第27話
闘技場にはサイが腕を組んで待っていた。
サイの体からは闘争心が溢れまくり、国中の小動物が巣の中で震え上がっていた。
ミシスも自身の母の本気度合いに固唾を飲んでいたが、今の自分には仲間が付いている事を自覚して自身の心を落ち着かせた。
サイはミシス達が闘技場に足を一歩踏み入った瞬間、溜め込んだ闘争心を解放した。
見た目から小動物を連想させられるシスターラナティーは凶悪な闘争心に当てられて少しは対抗してみせようなんて気は折れた。
その後の判断も速く、サワ仕込みの気配消しで姿を消した。
「さあ、さっきまでの実力が全てではなかったというものを私に見せてくれ。」
「えぇ!見せてあげるわよ!ファイヤ!!」
組んでいた腕を解いたサイは腕を広げてさぁ、打ってこいと誰を挑発しているのかを理解したサリアは特注の
魔銃とは杖に変わってヒューマンの間で発展した魔法増幅装置である。
威力は平均で素手の2倍、魔銃の性能と術者の腕によって倍率は更に上がる代物だった。
それだけだと杖と然程変わらないが、魔銃の1番の特徴は魔銃から放たれた魔法には貫通力を付与するというものだった。
誰もが最初に使う球系の魔法には改良しない限り貫通力なんてあまりないが、この魔銃を使うことによって貫通力を大幅に上げることが出来る。
欠点としては攻撃が直線的になる事であり、杖と違って放った魔法の操作が通常不能という物があるが、最大の欠点は攻撃範囲の縮小だった。
サリアの魔法はそんな常識なんて知らないとばかりの巨大なものであり巨体であるサイを呑み込むほどの大きさがあった。
「ほう、なかなかの貫通力だが、柔いな。」
「チッ!やっぱりダメね。でも・・・」
「むっ?!また背後か。こんな小細工が通じるとでも思ったか?」
「思ってないわよ!」
「っ!」
サリアの魔法をまた突貫してサリア自身を叩こうとしたサイだったが、背後からの魔力に気がついて危うげなく上に飛んで魔法の中でも最高速度のある光の魔法を躱した。
元々、魔銃から放ったのにデカい攻撃範囲のあるサリアの魔法を更に大きくして放ったのは目眩しand魔法の探知を隠す目的があった。
そんな小細工が歴戦の猛者であるサイ通じるわけがないことはサリアも理解していた。
でも、しょうもない作戦だとサイに侮ってもらう事には成功した。
サリアとは比べ物にならない程の最高の魔銃使いとの戦闘経験があったこともそれに拍車をかけた。
アイツの娘がこの程度かという落胆も入った油断はサリアの手前で曲がりサイに向かって行った光魔法が直撃したのである。
「はぁ、よし!」
「ナイス!サリア!追い討ちをかけるわよ!サワ!」
「えぇ、視力が回復する前にいきます!」
サリアが放った光魔法は相手を貫通してその皮膚を、骨を、内臓を焼くものでなかった。サリアが放つことで威力はあるが、サイを貫くなんてものはありはしなかった。
光魔法の名はガーラガラ。
直撃した相手の視力を一時的に奪い体を硬直させる効果があった。
サイの抵抗力なら体を硬直させるなんて瞬き程度しかない為、今回は意味がないと割り切ってガーラガラの効果を視力奪取に全振りする様に調整していた。
ミシスとサワは気配と音を消しながら素早く上空から落ちてくるサイを左右から狙って刀と拳を繰り出した。
「だから、こんな小細工など私に通じると思っているのか?と言っておるのだ!」
「嘘でしょう?!視力は機能していないわよね。」
「気配も全て消した私達の攻撃を受け止めるなんてどんな野生の勘を持っているんですか?」
「勘ではない、経験だ!」
「くっ!」
「がっ!」
完璧にはいったと思われた二人の攻撃はサイの腕によって受け止められた。
自分達を見ていないサイの焦点からガーラガラの効果があることを確認したミシスはそれなのに自分達の攻撃を防いだ事に驚いていた。
サワはミシスが前に一か八かに賭けて行った野生の勘だけの視覚に頼らない戦闘法を意図も容易く行ったのだと予想したが、サイはそんなことをしていなかった。
サイは膨大な戦闘経験から二人の攻撃してくるポイントを絞り、後は肌から伝わる風圧などから微調整して二人の攻撃を防いだのである。
そこから二人の位置を的確に察知して2人の急所を容赦なく殴り飛ばした。
素早く的確に飛んできた拳を二人はギリギリ刀と腕で直撃は防げたが、その衝撃でサリアの所まで吹っ飛ばされた。
「さぁ、仕切り直しだ。次はどうする?」
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