第3話

「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」


「盛り上がってますね。」


「3年生になると声援まで凄いな。」


「うるさいだけよ。」


 アリセシア達は十数分歩いて隣の闘技場に着いた。

 歩き始めてすぐ聞こえていた声援も闘技場内になると尚更大きく聞こえた。

 三者三様な感想を述べているが、二人共内心ではアリセシアと同じくうるさいと思っていた。


「アリセシア様。」


「あぁ、言わなくても分かっているよ。相変わらずの存在感ね。」


 ウスがアリセシアに耳打ちしようとしたらアリセシアはみなまで言わなくても分かると抑えていても相手を威圧する圧倒的な存在感を観覧席から出ていた。

 そこだけポツンと人が少なく避ける様に空いていた。

 アリセシア達は迷う事なくそこに向かって行った。


「よぉ、アリセシア。なんの様だ。」


「ごきげんよう。ローズ姉様。相変わらずの存在感ですね。」


 試合をつまらなそうに見ていたローズネスはアリセシアを見つけた瞬間、オモチャを貰った子供の様に笑みを浮かべて歓迎した。


「また、新しい女性ですか・・・火遊びも程々にしてください。」


「良いじゃない。退屈なんだよ。・・・それともお前が相手してくれるのか?」


 ローズが立ち上がった瞬間、さっきまででもヘビの前にしたカエルの気持ちを味わっていたのに、それがヘビからドラゴンに変わったくらいの威圧感に変わっていた。

 ノロ達はあまりの威圧感にまるで重力が増した錯覚に襲われていた。

 立つことすらままならない威圧感に必死に意識を保とうとするノロ達の横を通り過ぎる者がいた。


「ほう。俺を前にして意識を保っているだけでも学生にしては評価するのに値するが、まさか男で俺を睨む奴がいるとはな。」


「ウス、やめなさい。私は大丈夫よ。ローズ姉様が戯れているだけよ。」


 ローズネスに真正面から威圧されても動じてなかったアリセシアだが、ウスの行動は主人であるアリセシアからも予想外だった。

 焦った様子でウスを止めようとしていた。

 それはウスの身を案じて言ったのではなかった。


「ウス・・・そうかゾネの男か!良いな。息子馬鹿なサイさんが自慢していたから半信半疑だったが、確かに自慢したくなる男だ。気に入った!おい!舞台を開けろ!!」


 ローズネスが大声で言うと、さっきまで轟音となっていた声援が止んで試合を行なっていた両者を猛獣から逃げる様に速やかに退散した。

 審判していた教師も3年もローズネスの担任していた事もありまたか、と呆れていた。

 ローズネスは気に入った相手がいたら、誰であろうと戦闘しないと気が済まない典型的なアマゾネスだった。

 闘技場に一っ飛びしたローズネスはウスに早く来いと眼力を飛ばしていた。


「はぁ・・・・こうなるから貴方には私の後ろで隠れて欲しかったのよ。」


「申し訳ありません。アリセシア様。」


 主人の気遣いを無視してしまったことに謝罪を述べながら、主人の姉に己の力を示す良いチャンスだとウスは思っていた。


「やっと降りてきたな。」


「男だからと加減はいりません。全力でお願いします。」


「それは俺が決める。俺の全力を見たいならそれだけの力を示せ!」


 ローズネスは観覧席に居た従者から投げられた自分の身の丈以上ある大剣を片手で余裕に掴むと大剣を持っているとは思えない程のスピードでウスに近づくとウスの頭目掛けて大剣を振り下ろした。


「やっぱり強いな。お前。三年でも俺の大剣の一撃を素手で受け止めれる奴は少ないぜ。」


「それは光栄です。」


 笑みを浮かべながら大剣を片手で受け止めているウスだったが、思っていた以上の衝撃に驚いていた。

 油断はしていなかったが、それでも自分を舐めている相手だと己が舐めていた事に気がついた。


「それが万筋ばんきんか。サイさんが言っていた通りの性能だな。」


 万筋とはウスが開発した筋肉の総称である。

 相手の攻撃を外から守る剛の筋肉と相手の攻撃を内から外へと流す柔の筋肉。

 これによってウスの肉体は傷もつかない上、衝撃によって骨や内臓がダメージを負う事もないのだ。


「良いねぇ!久しぶりの歯応えのある奴だ!俺に一撃入れる事が出来れば俺の従者にしてやるよ。」


「私はアリセシア様の従者ですので、謹んでお断りさせていただきます。」


 ローズネスの発言に観覧席は騒然としているが、その後のウスの発言で更に騒がしくなっていた。


「さぁ、次の攻撃は受け止められるか?!!」

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