第27話 名古屋ダンジョンと大人


 俺たちは2泊して大阪を堪能したので帰ることにする。


 新幹線で名古屋まで行き、降りて名古屋ギルドまで歩いて行く。


「さぁて、どんなダンジョンじゃろう?」

「あはは、変わりないだろうなぁ」

「なんじゃ夢が無いのう」

 ダンジョンに夢なんかないからな。


『『合成』をしてましたけど良いのはできたんですか?』

 ん?まぁ、防具と武器が一つづつってとこかな?

『へぇ、どんなのができたんですか?』

 えーと、竜鎧と竜槍ライドって奴が出来たよ。


「な、なんじゃ!静かになったと思ったらセレネと喋ってたんじゃろ?」

 とそっぽを向くファフ。


「あぁ、ごめんごめん、そうだよ」

「セレネも出てくれば良いのに」

『まぁ、また見せてくださいね』

 わかったよ。

「出ないってさ。それよりあそこだね」

「おぉ、賑わっておるのう」

 パッと見ただけで賑わっているのがわかるくらい人だかりができている。


「なんでだろ?」

「なんかあるんじゃないのか?」

 近づいて行くと、

「俺たちのクランに入った方がいいぞ?福利厚生もしっかりしてる!」

「私達のクランだってそうだ!先に話しかけたのは私達だ!」

 中は見えないがそんなことを話している。


「クランの勧誘みたいだな、邪魔にならない様に行くか」

「そうじゃのう」

 と横を通って中に入っていく。


「俺はどこにも入らない」


 なんか聞いたことある声の様な気がしたが気のせいか、と、ダンジョンに入っていく。

 

 この名古屋ダンジョンは人気がある様で80階層まであって、最後はゴールドドラゴンだった。


 まぁ、派手なドラゴンだったな。


 80階層もあったので、日を跨いで次の日までかかったが、まぁそれなりに宝ももらえて、スキル『百花繚乱』を手に入れた。

 侍の技らしい。


 そして出て30階層までのドロップを売り、いつも通りカード二つに分ける。


「腹が減ったのじゃ」

「んー、ひつまぶしでも食いに行こうか!」

「なんじゃそれは!美味いのか?」

「まぁ行ってのお楽しみだ」

 と外に出るとタクシーで有名店に入り、今度はセレネも出て来て3人でひつまぶしを食べる。


「美味いのじゃ!これはおかわりするぞ!」

「はいはい、頼んどくよ」

「私も食べます!」

 セレネも結構食うよなぁ、と思いながら2人分また追加しておく。


「食ったのじゃ!」

「私も食べ過ぎました」

「あはは、だろうね」

 帰りの電車は今度はどこに行こうかと言う話で持ちきりだった。


 どこに行こうかじゃなくて何を食べようかじゃないかな?


 岡崎に着くと歩いて父さんのいる会社に寄る。

「あ、西園寺さんの息子さん」

「お久しぶりです」

「お父さんに会いに?」

「はい、魔石を渡しに来ました」

「ちょっと待っててね」

 と電話をかける受付のお姉さん。


「いまちょっと出てるみたいね」

「そうですか、急ぎじゃないんで、また」

「お!健人君じゃないか!」

 社長さんがちょうど下に降りて来た。


「社長さん、お久しぶりです」

「大活躍してるね!魔石をいつもありがとう!」

 いつも買ってもらってるのはこっちなのだがな。


「いつもありがとうございます」

「ははっ、西園寺君は今出かけてるはず」

「そう見たいですね」

 秘書さんと話して、

「少し時間があるからちょっと話そうか」

「あ、はい」

 と商談室の様な場所に移動する。


「武器で刀なんかは無いかい?」

「ありますよ?これなんてどうでしょう?」

 と黒塗の鞘の太刀で阿修羅と言うドロップ品を出す。


「ほ、ほぉ…こりゃ凄いな!」

「あはは、ドロップ品ですよ」

 刀身を見ながら、

「これを売ってくれんかね?」

「いいですよ」

「またいつものでいいかい?」

 と言うのは父さんの給料に加算だ。


「はい!それでお願いします」

「分かった!期待していてくれよ?」

「あはは、はい」

 あとは雑談をして社長は外に出て行った。


「さて、帰ろうか?」

「ラーメン…」

「ダメだよ?帰るの」

「ダメかぁ」

 と悲しがるファフ。

 どんだけ好きなんだか。


 家に帰ると、

「ただいま」

「あ、ちょうどいいとこに帰って来たわね!」

「ん?」

 知らない女物の靴が玄関にあった。

 誰だろう。


 リビングに行くと、悟の母さんだった。


 どんな顔をすればいいか分からずに固まっていると、

「ごめんなさい!話は全部聞かせてもらったの!悟は何にも言わないから!本当にごめんなさい」

 と床に土下座している。


 俺はどうしていいか分からずその場に立っている。


「ほら、顔をあげてください、健人も立ってないでここに座って」

 と母さんに言われるが、どうにもそんな気になれないな。


「ごめん、俺にはまだ」

 と言って部屋に戻ろうとするとファフに止められる。


「健人?それは逃げじゃ、母が言っておるのじゃから座るがいい」

「ファフ?逃げてないがあまりそう言うのは好きじゃないんだが?」

 少し腹が立ってきた。


 なんだ勝手に…俺はもういい大人だぞ?


「そうか?逃げじゃないのなら座ればいいだけじゃぞ?」

「…この手を離せよ?怒るぞ?」

 少し手に力を入れる。

「母よ、我には健人を止めることはできぬ」

「そう、そうね、いいわよ離して」


 手を離され俺は部屋へと戻る。

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