☆

 朝、希望を持って目覚め、

 昼は懸命に働き

 夜はピンクストリートで遊ぶ


 B級冒険者

 ★★★☆☆

 ぼったくりに騙された

 クソ、せっかく貯めたお金が……



 ちなみに下心は一切ない。



 ミルフィ

 ★★★★★

 やっぱりこのベッドの寝心地は最高だにゃあ……

 むにゃむにゃもう食べられない……


 タビト

 ★★★★★

 異世界に来てから一番興奮している

 相棒にバレてはいけないという背徳感がある

 今生きてるって感じがする


 


 

 






 

 

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