第20話 酒の肴とダンジョン


「美味いのぉ!」

「美味しいですわ」

「それは良かった、口に合ったみたいね」

 と、食卓は賑やかになった。


「このビールと言う物も中々いいもんじゃ」

「おっ!ファフはビール党か!」

 父さんは何でも飲むからな。


「もう、お酒ばっかり飲んでちゃダメよ?」

「あはは、ファフはドラゴンだからねぇ」

「そうじゃ、あまり酔わんのじゃ」

 そう言いながらツマミを食べ、ビールを飲む。


「それにしても全世界だね!」

「そうみたいね!死者もそれなりにいるでしょうし」

「ゴブリンは弱いが、数が多いからのぅ」

 そうなんだよな、一体一体は弱いんだけど群れで襲って来るからなぁ。


 どうにか対処してくれればいいのだが、

「まぁ、自衛隊も出動してるし、なんとかなるだろうな!」

 と酔った父さんが言う。


「怪我してたじゃないか!」

「え!お母さん聞いてないけど?」

「あ、健人!いや、母さんそれは」

「ビールはやめ!ちゃんと話して下さい!」

「はい、会社で…」

 調子乗るからね。

 

 客間に布団を敷いてファフ達はそこで寝る。

 俺は久しぶりに自分の部屋に入ってベッドで寝る。


 はぁ、帰ってきたんだ。


 眠れないと思っていたが知らない間に寝ていたようだ。


「ほら、母が起こしてこいと言っているぞ」

「ん?ん、…おはよう」

「おはよう」

「そうか、帰って来たんだな」

「ここが健人の部屋か!2階もいいのぉ」

「あはは、じゃあ下に降りようか!」

「朝飯じゃ」

 と下に降りて行くと父さんとセレネが座っていた。


「おはよう」

「「おはよう」」

 と2人とも返してくれる。

「あれ、父さん会社?」

「当たり前だろ?昨日とは違うからな」

 まぁ、ゴブリンはもう倒せるし、他の会社と違うからなぁ。


「健人は学校は?」

「ん?休む」

「え?行かないのか?」

「朝電話があって臨時休校らしいわよ?それにもう自由登校でしょ?」

「いいなぁ!会社が休みに「ならないわよ?」…言ってみただけだよ」

 母さんのキツイ言葉にタジタジだなぁ。


「じゃあ行って来る!」

「気をつけてね!」

「おう!」

 と槍を持って出社する父さん。

 

 さて、ゴブリンはいるかな?

「んー、ここら辺はいないなぁ」

「ダンジョンに行けばいいんじゃないか?」

「まぁ、そうだね!母さんを連れていかないとね」

 と近くのダンジョンを探す。


 索敵で探しているとちょうど出て来るのを感知出来た。


「あっちにあるね」

「よし、行くのじゃ!」

 セレネは俺の中に入っている。


 2人で向かい、ダンジョンに入るとゴブリンが湧いているな!


「よし!ゴブリンもいなくなったし母さんを呼びに行って来るよ」

「分かったのじゃ」

 と母さんを連れてダンジョンに入る。


「う、薄気味悪いわね?」

「まぁ慣れだよ」

「母!これを倒すのじゃ!」

「ファフちゃん!えっ!わかったわ!エェイ!」

 まぁ、ダガーの扱いが上手い事。


 消滅したゴブリンのドロップは収納しておく。


「フフッ!お母さんは回復魔法よ!回復魔法師だって」

「良かったね!」

「母は回復魔法か!良かったのじゃ!」

 母さんを送ってからまたダンジョンに来ている。


「ここ潰しておこう!」

「そうじゃのう」

 2人で無双して行く。


 だが、5階層で終わりだったみたいで小さなダンジョンコアを取って元の場所に戻る。


「なんじゃ、全然成長しておらぬのぅ」

「でもそれならダンジョン潰しが楽だよ!」

「それもそうじゃな!」


 と2人でダンジョンを探しに出かける。

 索敵でゴブリンが出て来るところがわかればそこにダンジョンがあるので見つけるのに苦労はしなかった。


 10階層、ホブゴブリン、

『グギャッ!』

「はぁ、骨のない相手ばかりじゃ」

「しょうがないよ、ここは10階層まであったじゃん」


 とりあえずダンジョンコアを抜く。


 元の場所に戻ると、

「こんな物ダンジョンではないな」

「まぁ、浅いからね。でもこの住宅地一帯はもうダンジョンはないんじゃないかな?」

「それなら良いがのぉ」

 索敵をして回ってみるがゴブリンが居ないので大丈夫そうだな。


 家に帰ると母さんが困っていた。

「スーパーが開いてないのよ。今晩どうしようかしら」

「それなら大丈夫」

 とネット通販を見せる。


 こちらでも普通に使えるな。

 通貨はあっちの世界の通貨だし、問題なさそうだ。


「便利ねこれ!じゃあ頼んじゃおうかしら」

 と肉や野菜をカゴに入れて行く。


「母よ!我は肉が好きじゃ」

「だめよ?野菜も取らないとね」

 ファフはドラゴンだと知っているが、人型なので普通に接する母さん。


「あ!甘い物も好きなのじゃ」

「まぁ、ならお菓子も買わないとね」

 母さんはカゴに入れて行き購入する。


「はい、お金」

「要らないよ?あっちの通貨で買えるから」

「それとこれとは別!」

 と言ってお金を渡して来る。


 まぁ、一旦言い出したら聞かないので受け取ると段ボールを開けて冷蔵庫にしまって行く。


「母は強いのぅ」

「だね」

「よし!買い物も済んだしお茶にしましょう!」

「「はーい」」

 そう言ってお菓子を出してくれる。


「美味いのじゃ!これは止まらんのぅ」

「そうですね、美味しいです」

 ちゃっかりセレネも出て来てお茶をしている。


 我が家は世界が変わっても平和だな。

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