第23話
「訓練終了!全員!武器を片付けたらさっさと食堂に移動しろ!」
此処はアマス王城の軍隊施設の一角である。
日々、強敵と闘う為に鍛錬をしている。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「おう!新人達!なんだよ!?そんなに疲れてまだ、朝飯前の鍛錬だぞ。」
他の者達が汗を拭きながら何の疲れも示す事なく、ゾロゾロと食堂に向かっていく中で数人だけ膝から崩れ落ちた格好で肩から息をしている者達もいた。
そんな彼女達に教官が爽やかな笑顔を浮かべながら声をかけて来た。あまりの疲労を具現化したような姿に驚いていた。この教官も新人教育は初めてなのである。
彼女達は外国からこの国に流れて来た移民であり、最近入隊して来た他種族の人達だった。
この国は基本的に強者主義であり、女性優位な面が多い為、男尊女卑が横行している自国の軍を抜けて来てこの国に流れて来る者は少なくなかった。
「こ、これが?早朝鍛錬?」
「嘘でしょう?」
「化け物・・・」
「馬鹿か?お前ら、化け物の鍛錬がこの程度なわけないだろう。」
新人達は世界一の軍事大国だけあって、その軍隊の訓練となればかなりの凄まじいものだと覚悟していたが、想像を遥かに超えた訓練に弱音を吐いてしまっていた。
そんな新人達の嘆きを教官は笑い飛ばして一蹴した。
「ほらよ。さっさと食堂に行くぞ。」
「うわぁ?!」
「教官、力持ちだね。」
「身体は小さいのに・・・」
「ぶん投げるぞ。」
いつまで経っても起き上がれない新人たちを見かねて、教官は新人達を一人で担ぎ上げて運んだ。
そのアマゾネスらしくない体格と違ってその力は常人離れしていた。
軽い足取りで食堂に向かう教官は新人達とどう向き合っていけば良いのか悩んでいた。
「タマ教官!遅かったですね。」
「ミィー副教官、この新人達が倒れていたのでな、運んでいたのだ。」
「はぁ、あの程度で倒れるですか?か弱な人たちが入隊したのですね。」
本当に心配そうに見ているミィー副教官だったが、自国では腕を鳴らしていた新人たちにとってその言葉は侮辱されているように聞こえていた。
でも、朝練程度で倒れている事は事実だった為、その言葉を甘んでして受け入れていた。
「ほら、新人共、朝食だ!存分に食べて強くなりな!」
「・・・・・・!」
過度な疲労感から食欲など一切なかった新人達だったが、その中の一人がこの大量な食事を見てある事に気がついた。
「これって!ドラッグレタス!それによく見たらこのきのこも!ブラックマッシュルーム!どれも世界的に禁止されているドーピングの材料じゃないか?!」
「「「え?」」」
「うん?あぁ、おばちゃん!出す料理間違えているぞ!コイツらは新人だぞ!!」
「あら?ごめんね!お嬢ちゃん達、新人だったのね!通りでやつれていると思ったわ。」
こっちだったわね。と新しい朝食を出す食堂のおばちゃんだったが、それもさっきの料理よりマシではあるが、どれもがドーピングとして知られている食材だった。
「どういう事ですか?教官!!」
「どういう事って?」
いきなり元気に睨みつけながら抗議してくる新人に教官は新人達に間違って出された朝食を食べながら言った。
副作用も激しいと言われているこの食材達をただの料理だと言わんばかりに食べる姿は他国の者からしたら異質だった。
「これは!世界的に禁止されている物ですよ!新しく出て来たのも!違法薬物にも使用される物から毒性もあるものもあります!こんなものが料理に使われているなんておかしいです!!」
「ピーピー騒ぐな。世界がどうかなんて知らないが、この国じゃ、ドーピングは合法だ。そりゃ、
スポーツなら禁止されているが、おまえらは軍人だぞ。」
何を言っているんだ?という風に言う教官に怒り心頭な新人はより怒りを燃やしていた。
この新人は自国では違法薬物を取り締まる部署に居たこともあった為、こう言う事には人一倍敏感だった。
「戦争では死んだら終わりだ。それにこの
短期的なドーピングも合法ではあるが、あまり勧められていなかった。
戦争に必要なのは強さと共に継戦能力が必要とされている為、強さの変わりに継戦能力を損なうドーピングはアマゾネスにとっては嫌われていた。
「これがアマゾネスだ。強くなる為ならどんな方法でも試して戦闘に最適な肉体に改造していく。それが鍛錬だ。」
真っ黒なソースが掛かっているステーキを頬張りながら教官は新人達との付き合い方に悩んでいた。
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