025 異世界ガイドブックが出来上がったぜ!
王都が見渡せる丘で、ガイドブック作りに没頭していた。
【王都が見える綺麗な丘】
4.5★★★★☆(478)
王都ロマンチスト
★★★★☆
考えごとをするとき、僕はここに訪れるのさ
偶然見つけた冒険者
★★★★☆
すげーキレイ―
雑貨屋で頂いた魔法ペンは魔力を動力源にするのでインクが切れることがない。
魔法ノートも便利だ。
「ふにゃあ、日向ぼっこ気持ちいいにゃあ」
隣ではミルフィがぬくぬくしながら耳をぴょこぴょこ動かしている。
その日の勢いでやりたいことを決めたり、お金に余裕がある時は自由を満喫できるのが冒険者の良い所だ。
ガイドブック作りは楽しいが難しい。
王都オルトリアの良さをたっぷり詰め込まないといけない。
ディープななスポットはあえて避けて、初めて訪れるや冒険者たちに喜ばれるように書く。
写真もふんだんに使って、クチコミを書いてくれた人(といっても自動だが)にも喜んでもらえるような。
「……おやしゅみなさい」
「ああ、ゆっくり寝ててくれ」
インタビューや街の奔走でミルフィは頑張ってくれた。
昨日も走り回ってくれたのだ。
俺も頑張らねばならない。
隣のミルフィを横目に、ただひたすらに書いては消して、書いては消して。
そして――。
「ミルフィ、起きろ、起きてくれ」
「むにゃむにゃもう食べさせてよお……」
「食べてない夢パターンめずらしいな」
夕方前、ミルフィを起こそうとしたが、なかなか起きない。
戦場では反応がいいのに、なんでだ?
なので、耳の付け根を触ることにした。
「ぁっあん……ああっぁあん! んっぁっああん!」
「声デカすぎィ!」
「ふぇ……あ、おはよう」
「おはよう」
思わず周りに誰かいないか確認してしまった。
気を付けよう。襲ってると勘違いされそうだ。
そして俺は、手元の本を見せる。
「できたよ。試作品だが、読んでくれるか?」
「え! 読むよむ!」
読者第一号、ミルフィは【王都オルトリアの歩き方】と書かれた本を表紙から褒めてくれた。
シルクさんがいる食堂、ミリ魔女のお店、リルドおっさんの宿泊所、ティアと行った観光地も含めて色々書いている。
冒険者コーナーでは、狩場のおすすめもだ。
クチコミから抜擢した注意点も盛り込み。
さらに何とブリジットさんのクマコーナーまで。
これは意外にもノリノリで書いてくれた。正直、一番の目玉かもしれない。
見終わったミルフィが、大きくため息を吐いた。
「……どうだった?」
「凄い……これ、凄いよ! 革命だにゃ!」
「はは、言いすぎだろ。でも、ありがとな。最後のページに俺たちのことを書いておけば、見てくれた人が冒険者ギルドで教えてくれるだろう」
「うんうん、完璧だにゃあ。あ、でも、どうしてこれ最後のあたり空白なの?」
「ああ、そこはミルフィに書いてほしいんだ」
「そうなんだ。――え!? わ、私!?」
「ああ。猫人族から見た王都オルトリアも紹介してほしいからな」
「え、ええー!? 本なんて書いたことないよ!?」
「俺もだよ。だから、一緒に頑張ろうぜ。きっとみんな欲しがるはずさ」
「そ、そうかな?」
「間違いないよ」
「じゃ、じゃあ頑張る!」
それからまた書き始めた。
時には優しく、時にはスパルタで。
「そこ、誤字!」
「はいにゃ!」
リルドのおっさんの写真も追加しにいったり。
「なんか俺、なんかハゲてないか?」
「大丈夫このまんまだぜ」
そしてようやく、完全な本が出来上がった。
「ミルフィ、イイ感じだ! 魂がこもってるぜ!」
「疲れたにゃあ……」
俺と違って旅行本なんか見たことないだろうに、それでも頑張ってくれた。
面白いのは、獣族からみるおすすめスポットだ。
「この日当たりスポットってそんなみんな喜ぶの……のか?」
「ふぇ!? だ、だめ!? 多分みんな喜ぶよ!?」
「いやダメじゃないが、ちょっと笑ってしまった」
輝くような一冊。
うむ、いい出来栄えだ。
後はコピーだ。
コンビニどこにあるっけか。
え、コピー!?
「ミルフィ、た、大変だああああああああああ」
「え、ど、どうしたの!?」
「コピー機、この世界にコピー機はありませんか!?」
「にゃ、にゃんの話!?」
すっかり忘れていた。
印刷所なんてあるのだろうか。あったとしていくらかかるのだろうか。
これは計算外だ。
「複製が……本の……」
「あ、それはもう話しといたよそ」
「え、ど、どういうこと!?」
◇
「はい。こちらが複写したものです」
「ありがとうございます。
冒険者ギルドに移動。
手渡された二冊目のガイドブックは、ものの見事に複製されていた。
「すげえ、完璧だ」
「規約が変更した際、皆様にお渡しする業務で使いますからね。専用の複製魔法機があるんです」
「これはどこの冒険者ギルドでもあるんですか?」
「そうですね。それに既に
「審査?」
「はい、ミルフィさんから承っておりましたから。本があれば冒険者の死亡率も減るだろうと、上層部からも許可を得ています」
いつのまに。
何と驚いたことにミルフィは既に色々と根回ししてくれていた。
冒険者ギルドで配布するにあたって観光本という位置づけではなく、初心者冒険者に優しいという事で複写の許可を申請していたらしい。
前例のない事なので返答に時間がかかるとわかっていたらしく、この本を作ると決めた時から動いてくれていたらしい。
「何で教えてくれなかったんだ?」
「もしダメだった時にタビトがショックを受けるかなって。その時は、また考えようと思ってたから」
「なんていい奴なんだ俺の相棒は」
「え、ええ!? は、恥ずかしいにゃ////」
もじもじミルフィ。うん百点。
ただもちろん無料ではなかった。
多少の金銭を払って複写してもらい、更にそれを目立つところに置いてもらうことが決まった。
冒険者ギルドには送金システムがあり、売上分は俺の口座みたいなところに入れてくれて、どこでも自由に引き出せるらしい。
ただ別にこれで儲かろうとは思っていない。
あくまでもこれは俺とミルフィの事を知る為だ。
それと、今まで旅行が好きだった俺の異世界での趣味も兼ねている。
「それにブリジットさんもだよ」
「え?」
「後押ししてくれたらしいよ。タビトの本は、絶対に良いものだからって上層部に」
「そうだったのか……」
知らなかった。
ほんといい人ばかりだ。
だが居心地がよすぎるからといってずっと王都に滞在するつもりはない。
装備を整え、準備が整ったら次の国に出発する。
もちろん、相棒と。
「よし、後でクマさんのぬいぐるみ買っていってあげよう」
「賛成だにゃ!」
エディリオさんにすぐ私に行くと、大変喜ばれた。
そして翌日から俺のガイドブックは配布された。
驚いたことにすぐなくなったとのことだ。
ネームド討伐、ダンジョンで俺の事を知っている人が沢山いたのと、ブリジットさんのお墨付き、というのが良かったらしい。
後は、以前パーティーを組んだカルロたちもクチコミで広めてくれていたとのこと。
おかげで順調だ。
そしてもうすぐ王都を出ようかと思っていたある日、冒険者ギルドで最後の依頼で受けた帰り。
俺は、驚くべき人物出会った。
「あ、あの!」
「ミルフィ、王都出るのは来週でいいよな?」
「うん! 次はティアの国だね。楽しみだにゃー」
「ああ、楽しみだ」
「あ、あのあの!」
なんだか声が聞こえる。
……誰だ?
後ろを振り返るが、誰もいない。
「あの!」
いやいた。
ちっこい子供だ。
黒いフードを被っている。
「誰だ?」
「……覚えてないですか」
覚えてない?
黒いフードを取ると、驚いた。
耳が、ピンと立っている。
それも凄く立っている。
いや、というか、ロリだ。
ロリ幼女だ。
「エルフだ。めずらしいぜ」
「ほんとだ、人里にくるんだな」
「子供か? いや、年齢はわかんねえのか」
それを見た王都民も騒いでいた。
てか、目鼻立ちも綺麗で可愛いな。
金髪碧眼ロリ幼女エルフ。
パワーワードすぎるだろ。
「生きてたんだ……」
「ん? 生きてた?」
よくわからないが、どうやら誰かと勘違いしているらしい。
しゃがみ込むんで視線を合わせようとすると、なぜか思い切り抱き着かれた。
「八雲旅人さんああああああんアクアですうううう」
「え? ええ!? アクア……?」
というかなんで、この幼女、俺のフルネームを知ってるんだ!?
ミルフィ
★★★★★
今日もいい日だったにゃあー
ん、誰この女の子??
どこかで見たことあるような
タビト
★★★★★
ガイドブックが好調で最高だ!
え、だ、誰この子!?
な、なんで!? 何で抱き着かれるの!?
俺がイケメンだから!?
アクア
★★★★★
生きてた、生きてた、生きてたあああああああああ
――――――――――――――――――――――
あとがき。
異世界ガイドブックが完成、無事好調。
さてさて次の国へ――ん、だ、誰だこの子!?
ってことで次回、とんでもない事実が明らかになります。
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