第2話

「それでは!ウス・ゾネ対マサカル・オーノの試合を開始する!!」


「よぉ、ウス。お前を倒してアリセシア様の従者の座は俺がいただく!!」


「出来るものならやってみる事ですね。」


 余裕な表情でまぁ、無理でしょうねとウスの目は語っていた。

 そんな内心を察したマサカルはブチっと切れて魔力を纏わせた大斧でウスに襲いかかった。


「低魔力が!これでおしまいだ!!」


「全く、技術のぎの字も知らない人ですね。」


 常に女と戦ってきたウスからしたらアマゾネスの男など女性からしたら全員低魔力である。

 つまり、こんな魔力ゴリ押しな戦法がウスに通じるわけがないのである。


「まぁ、貴方程度避けるまでもないですね。」


「なにっ!!?」


 肩から腕まで両断する筈だったマサカルの大斧はウスの肩に当たった瞬間止まってしまった。

 魔力も覆っていない素の肉体で魔力が注がれた大斧を受け止めたのである。

 確かに原理上可能ではあるが、それには相手と隔絶する力の差が無いといけないのである。

 同い年の同姓でそんな事あるはずが無いと更に力を込めるマサカルだったが、それでもバクともしなかった。


「ふんっ!」


「ぐぼっ!!ばら!!!」


 マサカルのガラ空きのボディーに一発からのアッパーでノックアウトさせたウスは審判の声を待たずに勝敗は決していた。

 一切の無駄のない二撃にマサカルの意識は一瞬にして刈り取られたのである。

 主人の血と悲鳴の残虐的な試合とは真逆で意識を刈り取り静寂に終わらした試合に歓声すら起きなかった。

 誰もが想像以上のウスの実力に固唾を飲んで見ていた。


「勝者!ウス・ゾネ!!」


 背後から聞こえる審判の声を聞き流しながらウスは闘技場を去り主人の元に戻った。


「早かったわね。ウス。まぁ、あの程度の男、貴方なら指一本でも勝てたでしょうね。」


「えぇ、今度はそれで勝ってみせます。」


 主従で微笑ましいトークを起こしているのを見ながらそんな負け方したら対戦相手はプライドバキバキで再起不能になるだろうなとノロ達は思っていた。


「ウス君は本当に強いのね。彼、力任せで隙も多いのが弱点だけど、長所は一撃でも当てたら女でも傷をつけることもできるパワーにあるのにそれを真正面から受け止めて無傷なんて頑丈なんだね。」


「お褒めに預かり光栄です。ノロ様。実家の騎士達に比べたら彼の攻撃などそよ風以下でございます。」


「それは比較対象が悪いよ。最恐の騎士団であるゾネ騎士団の騎士のパワーに比べたら並の騎士でもそよ風だよ。」


 戦場で見た最恐という異名に相応しい相手を恐怖のドン底の底に叩き落とす戦闘に幼かったノロは味方でありながら戦慄したのを覚えていた。

 それと比べるなんて酷だと思ったのである。


「それよりこの後はどうしますか?」


 他の試合でも見ていますか?とマリアはアリセシアにこの後の予定を聞いた。

 マリアもノロもその従者達も試合は終わっている為、次の授業まで暇なのである。

 今回の試合で見るべきものは特にないので、この中で1番位の高いアリセシアに合わせることにしているのである。


「そうですね。次の授業までまだ時間がありますし、お昼も早いですから。・・・隣の闘技場でしている3年生の試合でも見に行きますか?」


「良いですね。3年生と言ったらアリセシア様の姉君であるローズネス様が在学されてますね。」


「丁度、今日の試合はローズネス様のクラスみたいだよ。」


 アリセシアの提案にマリアは嬉しそうに賛成の意を示していた。

 ノロもその案に不満はなかったので自分の従者から渡されたその試合表を見るとローズネスの名があった。


「それでは行きましょう。」


 隣といっても此処と繋がっているわけではない為、ウスは自然な流れでアリセシアに上着を着せた。

 全くアリセシアの動きを邪魔しない動きにそれだけで互いの信頼が感じられた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る