第4話

「おら!おら!どうした!守ってばかりじゃ!俺は倒せないぞ!!」


「くっ!」


 嵐の様な大剣の猛攻にウスは防戦一方になっていた。

 それでも一歩も引かずにローズネスの剣を受け止めていた。

 避けて余波を受けたり、掠ってしまうより、真正面から受けた方がウスにとっては最善手なのだ。

 それで徐々に上がっていっている大剣の威力にウスの受け流せる威力を越えるのも時間の問題だった。


「はっ!」


「おっ、やれば出来るじゃないか!」


 大剣の威力を受け流しながらカウンターをローズネスに喰らわしたのだ。

 大剣に受け止められたが、それでもこの試合初めてウスが攻勢に出た。


「貴方の攻撃にも慣れてきました。」


「良いねぇ!次は手数を増やすぜ!着いてこいや!!」


 ローズネスの考えを読んでいたローズネスの従者はもう一つ大剣をローズネスに向かって投げていた。

 二刀流になったローズネスの攻撃は2倍どころか二乗とすら感じる猛攻となってウスに襲いかかっていた。

 それを紙一重に受け流し、受け止めながら、猛攻の隙間を縫ってローズネスにカウンターを決めようとしていた。


「最高だ!あぁ、今まで会った男の中でもお前は最高に俺好みだよ!ウス!!」


「それは光栄ですね。でも、まだ私の全てをぶつけてませんよ。」


 最高と評価するにはまだ早いとウスはカウンターを辞めて、気合いの一撃をローズネスに喰らわした。

 ローズネスの未来予知に匹敵する危機察知がそれを予見して二つの大剣で守る事ができたが、試合用の大剣ではウスの全力の一撃を受け止めるには強度不足だった。


「すげぇな。試合用の安物だが、手入れは怠ったことはないんだがな。」


 刃が砕けて持ち手のみになった大剣を自身の従者に投げると事前に従者から投げられていた槍がローズネスの目の前に突き刺さった。


「今度はこれで楽しもうや!!」


「速い!!」


 さっきとは次元の違う速さに驚いたウスはこれは避けるのはもちろん、受け止めるのも受け流すのも無理だと瞬時に判断した。


「あは!致命傷を避けて最小限の傷で終わらしたか。だが、それで俺の連撃を凌げるか?うん?」


「凌ぐ必要はありません。これ以上攻撃をさせません。」


 ローズネスは更なる刺突をウスの腹筋に喰らわそうとしたが、それはできなかった。

 槍を引き抜こうとしても抜けないのだ。

 地面がひび割れるほど力を込めても槍はぴくりともしなかった。


「!」


「はぁぁぁ!!」


「?!」


 ほんの一瞬だけ腹筋を緩ませる事でローズネスの体勢を崩した瞬間にウスは蹴りを喰らわそうとしたが、本能に従って槍から手を離して避けたローズネスだった。

 ローズネスはウスの蹴りを不思議に思っていた。

 ウスの蹴りが鍛え上げられたローズネスの危機察知が反応しなかったのだ。


「・・・殺気がないな。」


「流石です。もう見破られましたか。」


 ローズネスはその違和感の正体を見破る事が出来た。

 ウスの蹴りには一切殺気がないのだ。

 殺気とは本人が込めようと思わなくても無意識レベルで漏れてしまうものであり、無邪気な赤ん坊でも空気程の微弱な殺気を持っている。

 ローズネスの危機察知はそんな微弱な殺気をも捉える事が可能である。

 そこから相手の次の攻撃を察知して避ける。

 それがアマゾネスの危機察知の仕組みだった。

 アマゾネスであるウスは対アマゾネスとして殺気を無くして攻撃する方法を考案したのである。

 拳には殺気を込めていたのは、拳に注目させて蹴りを予測させない為だった。

 その上での殺気のない蹴り。ウスの確実に一撃を与える必殺の戦法だった。


「母にすら避けられなかったこの蹴りを避けるなんて流石ですね。ローズネス様。」


「俺の本能はアマゾネス一だからな。技巧派なサイさんじゃ。初見で避けるのは難しいだろう。」


 アマゾネスとして尊敬しているサイですら避けられなかった初見殺しの一撃を避けれた事が内心ローズネスは嬉しかった。


「だが、俺に同じ攻撃が二度通じるなんて思うなよ。殺気がないなら、ないでやり方はあるんだよ。」


 ローズネスの周囲の温度が下がり始めた。


「さぁ、此処から先、世界を一段階上がる。死ぬ気で着いてこないと死ぬぞ。」


 ローズネスの冷酷な視線がウスに突き刺さった。

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