第12話
「はぁ、はぁ、はぁ。流石だね。ウス。」
「お褒めに預かり光栄です。ノロ様。」
ヤマの代わりとして従者交換会最初の従者はウスだった。
今は昼。朝の快適な起床から調子を上げられていって昼食前の鍛錬をやっていた。
槍使いのノロはローズネス戦でのウスの槍封じを見た為、力がローズネスより低い自分があれをされたら終わりだと分かっていた。
だから、突いて肉に風穴を開けるのではなく、敢えて掠る様にする事によって肉を削ぐ攻撃を繰り返していった。
ウスはノロがそれを仕掛けてくるのは予想できていた。
掠らせようとするなら避けるのは突かれる時より容易かった。
ノロは余裕で避けるウスの先を読み続けて避けるのが無理な体勢になる様に行動を誘導していた。
だが、ウスの方が一枚上手だった。
常人なら避ける事が不可能な体勢からあり得ない柔軟さを使ってノロの槍を避けたのだ。
人とは思えない避け方をしたウスに思考を一瞬停止させてしまったノロは腹に蹴りを入れられた。
「君、本当に人間?明らかに人間がして良い動きじゃないよ。」
「すべての筋肉を柔筋にする事によって通常不可能な体勢も可能です。こんな風に。」
ウスは身体を捻るとまるで手で縛られた雑巾の様に腹部が捩れていた。
肉体操作はアマゾネスとして生まれ持つものだが、こんな一瞬にして変化と操作をする人をノロは女性でも見たことがなかった。
ウスの筋肉はやはり異質だと確信した。
「君から魅力を感じないのはその力の代償かい?」
ウスの一番の異質は経歴である。
アリセシアの従者になるまでゾネ家の一人息子としか誰も知っていなかった。
アマゾネスは力に貪欲だ。どんな力であってもその者が使いこなせないだけで自分にとっては有用な場合がある為、常に力の情報収集は怠らない。
こんな異質な力を産まれながら所持していたら噂くらい立つはずである。
それがないと言う事は手に入れたのは最近である。
自分が持つ筈じゃない力には大抵の場合代償が支払われるものである。
ウスにとってはそれが魅力だと考えられた。
「それは違います。ノロ様が感じられているのは代償ではなく、どちらかと言うと副作用です。」
「代償じゃなくて、副作用・・・ね。」
ノロはウスの言葉を聞いてなんとなくウスの正体に心当たりがあった。
「かなり無茶したみたいだね。」
でも、それだとするとどんな形であれウスは地獄を味わっている事である。
元の力がどの程度か知らないが、あれだけの奉仕の力があれば嫁なんて引くて数多だっただろうと言うか自分に欲しいとノロは思った。
力だけを欲するアマゾネスでもそれだけウスは貴重な人材なのである。
「まぁ、良いや。訓練はこの辺りにして、マッサージしてくれる。」
「かしこまりました。」
ウスは一礼をすると先に訓練場を退出してマッサージの用意をしにノロの自室に向かった。
「アリセシア様は魅力的なウスを見ているから。あれだけ惚れているんだろうな。」
自分も見てみたいと思いながら、多分頼んでも無理だろうとノロは察していた。
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