第19話
「くそっ!蛮族どもが!我らの森を!!」
「なんて!罰当たりな!」
「このまま好き勝手にされて良いのか?!!我々もすぐに反撃を!!」
「落ち着きなさい!!!」
「しかし!女王様!このままでは!!」
「分かっています!」
この部屋には女王と臣下、そして、女王を守る近衛兵がいた。
先程の攻撃に慌てふためき混乱している一同に一喝をして落ち着かせた女王にも焦りが生じていた。
そもそもこの城と城下の一部を守られているのはエルフの女王が多大な魔力を結界に注いだからだった。
エルフだとしても常人なら魔力不足で命を燃やして死んでも補えないほどの魔力を使ったと言うのに一切疲労している様には見えないその姿に流石、女王はと外から拍手が聞こえてきた。
「お見事です。エルフの女王。」
「男とは・・・舐めている訳ではない様ですね。」
臣下や騎士は入城してきたウスを見てアマゾネスが男を一人寄越すなど我らを舐めていると侮辱に感じていたが、女王だけはウスが身に纏う魔力がただの男ではない事を見抜いていた。
千年にもなる己の経験からしてもあまりにも異質なものをウスから感じていたのだ。
「降伏を勧めにきました。」
ウスは最終通告をしにやって来ていた。
他のアマゾネスは既に城下で囲み殲滅の指示を待っていた。
飢えた獣の如く城下、そして城を見ていた。
「あの少年一人で大丈夫なんすか?先輩?」
「馬鹿、戦争中だぞ。集中しろよ。」
もう決着が着いた様なものだと後輩兵士が言う事に呆れながら、この後輩以外にも気が抜けてきている者がチラホラいた。
これだから、新人共はと戦場で集中を切らすなんて自殺行為に等しい事を魂で分かっていないと呆れている先輩だったが、そんな事よりあまりにも無知な発言をするこの後輩に呆れていた。
「当たり前だろうが、姫様の筆頭従者だぞ。そこら辺にいるゴミみたいな男共と一緒にしてんじゃねぇよ。」
「でも〜男は男でしょう?本当に大丈夫なんすか?」
何にも知らない後輩に先輩はこれから不敬で殺されないか?不安に思いながら呟いた。
「従者の選定式に勝ている時点で俺たちよりよっぽど強いに決まっているだろう。それにあれはそれ除いてもやばい。」
「何がやばいんすか?」
「俺は昔のあの子を見ている。それはそれは魅力的な男の子だった。傾国の美男の象徴の様な子だったんだ。」
先輩に言われて後輩はウスの姿を思い出したが、そんな感じか?と思った。確かに美男で顔は整っているが、傾国という印象はなかった。
「だからだよ。俺も今回で2度目だが、初めて見た印象は無くなっていた。まるで似て非なる別人に会った気分だったが、俺の子宮が言っているあれは前に会った少年だ。孕ませてもらえって疼くんだ。不気味なんだよ。心底、不気味だ。」
それを聞いても後輩はよく分かっていなかったが、盗み聞きしていた周りの兵士達もその印象を受けた事があるのか頷き、そして、その不気味さを思い出しては気味悪がっていた。
傾国から何か異質な化け物に変わった男を相手にしないといけないエルフの女王には憐れみすら覚えていた。
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