第17話
「フフフフフフ!!アハハ!!!久しぶりの死の舞台だ!楽しいなぁ!ヤマ!!」
「ノロ様、飛ばし過ぎです。もう少し落ち着いてください。」
「アハハ!!野暮な事を言うな!ヤマ!存分に楽しもうじゃないか!!」
ノロはエルフを槍で薙ぎ払い、突き刺しながら真っ赤に染まった死の舞台で踊るように殺していた。
ヤマはそんなノロに冷静さを無くさない為に、所々で水を指していた。
このままテンションを上げ続けたら、味方すら殺しかねないからだ。
ヤマは的確にノロのテンションを調整していた。
「アハハ!!ハハ!!!」
「やめやがれ!!狂人が!!」
「むっ、ノロ様の突進を防ぐとはあのエルフやりますね。」
刺突で敵を蹴散らすノロの行手を阻んだ者がいた。
そのエルフは明らかに他のエルフより美形の男エルフだった。
造形が美しい程、魔力が高く、比例して戦闘能力が高い傾向にある種族がエルフだった。
勿論、全てのエルフに当てはまる訳ではないが、このエルフは典型的なエルフだと二人は感じた。
「エルフにしては珍しいね。長剣を使うんだね。」
「エルフだからって剣なら短剣ってわけじゃない!あまり舐めていると殺すぞ。」
「舐めているのは貴方ですよ。エルフ。」
話しながら踊りをやめないノロを見て自分の事を舐めていると感じた男エルフは怒りを露わにして威嚇していた。
そんな哀れなエルフを見てヤマは屠殺前の豚を見るような顔で哀れんでいた。
それはこれから起こるエルフの結末が見えていたからだ。
「舐める?舐めてなんかないよ。同族以外で僕を止めるなんて・・・・気分が悪いよ。」
「っ!!!?!」
いきなりドスの効いたノロの声に男エルフの心と本能は警笛を鳴らしまくっていた。
ヤマはやっぱりと思っていた。
ノロは日常生活でもテンションが上がっている時に中断される事を何よりも嫌っていた。
それはノロの一族によく発現する性格だった。
ノロの家系。ドラーガ一族の異名は狂暴である。
狂いに狂って、暴れに暴れ回る。
災害のような公爵家。それがドラーガ公爵一族だった。
「あぁ、本当に空気の読めない男はどんなにカッコ良くても、強くても・・・ゴミなんだよ。」
「ぐっ!なんてパワーだ!!」
ノロがまるで軽く押したように見える刺突はさっきエルフ達を串刺しにし続けた刺突よりパワーが上だった。
受け止めた剣に風穴が開きそうな程だった。
まるで竜に突進されているのではと錯覚するほどだった。
「やっぱりこの程度か。・・・この程度で!僕の邪魔をするんじゃない!!天に召されろ!!」
「なっ!くぼっっぅ!!!」
ノロが鬼の形相を浮かべた瞬間、受け止めれていた槍の重みが変わった。
剣を粉砕しながらエルフの腹に風穴を開けた。
そのまま吹き飛んだエルフは木々を倒しながらどっかに飛んで行った。
「たく、興醒めも良いところだ。僕はもう帰るよ。」
「かしこまりました。おい、あの吹き飛んだエルフが生きてたら治療して運んどけ。種馬にする。お待ちください。ノロ様。」
「はっ!」
不機嫌に帰っていくノロを追いかける為に手早く近場の兵士に指示をしてヤマはノロを追いかけた。
一突きでまるで台風が通ったような惨状に子供ながらドラーガ公爵家の異名を兵士達は再確認した。
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