第26話
「いたた、ミシスのお母さん、本当に人間か?俺の魔眼をパワーだけでぶっ壊したぞ。」
「母さんはパワーとスピードだけで全人類の頂点に立ったんですよ。」
「それだけじゃない。気配察知や直感も超一流だ。人と戦っている気がしなかった。」
ヤタは自身の魔眼がシンプルなパワーで無力化された事が信じられなかった。
魔眼とは祖先の能力が眼に宿ったものの事を指す。
ヤタの魔眼は極めて珍しい
それぞれに極めて強力だが、それ故に幼少期は不遇な目にあっていた経緯があった。
そんな魔眼がサイには何一つ通じなかった。
ミシスもヤタの魔眼なら少しは通じると自身の母を甘く見ていた。
サワはサイのパワーなどの基礎能力も脅威だが、それ以上にアマゾネスらしさを極めた戦闘スタイルが何よりも脅威に見えていた。
「闘技場の用意が整いました。サイ様はもう待っています。」
「メイ。貴方から見て私は成長している?」
ミシスはさっきの手合わせで心が折れかけていた。
ミシスが他国の学園に入学したのは常に自分の先を行く姉を、そしてその更に先にいる母を超える為に、別の環境で強くなろうとしたからだった。
それが手も足も出ずにほぼ負けた結果にミシスの気持ちは落ち込んでいた。
母の幼馴染で常に母の隣にいるメイに自分の成長を問う事にした。
「・・・そうですね。基礎能力は上がっています。その上、多種多様な戦闘経験から状況把握能力や応用力も上がっているでしょうが、私としては更に強くなって欲しかったというのが正直な感想です。」
「・・・・・・・」
「そんな事はない。お前は強い。お前は勝てる。」
辛辣かつ的確なメイの意見に何も言えず、俯くしかないミシスを元気付けたのはミシスが惚れた男ヤタだった。
「ミシスらしくないぞ。お前はどんな強敵にもワクワクして戦ってきただろう。」
「そうだ、今回も変わらない。」
「そうよ。アンタが自分の母親を尊敬し、憧れていたのは知っているけど、もうやめたのでしょう。」
「そうですよ。ミシスさん。成長した貴方をお母さんに見せてあげましょう。」
「みんな・・・ありがとう。」
メイはそれを見て、良い人達と巡り合いましたね。と喜んでいた。
それでも、自身の主人には通じないと言うしかなかった。
友情も恋も奇跡すらぶち壊して勝利してきたから最強なのだ。その程度ではサイに一撃入れるなんて夢のまた夢である事を知っていたが、気になることもあった。
「でも、どうやってあの化け物に勝つんだ?」
「一人で無理でも私達ならいけると言いたいけど、多数で連携して勝てるほど相手は柔じゃないわよね。」
「母さんに小細工は通用しないわ。全てを壊して真正面から叩き潰す。」
「シンプル。それゆえに弱点がないというわけか。」
隙がない戦闘スタイルに突破口が見当たらなかった。
ヤタの魔眼をぶち壊すパワーに、サリアの魔法が効かない防御力、サワの最速の不意打ちを容易く避けるスピード、そして、それを適切に使う経験と直感というシンプルな強さを突き詰めたスタイルにどう対処したら良いのか悪戦していた。
「ヤタさんの最大出力ならいけませんか?」
「・・・母さんがそれを準備している事を知っていてヤタを見逃すほど優しくないわよ。」
確かにヤタの最大出力ならサイの隙を作るくらいなら出来る可能性は高いと皆が思ったが、それをするには他のみんなでヤタをサイから守らないといけないのである。
その上、ヤタの魔眼を最大出力で発動するには集中力もいる為、その場から一歩も動けないという最大の欠点があった。
明らかに何か準備している隙だらけのヤタを見逃して他の者の相手をするなんて事をサイがするなんて誰も思わなかった。
「・・・やろう。」
「ミシス。」
「考えても母さんに勝つにはこれしかない。それならやろう。私達がヤタを守るよ。」
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