第10話 その頃2
訓練場では罵声と木剣で撃つ音が聞こえる。
「くっそ!このウスラハゲが!」
「イダッ!や、やめんか!この!」
と争っているのは篠宮と
ようやく剣術を身につけた篠宮は木剣で今まで我慢して来たセクハラの仕返しをしている。
「お、お前らも止めろ!イダッ!」
臼井は
「はぁ、それはアンタが悪いだろ、あんだけセクハラしてたんだ。帰ったら証言するよ」
「お、俺はお前らのことを思ってイダイッ!」
木剣で股間を突かれ前のめりで倒れる臼井。
「俺らも散々痛ぶってくれたよな?」
と峰川が木剣を振り下ろす!
「グアッ!」
「まぁ、俺はやめときますけど、こいつらの気持ちはわかるから止めません」
と長内が言う。
「絶対許さないからね!学校帰ったら覚えとけよ!」
「じゃーな!」
剣術を覚えた3人にもう教師は必要なかった。
「く、クソッ!いつつ、俺が教えてやったのに!」
と臼井は身体を抑えながら立ち上がり、治療を受けに王城の医務室に向かう。
「…俺が何をしたって言うんだ!教育して剣術が取れたのは俺のおかげだろ!」
と言いながら痛む身体でなんとか歩んでいく。
ようやく剣術が取れた3人はみんなに混じってレベルを上げようとするが、みんなは自分のために必死なのでこっちまで回ってこない。
「お、おい、俺らにもゴブリンくらい」
と峰川が言うと、
「チッ!欲しけりゃ自分で取りに行け!こっちもレベル上げに必死なんだよ!」
とみんなの気迫が違う。
「オラァ!」
1番気迫がすごいのが悟だった。
もう他のクラスメイトを見ていなかった。
自分だけで魔王を倒すと言ってレベル上げを再開したのだ。
みんなそんな悟に負けまいとレベル上げに必死だ。
このまま置いてかれるだけでは自分達の価値は無いに等しい。
だがスキルもそれなりに生えて来た。
だからレベル上げを止める事はできない。
このままレベルを上げればまた前のようになるはずだとみんな思っている。
またあの頃のように笑って過ごせると。
そんな中、外れたところにいるのは内藤だ。
自分には中級剣術と中級体術がある。
それなのに外れたところで1人黙々とレベル上げをしている。
内藤は体格が良くなりキレも増した。
だが、職業のオークソルジャーは消えないし、絶倫を持っているので女を見れば欲情してしまい、みんなと一緒にいるのが辛くなってしまったのだ。
人間であるのでオークになることはできないが、オークの感性は感じる。
人間の女を抱き、子孫を残す。
これが1番になってしまっていて感情をコントロールするのに精一杯なのだ。
だからあえて1人、孤独だが誰かを襲うわけにもいかない。
それに西園寺みたいになってしまうわけにはいかない。
クラスメイトの誰も信用が出来なかった。
「オラァ!!」
強くなればいいんだ!俺が強くなって魔王を倒す。
ただ1人がむしゃらにモンスターを倒していく。
そして悟も1人で魔王を倒そうとしている。
みんなが使えない?
違う!
元は出来ていた。
だがレベルもスキルもなくなり弱くなってしまった。
健人よりも弱い今のクラスメイトが強くなるまで待てない。
みんなが育つのを待つよりも俺が強くなって魔王を倒すのがベストだ。
俺だけがレベルもスキルもそのままだから、俺がなんとかしないといけないんだ!
と1人でレベル上げをしていく。
内藤も悟も別の意味で孤独になり、1人で戦うことを決めたのだった。
王城の方では、王国騎士団はまだ騎士団長の言うことを聞いていた。なぜなら騎士団長だから。
どんなに弱くなっていようがそれを確かめる事はできない。
だから団長は地道に夜中1人で剣を振るう。
そんなこと兵士の頃からしたことはなかった。
最初から体も大きくセンスがあったのでスキルも伸びて極めることができた。
があの時とは違う。
全盛期を過ぎた体は悲鳴を上げ、手の皮もボロボロになって、夜中にそんな事をやっているから昼間は眠気がきて地獄のようだった。
だが意地がそれを許さなかった。
本来の自分を取り戻すために隠れて剣を振るう。
そして、立場があるのでそのために耐える。
弱ければ強くならなくては行けない。
自分を奮い立たせ剣を振るう!
性欲増加もなんとか耐え凌いでいる。
騎士団長もまた孤独に苦しんでる1人である。
王は悩む、これ以上の税を取ることは出来ないと、宰相が本を読んで勉強して王に伝える。
だが今は30人近い勇者達を保護しているので金がかかる。だがまだ魔王討伐には早過ぎる。
宰相と2人でどうにかしてきたが、王城には大勢の者を雇っている。その金すらいまは惜しい。
苦肉の策でいらないメイド達を解雇する。
だがそれにも金がいる。
全ては金がないと始まらなかった。
なぜこのようなことになってしまったのか分からない。
だが起きたことは変えられない。
王は悩む。
勇者達はいまはレベルを上げに出ているので今のうちになんとか立て直したい。
悩みが尽きぬ王と宰相は次第に疲弊して行った。
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