第18話

「ふふ、単身で本陣に特攻を仕掛けた。その蛮勇には敬意を称するはエルフの王族さん。」


「くっ、お前も元を辿れば同じエルフの血を引く者だろう!森が!山が!聖域が!汚される!この現状になんと思わないのか!!」


「・・・いつの話をしているのですか。もう300年は前の話でしょう。」


 マリアは攻め込んできたエルフ王子の思いを呆れてながら一蹴していた。

 確かにマリアの一族は300年以上に起きたエルフ国との戦争で獲得したエルフからの誕生した一族だった。

 それが戦略の異名をもつエス公爵だった。

 その戦争の敗戦国となった国こそが今戦争しているエルフ達だった。

 この東砦もエス領に属している元エルフ領だった。

 アマゾネスはマリア達みたいな色んな種族と混じった者達が殆どだった。

 純血のアマゾネスはゾネ家だけだった。


「それに前回も、今回も攻めてきたのは貴方達でしょう。被害者面はやめてほしいですね。」


「確かに今回、開戦の狼煙を上げたのは私達だ・・・だがな!300年前の戦争の原因はお前達!アマゾネスだ!!」


「あら、それは興味深いわね。」


 アリセシアはマリアにあっさりと捕まったエルフに興味を抱かなかった。

 でも、その知識には興味があった。

 長寿種のエルフは伝聞でも正確に昔の事を伝えられてきていた歴史があった。

 だから、自分達の伝承より真実味はあった。


「お前達が我が先祖の姫を攫ったのだ!300年前の戦争は姫を奪還する戦争だった!それをまるで私達が一方的に戦争を起こしたとは事実無根だ!!」


「あぁ、あったそうね。そんな事・・・まぁ、よくある事よ。」


 当時のアマゾネスは性欲旺盛な夫を持った女王が手当たり次第、良さそうな母体を用意したらしい。

 そのせいで、色々と他国との亀裂が生まれたが、アマゾネスにとって強い一族、国にする事こそ優先事項だった為、国民全員気にしていなかった。

 それどころか、何故か他国が攻めてきたシャッハー!!の世紀末ばりの叫びだったそうだ。

 アリセシアもあれが原因なのね。くらいでやっぱり攻めてきたのはそっちじゃないと思っていた。

 暴君らしい理不尽ぷりでおる。


「まぁ、でも、それで絶滅したら意味ないわよね。」


「お、おい!何をしている!!」


 エルフの話に飽きたマリアはさっさと滅ぼそうと思ったのである。

 その為、魔力を溜めている事に気がついたエルフは嫌な予感がして叫んでいた。

 それを五月蝿そうにマリアは見ていた。


「おや、マリア、派手にやるのかい?」


「ノロ、帰ってきたのね。」


「興醒めしたからね。もうつまらないよ。これなら魚人の方がマシだったかな?」


 完全にエルフ狩りに飽きてしまったノロは2年組が配属された魚人襲撃の方が楽しかったかなと思っていた。

 それも隣の戦場は赤いというようにそう見えているだけなんだろうとノロは思う事にした。


「やっ!やめっぐっ!」


「くくく、今、良いところなんだから黙って見てようか。」


 拘束されながらマリアの邪魔をしようとしたエルフを槍で押さえつけたノロは笑みを浮かべていた。

 魔力に長けたエルフでも驚愕するほどのマリアの魔力量にエルフは戦慄していた。


「もう小粒程度なら一掃して構わないでしょう。」


「えぇ、私が許可するわ。この森の最後よ。派手に散ってもらいましょう。」


「アハハハ!!良いね。久しぶりのマリアの魔法だ!今回はどんな綺麗な光景になるんだろうなぁ!」


「ぐっ!やっ!やめろ!!」


「レイザ・ラーモン!!」


 太陽の光が森全体に降り注いだ。

 生物・無生物を一瞬で溶かす熱線が何重にもエルフ達を焼き殺し、森を焼き尽くしていた。

 アマゾネスはそんな炎熱地獄を平然と歩いていた。

 味方には回復の光を、敵には殲滅の光を与えるのが光の神レイザと太陽の神ラーモンの名を冠している最高魔法の一つレイザ・ラーモンである。

 それでも木々が燃えて出来た炎は味方の皮膚を焼くのだが、アマゾネスにとってそんなものは熱めのお湯に浸かっている様なものだった。


「せ、先祖代々守ってきた・・・私達の森が・・・・・この悪魔が!!!!」


「うるさい。」


「ァァァァ!!!!」


 火事場の馬鹿力でノロの押さえ込みを無理やり抜け出したエルフの王子はマリアに向かって刺し違えようとした。

 でも、折角の眺めを邪魔されたアリセシアは煩わしそうに炎を飛ばして仲間達のように焼いた。


「良いんですか?彼、あれでも王子ですから。血筋は良い筈ですよ。」


「良いわよ。種馬の代わりはあの母体で事足りるわよ。」


 アリセシアはマリアの魔法から免れている森の一角から感じる強者の圧で、こんなゴミより良いのはまだいると感じていた。

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