第25話

「なんで!お兄ちゃんがいないのよ!!!」


「なんでも何も、手紙にも書いただろう。ウスは今、王女様と一緒に王都の学園に通っているのだから。実家此処にいる訳ないだろう。」


「そんな・・・・・・」


 膝から崩れ落ちて悲しむミシスは自分の浅慮を嘆いていた。

 ヤタ以外のミシスの友達はその事に何となく気がついていたが、自信満々にこの都市へ来たミシスを見てウスが長期休暇を利用して実家ゾネシスに帰って来ているんだろうと思っていたのである。


「くっ!なら、早く王都に行かなきゃ!」


「待て。」


「何?っ!」


「ふむ、身体は鈍っていないようだな。」


 涙を拭って早く兄が待つ王都へ行かないと!と屋敷を飛び出そうとしたミシスに母であるサイはいきなり殴り飛ばそうと拳を繰り出した。

 なんとか反射しきれたミシスは腕でガードしたが、拳を受け止めた腕が痺れて当分使い物になりそうになかった。


「ちょ!いきなり何しているんですか?!!」


「あ?お前、ミシスの男か・・・ふむ、素質はあるが、まだまだ途上だな。か弱すぎる。どけ!雑魚!私は外国でどれだけ娘が強くなったのか見定める義務があるのだ!!」


 二人に割って入ったヤタだったが、サイの威圧に気圧されてかけたが、力強く踏ん張ってミシスの腕が回復するまで粘るつもりだった。


「ぐっ!・・・がはっ!」


「どけと言った筈だ。」


「ヤタ!」


「なんて速さと威力だ。」


 どけとサイから警告された事もあってミシスの母だから、いつ攻撃してきても良いように常に警戒していた事もあって自身の頭を狙ったサイの蹴りを察知する事が出来た。

 だが、防御しようとしたヤタの力を筋力だけでぶち壊してヤタを吹き飛ばした。

 視力に優れたサワですら驚愕する程の速度を乗せた蹴りは皆が驚愕する程の威力を生み出していた。


「私の騎士に何するのよ!!」


「弱い!」


「なっ!きゃー!!」


「サリア!」


「え?サリアの魔法、直撃したのに何で無傷なの??」


 ヤタを蹴り飛ばされた事に怒ったサリアがサイに向けて魔法を放ったが、まるで何もなかったかのように呆然としているサリアを殴り飛ばした。

 今までどんな敵にもダメージを与えていたサリアの魔法を無傷で防がれた事が信じられなかった。


「この程度で驚くとは・・・レベルの低い奴らと組んでいるのだな、ミシス。」


「あはは、それは聞き捨てならないね。母さん。この人達は私の大切な仲間よ。侮辱しないで!」


「ふん、ぬるっ!」


「これを避けるか!」


 見え見えなミシスの拳をぬるいと吐き捨てようとしたサイだったが、その瞬間、背後から嫌な気配がした為、しゃがんで避けてみるとさっきまで自身の首があった場所に鋭い刃が通り過ぎていた。

 サワがミシスがキレている間に気配を消してサイの背後をとっていたのだ。


「お前は中々面白そうだな。良いだろう。娘と一緒に遊んでやる!おい!そこでこそこそ回復しているお前!」


「は、はい!」


「さっさとそこの二人を回復させろ!侮辱した事を撤回させたいなら私に一撃喰らわすのだな!メイ!闘技場を用意しろ!5人まとめて相手してやる!!来い!」


「え?私も?!!」


 非戦闘員であるシスターラナティーはまとめての中に自分が入っている事に驚愕しながら、断ったらこの場で殺されそうな威圧感をサイから感じて泣く泣くヤタ達を治して皆んなに着いて行った。

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