第6話
此処は何処だ。
そうか、俺は凍らされたのか。
あぁぁぁぁぁぁぁ、クソ!やっぱり強いな。
でも、まだまだ負けてない。
誰であっても俺の憧れを!夢を!邪魔する奴はユ・ル・サ・ナ・イ
「彼は私の従者です。ローズ姉様。私のものを奪おうとするなら絶対許さない。」
「俺の欲しいものを得るのにお前の許可必要なのか?なぁ、アリセシア。」
邪悪な笑みを浮かべて言うローズネスにアリセシアは怒り心頭で胸の内がグツグツと燃やしていた。
その熱波は観覧席にも届く程広範囲に広がっていた。
「ウスは俺の従者にする。俺に一発を喰らわしてないが、俺を十分に楽しませた。お前じゃ、コイツを使いこなせない。俺の元でならコイツは更に強くなる。いつか俺を倒すほどにな。」
「ふざけるなよ。ウスは私の従者です。お気に入りだろうが、ゴミだろうが壊してしまうローズ姉様にはウスは勿体無いですよ。返して貰います。」
氷と炎のぶつかり水蒸気になって闘技場を包んだ。
「言っただろう。お前の炎じゃ。俺の氷を溶かせない。」
「くっ!まだよ。私の炎はこの程度じゃない!」
無傷なローズネスと違ってアリセシアの体は所々凍らされていた。
魔法同士の戦いにおいて原則より高い質と量を込められている魔法が勝つ。
「魔法も、体術も、剣術もお前は俺に勝てない。」
「それで諦めろって。馬鹿にするのも大概にして!ローズ姉様に勝てなくても私はウスを渡さない。彼は私の従者だ!誰にも渡さない!それを奪おうとするなら誰だって。」
アリセシアが何かしようとした瞬間、背後にあったウスの氷像が割れてアリセシアの横を通り過ぎてローズネスを殴り飛ばした。
「お返しです。ローズネス様、貴方に一発入れましたよ。さぁ、全力で戦いましょう。」
「く、くくく、あはははははは!!!最高だな!俺が殴られたのはいつぶりだ?少なくても男で殴ったのはお前が初めてだ!」
「ウ、ウス。大丈夫なの?」
「あ、あの・・・あまり触らないで欲しいのですが・・・」
ウスの拳で飛ばされたローズネスは頬に走っている痛みが懐かしく感じるほど最近は一方的な試合で退屈していたのだ。
それを文字通りぶち壊してくれたウスへの好感度は鰻登りになっていた。
そんなウスにアリセシアは何処か怪我はないかと隅々まで触りまくっていた。
側から見て不審者な変態の様な行動にウスは流石にやめて欲しいとアリセシアにお願いした。
「いいね!そう来なくちゃ!」
「そこまでよ!ローズネス!」
「姉さん。」
より強力な氷を生み出してウスを攻撃しようとしたところに外から誰かが割り込んできた。
「何するんだ。キョウ。」
「人の弟を氷像にして奪おうとする。雌獅子がいるって聞いたのよ。」
ローズネスの親友にしてこの学園の生徒会長であるキョウ・ゾネ。
ウス・ゾネの姉だった。
そして、超弩級のブラコンだった。
「可愛い弟を奪う者は誰であろうと許さない。」
「ふん、さっさと弟離れしろよ。それに弟が男従者になるのはいいのか?」
意味わからんという風に言うローズネスに苦虫を噛んだ顔をしてキョウは地獄からの使者の様な声で告げた。
「弟が望んだことだもの。それに・・・」
「婚約者の件は認めてないわけか。」
「婚約者?」
二人の言っていることで知らない事があった。
婚約者とは誰のことだ?とウスは思ってアリセシアの方を見ると顔を赤くして目を逸らしていた。
「あれ?ウスは知らなかったのか?アマゾネスが滅多に夫を作らないのは知っているな。」
「確か強い男なら誰とでも子を作りたくなる性質上他国の人と結婚してすぐ浮気が原因で離婚になるからでしたか?」
「一部正解だが、ほぼ不正解だ。」
ウスの答えに、性教育くらいちゃんとさせてとけとローズネスは思った。
ウスの言う通り、他国の男だとそう言う事になる。ただし、同じアマゾネスだと話は別である。
「お前の様に同じアマゾネスだとその男に夢中になってその者しか愛せなくなる。くくくく。お前もその内苦労するぞ。」
俺の祖父もそうだったとウスの将来を予見する不穏な事に聞かなかった事にしたウスだった。
キョウは余計な事を言うなとローズネスを睨んでいた。
「男従者はその夫候補なんだよ。つまり、お前はアリセシアの婚約者。そして、俺の夫になる男だ。」
「えっ?」
「しまった!」
ウスが知覚出来ない程の音も出さない無音の高速移動にびっくりしている内にローズネスは無理矢理ウスの頭を掴むと唇を奪った。
「「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!殺す!!」」
「「「「キャャャャャャャ!!!」」」」
「美味いな!人の者と考えると更に美味いな!」
「待てや!コラ!!!!」
「ウス!早く洗うのよ!唇が凍傷で壊死するわ!!!」
ウスの唇を奪ったローズネスは鬼の形相で睨んでいるキョウを無視して闘技場を出て行き、キョウは怒声を出しながらローズネスを追いかけて行った。
アリセシアは泥水でもいいからさっさとウスの唇を洗おうとしていた。
阿鼻叫喚の試合はこれにて幕を閉じた。
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