第13話

「どうだった?初めての劇は。」


「なんって言うか?!凄い迫力でした!戦場とはまた違った興奮に満ちてました!!」


 ノロとライクは博物館に隣接している劇場に来ていた。

 外国から有名な劇団が来ていたのだ。

 アマスじゃなかったらチケットを取るのも苦労するどの国行っても大人気劇団なのだが、戦闘こそが最高の娯楽としているアマゾネスの国ではチケットを取るのは簡単だった。

 その事を隣国の貴族も知っている為、こんな時期はいつもなら怖くて近づかない貴族や豪商も訪れるのだ。


「今日は空いていたね。いつもならもう少しはあるだけどね。」


「そうなのですか?」


「あぁ、劇で満席になっているところを見た事はないけど、それでも今日は少なかったな。」


 ノロは何かに気がついたのか。怖い笑みを見せていた。

 ライクはそれを不思議に思いながら食事を楽しんでいた。


「どうだい?ダンジョン料理も美味しいだろう。ヤマは身体に悪いって言ってあまり良い顔しないんだけどね。」


「凄くジャンキー!って感じで美味しいです!マリア様もあまりこう言うものを摂らないので新鮮です!」


「この肉も新鮮だよ。ダンジョン直通できているからね。」


 二人が食べているのは博物館に併設されているバーガーショップに来ていた。

 此処ではダンジョンで獲れた魔物の肉を使ってパティを作るのだ。ダンジョンはその土地の記憶を読み取ってダンジョン内に様々な時代の魔物や物を出現させる魔物である。

 そんなダンジョンから獲れる肉はダイナソーでジャンキーだとアマスで人気なジャンクフードとなっていた。


「こんな新鮮な肉が食べれるのはアマスだけだよ。」


「そうなんですか?」


「アマスでは他国に興味がないからか、あまり知られていないが、他国では竜車や魔便は一般的じゃないからね。」


 竜車とは竜に車や船を引かせて走る乗り物のことであり、個体差はあれども全ての種がプライドの高い竜を手懐けるのは容易なことではなかった。

 戦闘能力と生来持っている他者を威圧するオーラを持ち合わせるアマゾネスくらいしか安定して竜を手懐けられる国はいない上、他国では一代限りで終わることが多い竜も、長年の飼育経験と知識から世界初の竜の繁殖に成功したのもアマスだった。

 魔便とは魔物の鳥類や竜で空路で荷物を運べる飛脚の事である。

 世界最速の飛行生物であるライトスワローと言われるツバメがいる為、手紙程度なら最速で国内なら何処でも1時間以内で届くのだ。

 アマスの軍事力が強いのは竜や魔物を手懐けて戦力として馬の様に人馬一体で戦う事も含まれていた。

 その馬自身も魔物や竜と一緒に産まれた時から成長してきた個体と種なので、強靭な精神力で何者にも怯まない勇敢さと強かさを持っていた。


「それなら外国では馬車しかないんですか?」


「いや、長期移動や多くの荷物を運ぶ場合は汽車を使う。」


「汽車ってなんですか?」


「魔石を燃料として動かす乗り物だ。」


 ノロは汽車に乗った事があるが、自分で走った方が速いなと言う感想を抱いていた。

 貨物量にしても魔物の方が多く、総合評価的にも竜の方が上だなと感じていた。

 その上、レールの上しか走れないと言う小回りが効かない点が何よりの原点だった。


「さぁ、次の演目が始まる。」


「ふぁーい。」


 食べ終わったノロは時計を見て次の演目が始まる時間だと話を切って片付け始めた。

 バーガーを急いで詰め込んだライクの口はリスの様にパンパンになっていた。

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