018 初めてのパーティーも【ガイドマップ】があれば褒められちゃうぜ!

カルロ・・・さん、その道は危険です。安全なのは右から二番目ですね。後、足元に魔核が落ちています」

「え? う、うわホントだ!」

「ちょっと、それ赤色よ。A級魔物のじゃない」

「スゲエ、マジで【探索師】がいると大違いだな」

「いや、タビトは特別だぞ。こんなの……ありえない」


 迷宮ラビリンスダンジョン、第六層。

 A級パーティーの三人と一緒にダンジョンへ潜っていた。


 カロスさんは、いわゆる勇者っぽい風貌で、金髪のイケメンにさわかやかな感じだ。

 隣の女性はリアンさんで、長い黒髪で魔法使い、その隣の短髪の刈り上げ、デカい人はゴルフさんで、斧使い。


 大勢からパーティーに誘われたあと、ギルドを通じてカロスさんの依頼を受けることに。

 迷宮ダンジョンは以前訪れたので勝手がわかるのも理由だったが、一番は――。


「よし、こんなにも順調なら孤児院にも多額の寄付ができるはずだ」

「ふふふ、みんな喜ぶわね」

「ああ、最高だな!」


 彼らは全員が孤児院出身で多額の寄付の為に活動をしている。

 実力も確かで、何度か魔物が現れてもものともしなかった。

 それが、今回のパーティー参加を受けた理由だ。


 だがそんな彼らでも、ミルフィの戦闘力は凄まじいらしい。


「――バイバーイにゃ」


 突然現れた蜘蛛の魔物を一撃で刈り取る。


「いや、凄いな本当に……。なんで君たちは二人で行動してるんだ? 大手から引く手あまただろうに」

「そうね。正直、タビトが【D級】なんてありえないわ。探索師としてもありえないぐらい優秀だし、二人とも私たちのギルドに入らない?」

「マジで二人が来てくれたら世界が変わるぜ」


 ありがたいとこにとにかく褒めてくれる。

 ちなみに【フリーピン】は使っていなので徒歩できた。


「ありがたい言葉だが俺たちには目的があるんだ。でも、そうやって言ってくれるのは嬉しいよ」

「私は戦うことしかできないからね。タビトは凄いけど!」


 どや顔のミルフィが可愛い。

 この世界で初めて別パーティーと組んだが、難しいこともある。


 例えば列が長いと後ろに気を回さないといけないことだ。

 当たり前だが報酬も分けることになるだろうし、消耗品、食料、危機管理もその分増える。


 安全度は増す、やはりいつもとなると難しいだろう。


「タビト、足は大丈夫?」

「ああ、どこかで怪我したのかな。でもこのくらいは――」

「任せて――治癒キュア


 そして俺は生まれて初めて(ある意味では)

 魔法を目の当たりにした。リアンさんが手を触れながら白い光を浴びさせてくれると擦り傷が消えていく。


 まるでカイロで温めてくれたようにじんわりと気持ちがいい。


「よし、これで大丈夫」

「なんだリアン、僕の時はいつも我慢しろっていうのに」

「ハハッ、俺なんてデカいコブができたのに唾を付けてろって言われたぜ」

「あなた達は戦士、タビトは【探索師】で私たちの命よ。一緒にできないでしょ」


 一応俺も戦える、というか戦いたいのだがダメだと言われている。

 道を調べる際に周囲を護衛、手厚い加護、甘やかされすぎてサボっているみたいだ。


「タビトは私よりも強いよー?」


 ミルフィの言葉に、3人がハハッと嬉しそうに笑う。

 彼女に勝てるとは思わないが、本心で言ってくれているのだろう。

 サイクロプスのことは知っているみたいだが、ミルフィが凄すぎて、だろう。


「次は俺も戦うよ。任せきりだし」

「そんなことしたらリアンに殺されるよ。任せてくれ、僕は戦うのが得意なんだ」

「おうよ! 俺たちはこうみえて強いぜ!」

「どうみても見た目は強いけどな」


 ガハハと笑う筋肉ゴルフ。

 いいパーティだ。ちなみにパーティー経験をしようと、ミルフィが言ってくれた。

 

 命のやり取りだったり、今後の事も鑑みて他人と組む経験はしていたほうがいいと。

 受付のカリンさんと書類をしっかり見せてもらって、カルロパーティーを選んだ。

 品行方正、実力、全てが伴ってないと危険だからと。


 そういった事を何も言わずにミルフィは動いてくれる。

 うむ、もっと感謝しなければ。


「とりあえず当分はまっすぐだ。ええと、じゃあ後は……任せていいかな?」

「当たり前だよ。行くぞ、ゴルフ」

「おうよ。何かあったら見捨てろよな、リアン」

「言われなくてもそうするわ」


 随分と仲の良いパーティだ。

 全員がA級ってのが驚きだよなあ。


「いいパーティだね」

「たしかに、強くて安心できる」

「それに書類見てびっくりしたよ。カロンたち、勇者認定されてたよ」

「勇者認定?」


 聞きなれない単語だ。再度、ミルフィに尋ねる。


「ギルドへの貢献度だったり、戦闘力のバランス、色々な事柄を加味して付けられる称号だよ。北はまだ魔族の生き残りがいるんだけど、そういったところにも入れる許可証でもあるの。王都でいたパーティの中で、彼らが一番強いよ」

「へえ、そうなのか」


 王都にはマジで死ぬほどガタイのいい奴らがいる。

 そいつらよりも飛びぬけて強いってのはすげえ。


「でも、そんな彼らからギルドに誘われるタビトのも凄いにゃあね」

「俺じゃないよ、能力のおかげだ」

「それも含めてだよ」


 そういってもらえるとありがたい。

 そしてそれからどんどん進んで、ついには第七層に辿り着く。


「少し道を確認する。待ってくれ」


迷路ラビリンス第七層】

 1.2★☆☆☆☆(4)


 A級冒険者

 ★☆☆☆☆

 道が複雑すぎる

 これ以上は断念せざるを得ない


 A級魔法使い

 ★☆☆☆☆

 現れる魔物も多い。

 何よりも罠が凄すぎるわ


 A級探索師

 ★☆☆☆☆

 限界……だな

 ここであきらめよう



 辿り着けた人が少ないのだろう。

 クチコミがほとんどない。

 マップを見るとありえないほど複雑だ。


 だが俺なら間違えることはない。


「一応道は問題ない。任せるよ」

「……嘘だろタビト」


 カルロの視線の先には30の分かれ道。

 29の先は行き止まりと罠だが。


 俺の自信もあって満場一致で進むことが決まり、問題なく正解の道へ。


 だが最後、大きな扉と部屋を見つけた。


 いわゆるダンジョンボスと呼ばれるものが存在しているらしい。


強制帰還リターンポータルは持ってる。この面子ならボスを確認し、倒せそうならやってもいいだろう」

「私もカルロに賛成」

「俺もだ。ミルフィ、タビト、どうする?」


 最終的にゴルフが、俺たちに尋ねてくれた。


「私も大丈夫にゃ、タビトは?」

「俺は初めてだからな。といっても、任せる、なんて無責任なことを言うつもりはない。みんなが満場一致なら従うし、戦うよ」


 それに対し、カルロが笑う。


「だから大丈夫だっ。サイクロプスでの戦いは聞いたが、気にしないでくれ」


 そして俺たちは扉を開いて中に入る。

 何の変哲もないデカい部屋だ。

 無機質で、実験室っぽくもある。


 そのとき、マップがすぐに動いた。


「上だ!」


 降ってきたのは、デカい岩像だ。

 侵入者を殺すゴーレムなのだろうか。


 まずカルロが前に出た。ゴルフが続き、ミルフィが飛ぶ。

 それを支えるのはリアンだ。


 適切な防御シールド加護バフ

 

 ゴーレムがカルロに振りかぶった攻撃は防がれ、一方的にカルロたちが攻撃を与え続ける。


 俺も前に出たかったが、マップ確認を優先していた。

 問題はない。

 

 だがその時、目が充血する。


 怒りアンガーだ。まさか、単体でもなるとは。


「みんな、気を付けろ!」


 それからの攻撃はとてつもないものだった。

 リアンの防御シールドがはじけ飛ぶ。


「カルロ……これは」

「ああ、強制帰還かもしれないな」


 だが俺は見えていた。

 弱点が、動きが。


「みんな、俺に任せてくれるか」

「お、おいタビト!?」


 無謀ではなく、これは確信だ。

 血が滾る。


 あァやっぱり、俺は――戦うのが好きだ。


「右足――」


 ガイドレンズで覗くと、右足の関節に弱点が見えた。

 そのまま勢いよく駆ける。


「タビト!」

「――大丈夫だ」


 そのまま、俺はゴーレムの右足を切り落とす。

 

 続けて左足、ゴーレムが膝をつく。

 同じように右足、続いて左腕。


 最後は――首だ。


「――じゃあな」


 ふうと、一息。


 その時、あまりに高揚しすぎてやりすぎてしたことに気づく。


 サイクロプスと同じだ。

 真面目なのもあれなので、照れ隠しながらペコリ。


「あはは、あははは――。ごめんっ、役割超えてた……」


 すると、カルロが笑う。


「アッハハハハ、なんだ君は、凄い凄すぎるよ」

「……もう笑うしかないわね」

「俺たちいらねえじゃねえか」

「タビトやばすぎにゃあ」


 苦笑いしかできない。そしてひときわ大きな魔核を見つけた。

 虹色だ。すぐに旅行鞄に入れる。


「さて出ようか。ここから戻るのは大変だが、気を付けていこう」


 そのとき、ふとミルフィと目が合う。

 カルロたちのことは信頼できる。

 体力も随分と失った。


 なら――。


「ええと……さ、みんな、手を繋いでもらっていいか? 後、絶対に秘密にしてくれよ……な?」

 

 ――――

 ――

 ―


 王都、入口。

 いつもの兵士が、声をかけてくれた。


「おい、お前ら全員高速移動か、すげえな」


 だがカルロ、リアン、ゴルフは――目が飛び出しそうなくらい驚いていた。


「……夢? か? ここ、王都だよな?」

「嘘でしょ……これが移動ワープ?」

「おいタビト、お前……凄すぎるぜ」


 ミルフィも、笑っていた。


「タビト、頼むギルドに入ってくれ!」

「お願いタビト、悪いようにしないから!」

「マジで頼むぜタビト!」


 やっぱり移動はヤバすぎるらしい。



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