017【探索師】になったら、パーティには困らない!
「カリンさん戻りました」
冒険者ギルド内。夕方。
カリンさんに声を掛けると、ホッとして、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「あ、おかえりなさい! ……良かったです。無事に戻って来てくれて」
「ありがとうございます。初ダンジョンは楽しかったです」
「楽しかった……? あ、でもそういう考えもありますよね! でも、めげないでください! 探索師は難しいので、これからはもっと簡単なダンジョンから初めて見てもいいと思います! 失敗は成功の基です!」
「え?」
「あ、すみません!? でも、私は応援してます! タビトさんはとてもいい人ですし、ミルフィさんも強いですし!」
どうやら勘違いしているらしい。
ああそうか、
エリアピンでの移動も考えものだな。
「ミルフィ、出してくれるか?」
「はーいにゃ!」
ごろんっと出したのは、
カリンさんが顔面蒼白になる。
「え、これって吸血コウモリ、トリドア蜘蛛、亜種アドニア……の魔核ですか!? こ、これはどうしたんですか?」
「ダンジョンで獲ってきました。これで、探索師になれるんですか?」
第三層だけで問題なかったのだが、あまりにも余裕過ぎて深くまで潜ってきた。
最後らへんは20くらいの分かれ道があったので、普通なら怖すぎるだろう。
第五層以上も行けたのだが、ミルフィは一度帰ったほうがいいと。
理由は余裕すぎるから。
人はどれだけ気を張っても油断する、一日でも開けるべきだと言った。
基本的な判断は彼女に任せている。
俺よりも修羅場をくぐっているだろうし、役割分担みたいなものだ。
いつもその言葉に重みがある。大切な相棒。
「すげえ、第五層だってよ!?」
「しかも超レア魔物ばっかりじゃないか。あいつら、マジですげえな」
「ああ、ヤバすぎる」
噂に尾ひれ――まあひれでもなく真実か。
とはいえこれは悪いことではない。
有名になればなるほど俺を知る人物、ミルフィの同胞にも耳が届くだろう。
まあ、その分危険も増えるかもしれないが。
「す、すぐに探索師の書類を用意します! すみませんタビトさん!?」
「いえいえこちらこそ。ゆっくりで大丈夫ですよ。急いでないので」
カリンさんが急い中に入っていく。
俺が来た時はいつも忙しそうなので、なんだか申し訳ない。
「タビト、落とし物も預けるんだよね?」
「ああ、持ち主が断定できそうなものだけでも返しておこう」
それと決め事が一つ。
武器や防具ではない、いわゆるメモや個人の遺失物はできるだけギルドに返却しようと決めた。
詳しくは言いたくないが、遺書も見つけた。
自分の能力を少しは誇れることに使いたい。
「お待たせしました。魔核の確認が取れました。こちらで【探索師】としての認定をさせていただきますね!」
「ありがとう。でも、具体的にどうなるんでしょうか……?」
「職業の欄に記載されますので、依頼者が閲覧できます。後は、パーティーを探している人とかも閲覧できるようになりますね」
「なるほど」
確かにゲームで魔法使いが欲しいと思ったらネットで探したりするもんな。
そんな感じだと思えば納得だ。
「そういえば、ミルフィの欄には何があるんだ?」
「なんだったかにゃ?」
気になってカリンさんに見せてもらう。
【A級+】【戦士】【要人特別護衛者】【賞金稼ぎ】【運び屋】
「おお、めちゃくちゃついてる……」
「ミルフィさんは凄いですよ。特に【要人特別護衛者】は、本当に信頼されている冒険者にしか付かないので」
「えへ、えへへー」
照れているミルフィが可愛い。
というか、マジですごいな。
「そんなことないよ。タビトに比べたら全然。それに――
こっそりとミルフィが俺に耳打ち。とんでもないこと、ちょっと気になるが我慢だ。
「こちら、新しいタグです」
カリンさんからいただいた新しいタグには、探索師の絵が描かれていた。
なぜか鳥だが、聞けば初めての探索師が鳥使いだったという。
その日はすぐに宿へ帰った。
うんうん、充実した生活を過ごせている。
「よぉ、今日はおむらいすだぜ!」
そしてリルドのおっさんの飯は、やっぱり最高だった。
翌朝、引き続き冒険者ギルドで依頼を受けたあと、ダンジョンへ潜ろうと扉を開けたら、とんでもない数の人がいた。
「俺たちが一番だぞ。お前ら押すなよ」
「ハッ、お前たちみたいなパーティーに来るかよ」
「お、おいあれタビトじゃないか?」
ん? なんか一斉に俺を見た。
そして――押し寄せて来た。
「なあ! 俺のパーティーに入らないか!? A級ばかりで、魔法使いもいるぞ! 待遇もいい!」
「あら、私たちのパーティに来てよ! 可愛い女性ばかり、それにアジトもあるわ!」
「待て待て、俺たち戦士団だろ! なあタビト、きてくれよ!」
その後ろで、カリンさんが人に押しつぶされながら叫ぶ。
「あ、あの探索師の噂が流れて、その! みんなパーティーに入ってほしいって!」
え?
「やっぱり……にゃ、にゃー!?」
ミルフィはそんな気がした、という表情のあと、人の波に埋もれていく。
どどどどど、どうしよう!?
探索師って、そんなすごいの!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます