第24話

「はぁぁぁぁぁ!!!!」


「荒れてるな。ミシス。」


「実家からの手紙が来てからずっとあの調子だけど、何が書いてあったの?」


「ミシスの兄が婚約したんだと。」


「あぁ、アイツ。確かかなりのブラコンだったな。そりゃあ、荒れるわな。」


「先生的には授業中は授業に集中して欲しいんだけど・・・」


 此処は学園都市国家スメシ。

 世界中の学生が集まるこの国には多種多様の学園があった。

 ウスの妹であるミシスも此処に通っていた。

 今は野外での魔物討伐ハンティング授業中だった。

 今朝届いた実家からの手紙の鬱憤は全て哀れな魔物達に注がれていた。

 全身が魔物の血で血まみれになってもミシスの怒りは治る事はなかった。それどころか、時間が経てば経つほど怒りが沸々と湧き上がって来ていた。


「帰る・・・」


「えっ?」


「実家に帰る!!私は絶対に!認めない!!!」


 そんな雄叫びを上げたのが、一週間前の事だった。

 実家に帰ると決めたミシスの行動力は凄かった。半端な時期に遠くの実家に帰るなんて学校側は許可出来る訳がなかった。それ相応の理由があれば良いが、理由が兄の婚約をぶち壊す為なんて許可出来る訳がなかった。

 そんな教師陣を脅し・・・熱心に説得する事によって校長からの許可をもぎ取る事が出来たのである。


「それで何で俺が一緒に行かないといけないんだ?」


「だって、ヤタの事をお兄ちゃんに紹介したいからだけど?」


「いや、そんな当たり前の事を聞くの?みたいな目で見られても困るんだけど?」


「そうよ!何勝手に!私の騎士を!家族に紹介しようとしているのよ!!」


 実家に向かう馬車の中にはミシス以外にも男女が数人乗っていた。

 ミシスが学校で仲良くなった者達も連れて来ていたのである。


「それは今だけの話でしょう。近い内に私の従者になるのよ。早いほうがいいに決まってる。」


「へぇ、喧嘩なら高く買って上げるわよ。」


「お、おい、落ち着けよ。二人とも。」


「良い景色にね。サワ。」


「そうですね。此処があの血と戦闘を好むアマゾネスの国とは思えませんね。」


 喧嘩する二人とその間に挟まれている男子を無視して和服を着た女子とシスター服を着ている女子は呑気に窓の外を見ていた。

 サワと呼ばれた和装女子は戦闘狂のミシスの自国と言われてもっと殺伐な国を思い浮かべていたが、実際は平和そのものだった。


「当たり前でしょう。戦争は全部外で起きているのよ。国の内側が殺伐しているわけないでしょう。」


 アマス王国が今まで攻め込まれた事はなかった。侵略される事なく砦で防衛が完遂し、逆に攻め込むアマスの内部は平和を象徴するほど長閑な光景が広がっていた。


「意外だな。軍事施設が様々な所にあるのかと思っていた。」


「そんな訳ないでしょう。むしろ他国より畑や田んぼ、牧場などの生産施設が多いわよ。」


 肉体自体が兵器であるアマゾネスにとって軍事施設はさして必要がなかった。必要なのは防衛に関する軍事施設や研究施設な為、他国の半分くらいの施設量で充分賄えるのである。

 その分を食糧生産施設にしているのである。

 衣食住揃っての戦争だとしている為、保存食やテント、寝袋は圧倒的に発展していた。


「もう直ぐ着くわよ。世界一安全な都市ゾネシスだ!」


 ゾネ領一の発展している都市ゾネシスに数日かけてようやく着いたのである。


「待っていてよ!お兄ちゃん!!」

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