第16話 帰還とモンスター


 帰ってきた。


 あの教室のあの場所だ。


 二月も中旬、もう自由登校になる直前だった。

 時間は10時ジャストだな。


「あ!」

 と俺に気付くクラスメイト。

「ま、まさか」

「西園寺が?」

 クラスメイトはそう言葉を発するが、信じられないような目で見ている。


「俺以外誰がいるんだよ?」

 俺が喋るとみんなが黙る。


「ハハッ!喋るスキルまで無くしたのか?」

 みんな信じられないような顔でこちらを見ている。

「は?」

「え?」

 俺は席を立ち内藤の前に立つと、収納する。


「な、なんで?」

「は?」

「もしかしてお前」

 レベルはそのままで職業と『絶倫』を取って前の職業は『戦士』だったのでそれをつけて排出する。


「え…」

「オークだった気持ちはどうだ?」

「は?お、お前ぇ!!グベッ!」

 と殴ろうとしたので殴ってやった。


 壁にめり込んで崩れ落ちる内藤。


「ヒール」

「…お、お前のせいだったのか!」

「そうだが何か?お前が俺にしたことは消えるのか?」

 俺にしたことは消えはしない。


「グッ!だが!」

「またつけてやろうか?オークを?」

 とその言葉を聞いた内藤は青くなると、

「や、やめてくれぇ!わ、悪かった!ごめんなさい!」

「ハハッ!最低だな?俺はまだお前にやられた事は忘れてないのにな」

 後退りながら内藤は言う。


「あ、あれはすまない!ごめんなさい!も、もう」

「あぁ、別にいいよ」

 もう気が済んだ。


「あ、ありがと…うっ、グスッ」

 と泣き出す内藤だが、背後から声がかかる。


「あ、あんたねぇ!私達がどれだけ苦労したと思ってんの!」

 と篠宮が言ってくる。

「あ?最初の俺と何か違ったか?」

「は?」


「俺は収納しかなかったからお前らについて行くのに必死だった。手の皮がボロボロになるほど頑張って取った剣術と身体強化だけでなんとか着いて行ってたんだが、お前らと違ったか?」

「そ、それは…ち、違わないけど、でも!」

「でもなんだ?」


「や、やり過ぎじゃない!」

 下を向きながら言う言葉か?


「は?お前らは誰かに何かされたのか?俺みたいに斬られたり殴られたりしたのか?」

 俺は篠宮の顔を上げさせて聞く。

「そ、それは」

 篠宮は黙ったままだ。


「俺が言った!だからそいつらは許せ」

 悟が出てくる。


「健人が弱すぎて「待て待て」は?」

「なんだお前?勝手に名前で呼ぶなよ」

 悟はなんのことかわからない顔をしてる。


「何勝手に俺の名前呼んでんだって言ってんだよ!」

 こいつだけは何もわかっていない。


「だから、俺も考え直して」


「何を勘違いしてるんだ?」


「いや。だから」

「は?お前は『友達だと思ってたのか?』」


「あ…」

 ようやく思い出したみたいだな。


「お前に用はない」

 と押すだけで悟は後ろの席にぶつかり座り込んでしまった。


「か、返せよ!俺のスキル!」

 峰川が言うが俺の目を見てすぐに下を向く。


「は?」

「あ、いや」

「お前に返すスキルなんかねぇっつーの!てかお前ら全員また1からやり直すか?」

「い、いやだ!」

 後ずさるクラスメイト。


「あははは!そうだろ?この世界にダンジョンが出来るそうだしな」

 俺はあえてこの世界が変わることを教える。


「は?」

「え?」

 クラスメイトの顔が面白くて笑ってしまうな。


「あはははは!異世界召喚された代償でこっちにもダンジョンが出来るんだとさ!お前らステータスが見れる時点で気づけよバカ!」

 

「な、そ、そんな」

「うそだろ!」

「でもステータス見れる」

 ざわざわとうるさくなって来たな。


「誰かいないのか?まぁ、いまさらだがな」

 はぁ、俺に言わせるなよ。

「え?」

「あ、ご、ごめんなさい」

「あ」

 思い出したかのように言うクラスメイトにほとほと呆れ返る。


「ハハッ!謝ることもせずに返せだのなんだのよく言えたもんだな!まぁ、達者で生きろよ?簡単に死ぬなよな」

「わ、悪かったよ!だ、だから!」

 俺に触った峰川が“ドンッ”と黒板にぶち当たる。


「勝手に触るなって言っただろ?バカは治らないのか?」


「ヒッ!」

 と鞄を取ろうとするだけで怖がる奴ら。


「じゃーな!」

 と俺は教室を出て行く。

 スッキリはしてないが、まぁ、こんなもんだろ。


 俺は校門を出るとファフを排出する。

「お、おぉ!ここが健人の世界か!」

 伸びをするファフ。


「そうだ、俺がいた世界だ」

「よし!どこに行くんじゃ?」

 とりあえずは、

「まずは俺の家だな!」

「健人の家か!それはそうだな!帰らねばな」

 2人で歩いて帰る。


「ダンジョンってどこに出来るんだろうな?」

「さぁ?ワシも初めてじゃからなぁ、でもダンジョンは出来ておるぞ?ほれ?」

 指差すので見てみる。


「あ、まじかよ、あの穴はダンジョンか」

「ワシは嘘は言わん」

 帰り道の壁に穴が空いていてその向こうは黒くなって見えない。


「マジかよ、しかもこんなとこに」

 ただの道端にこんなの出来てもな。


「まぁ、健人なら簡単じゃろう?」

「そうだけど、これどれくらい出来るのかな?」

「さぁ?流石にそれはわからぬ」

「だよなぁ」

 とダンジョン の前で喋っているとゴブリンが顔を出した。


「は?おりゃ!」

『グギャッ!』

「え?今ゴブリンが!」

「これは不味いのう、ダンジョンブレイクじゃ」

 ダンジョンからモンスターが出てくる現象の様だな。


「え?もしかして」

「多分出来たダンジョン全部同じじゃな」

「うそだろー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る