第14話
「ふふふ、良い趣味をしていますわね。ヤマ。」
「いえいえ、マリア様こそ。」
マリアとヤマは灯りもつけずにアマゾネスに搭載されている夜目で昼間と変わらない感覚で見る事が出来ていた。
二人が持っているものは本だった。
それも少し薄い本だった。
部屋の扉から漏れ出ている怪しげな雰囲気を漂わせる二人に近づける者はいなかった。
「それにしてもアマゾネスで同じ趣味の方がいたなんて思いませんでした。」
「私もです。ノロ様も純愛文学は読むのですが、こう言う感じ・・・のは・・・」
二人が持っている本は所謂エロ本だった。
艶かしい内容が書いてある本はアマスではあまり受け入れられていなかった。
アマスで売れる本は軍事本や魔物の解体本など戦闘や狩りに関わる本だった。特に図鑑は大人にも子供にも大人気のジャンルだった。
アマゾネスに人気のある恋愛本は純愛ものである。
血に狂うアマゾネスも運命の相手という者に心の奥底では望んでいるのだ。
それは二人も同じだったが、それはそれこれはこれである。
「とくにこの男性と男性のものはアマスでは売れないから。手に入れるのに苦労するのよね。」
マリアは宝物を握りしめて今日の戦果を噛み締めていた。
人気がないからこそ少数のマニアの間で激しい取り合いがあるのだ。
運命の男性に会うより運命の女性に会う方が現実的だと言われるアマゾネスでは百合は兎も角、薔薇は現実味がない上、やる意味が分からない為特に受けが悪かった。
そんな中、マリアとヤマは闇市で取引されていたBL本を入手する事が出来たのだ。
「ウスには絶対見せられませんね。」
「そうね。流石に男性に見せる勇気はないわね。」
今の所、自分の運命の相手の確率が最も高いウスにバレる訳にはいかない為、腐の面をウスにも、アリセシアにも見せた事はなかった。
ノロとライクには幼馴染の為、とっくの昔にバレていた。
「ニュージナル王国には沢山のBL本が売られているのよね。行ってみたいわね。」
「その時は。」
「えぇ、貴方も連れていくわよ。」
アマゾネスでは結婚=子作りの為、同姓愛は元々理解されない文化だった。
差別はされないが、不思議がれるそんな愛なのである。
まぁ、子作りが出来ない訳ではない裏技があるのだが、それはそれで躊躇う行為だった。
「ぐふふふ、じゅるり。」
「涎が垂れてますよ。マリア様。」
「あら、いけない。それにしても良いわね。流石、ヤオイ・イエス様の作品はどれ良いわ。」
ヤオイ・イエスとはニュージナル王国でBL界に新風を巻き起こしている世界的な人気作家だった。
その者の作品を見た者は例外なく新しい扉を開くと言われるほどのストーリー展開に、キャラデザイン、何よりリアルな描写が人気だった。
「一度お会いしてみたいけれどアマスには来られないでしょうね。」
「流石に血と死が充満している国に汗と精が充満している作家さんが来られるわけがないですから。」
二人は残念がりながらいつかサイン会にも行きたいなと華を咲かせているのであった。
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